仕事
中に入ると、三人が談笑しながら話していた。
「あ、君が新人ちゃんか〜 月詠様から話は聞いているよ〜 よーこそ〜 」
「確か、紋白ちゃんだったけ? 私は
「揚羽です。蝶違いです」
「冗談冗談! 」
初見で明らかにフレンドリーな雰囲気を醸し出してくる二人と対照的に明らかに拒絶しています感は出していないものの、黙々と仕事ではなく、漫画を読んでいる一人の九歳くらいのロリータと言えるほどの少女がいた。
「彼女は? 」
「彼女は
(一番迷惑な奴だ。)
これは性癖歪まされるだろうな。
「そういえば、先輩も月詠さんの部下なんですか? 」
「そうだよ。君は胡蝶の夢だったよね? 」
なぜか様々な人からそう言われているが、それがよくわかっていない。
「まぁ、よくそう言われています。一体何なんですか? 」
「分かりやすく言うと、人間と神様のハーフみたいな感じかな。そういう人は基本的に人間の世界で暮らすんだけど、胡蝶の夢は、こっち側でも暮らせる選ばれた側の人間のこと。東京◯種の主人公みたいな感じかな」
やっぱりこの人達こちら側の文化に詳しい気がする。
「……揚羽。向こうで読んでた物とかあるの? 」
「リゼロとか、よう実とか、また殺とか緋弾のアリアとか……」
「あなた、胡蝶の夢よね? 次に来る時持ってきてくれない? 」
「ええ、月詠様から許可を得ることができれば」
「話をこちらからもつけておくわ」
彼女と話していると、某探偵小説のある少女を連想させる。
「そういえば、お仕事の紹介だったわね。」
そうだった。本題に入らなくては。
「主なお仕事は、こっち側とそっち側を繋ぐお仕事、とでもいえばいいかな。向こうの神事みたいなのってあるでしょ? 」
「要は、それに受け答えする人、ってこと。」
仕事の理解はした。しかし、
「人、少なさすぎでは? 」
そう、三人なのである。仮に日本だけだとして国民約一億二千万人をたった三人で捌いているのである。一人当たり四千万人。
「そんな事ないよ、全然。ここまで届く人が少なさ過ぎるんだ。」
「みーんな途中でとまってしまう。気持ちがこもってないんだと思う。」
「ということは、私は、三千万人の中の、願いが届く人の受け子、と」
「ううん、こっちの事をよく知ってもらうために、漫画を描いて欲しいの。と、上から指示が来ました。そこで、元は向こうの人のあなたに描いてもらおう、と。
編集者は浮風がやってくれるよ」
初日から何かわからないが、漫画を描くことを押し付けられた。
黒揚羽蝶の夢 碧井詩杏 @4an_seisankari
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