第10話 ある鯨井先輩の方舟ごろごろカレーと夢
■A
大きな抱え仕事が終わり、疲れもようやく少し取れてきて、久々に他人様の作品を読みに伺った。
期間中も、つまめる長さの御作やエッセイなどは瞬間的な駆け込みによってめくったりしていたのだけど、長編となるとさっぱりだったので、いよいよどうにかと動いた次第。
そうして読んでみて思ったのは、「ネット小説いいもんだな!」ということ。
なんというか、やれることの幅が広い。
商業小説は、あえていうなら人の生活がかかっている。趣味だってそうといえばそうだけれど、なんと言ってもお金が動く。しくじったら大切な人を含む大勢がつらいめにあうと肌で感じる。冒険はしづらい、少しでも確率が高そうなルートを攻めたくもなる。
対してネット小説は、当社比でいえば気楽だ。書きたいように書いていい。
その結果、「そりゃ即お金にはならないんだろうけど、これいいなあ」と思うような作品にも多く出会える。
カクヨムはネット小説を載っける場所だ。
「プロを目指す修練場」として使っている方も僕ふくめ多いけれど、「商業には載らないけど面白い文を覗いて回れる場」でもあるのだなあと改めて思い直した。
でもあるというのが大事なところで、作品を商業流通に乗せたいと思っている人が並行して「型にはめて出陣する前の自分、の面白さ」を知ってくことだってできるのだ。
モチベはいくらあったっていいものだ。もらえるところからもらって走るのは大正義であろう。
今日から再開するこのエッセイも、どうせならその辺りを意識して書いていければなあと思った。
■B
ある
お尋ねしたことはないけれど、はじめてお目にかかったのはカクコンだったから、少なくとも「作品が本になってもいいぜ」とは思ってらしていることだろう。
実際、書籍化へと続くはしご的ルートを
鯨井先輩のスタイルは、僕の主観で説明すると「パッケージで買えるフルプライス・オリジナルの大作ノベルゲー」だ。
ソシャゲというよりSwitchとかでパッケージ買ってきて、カートリッジ挿してNowLoadingのアイコンカワイイナーとかいって見ながら読み込みを待って、BGMと各ボタン操作の音にすでに世界観を感じつつプレイを始めるアレ。
その辺の期待感がちゃんとありつつ、同時に「これ関連展開どさっとできるタイプの
大手のブロックバスター……約束された本腰の一本というよりは、ブランドとしての評価で一個頭抜けてるスタジオとかが出すタイトルに匂いが近い。内容でなく立ち位置で例えるならダンガンロンパやらレインコード。
他方、「ネット小説っぽさ」もかなりある。
まず、ノベルゲーっぽい、というのは本当にそのものずばりという表現だ、個人的には。
地の文は抑え、説明パートも会話を基軸として構成。同時に設定を自重することはなく、いわゆる「その中で二次創作やりたい人が大量に出そう」な方向で世界を作ってある。
「会話主体・重い設定」を「イベント練ってセリフに頼らず描こうとする」作りだと一気に映像作品感が強まるのだけど、そっちの路線はそこまではとっていないのだ(主観)。
次に「素材で殴ってくる」感がある。
個人経営のスープカレー屋さんを個人的には想像する。
選りすぐった具材をごろっとそのままに近い形で調理してスープと共にお出しするスタイル、というか。
調理度合いは今のところ調整中という具合で、人によっては固いと思ったりもしそうだけれど、そうであれ具材がいいことと、作ろうとしているものが間違いなく面白いことははっきりしている。
そんな感じだ。
書き手さんには色々なタイプがあると思うけれど、主観では鯨井先輩は「
作成・出力に沢山のスキルが必要になる大艦巨砲型。
序盤は苦労するけど、スキルツリーを押さえ終わって完成すると山をも削るタイプ。
機動力のあるモーターボートを並べるアサシン潜入型とか、バランス取れててコンスタントに色々な作品に挑戦できる長生き作家タイプとかとはまた違う。
……このタイプ分けみたいなのいいな。
同じタイプになる人あんまりいないだろうけど、印象は伝わりやすそう。
今後もあわよくば使おう。使えたら。
■紹介
そんな鯨井先輩の作品として紹介するのはこれだ。
〈 方舟遺物 〉-平凡少女と魔術師と五〇〇日後の『大災害』-
https://kakuyomu.jp/works/16817330650066120244
各章はゲームのチャプターと思って読むと楽しいとおもう。
本編進めるごとに解放される閑話や分岐エンドもあるぞ! 「残念だけどこの話はここで終わりなんだ」にヘキを持つ方も納得! 僕はハピエン厨ですがスチルは全部集めるタイプなのでふくざつなきもちだ!
具材の話に納得がいった方はコメント欄でおはなししませう。
なお伊草は昴生くんがヘキ的にやや危ないです。被弾したらどうしようとおもっています。
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