日記・考えごとコーナー

第ⅰ話 レイヤーを停めるな!

■A

本当は長編の方進めたかったんですが、もう一つ手が付かなくてこちらを連続更新です。

ナンバリングがローマ数字なのは、先輩がたのとこの紹介とかが入らない純粋な創作記事になるから。

基本的には「論書いてるヒマあったら本文書きましょうよ」でいたいため、いくつまでいくかわからないんですが、よかったらこちらもお付き合いくださいな。


記事の一本目はレイヤーの話です。

絵を描かれる方にはすごく馴染みがあるだろう、あれ。

そうでない方にはセル画をイメージしてもらえたら(それができたら)楽なんですが、そういう方ばかりかっていうとそうでもあるまい……ってんで、ちょっと説明をば。


レイヤーというのは層とか階層構造とかを意味する英語なんだそうです。

ファッション(髪型やら服)の話でも使われるようなんですが、ここでは特にお絵かきソフトで使われるレイヤーを念頭に置いています。


物理のお絵かきといえば真っ白い紙とかに描くイメージがありますが、ここでのレイヤーは(伊草の理解だと)透明でペラペラなプラ板とかに近いです。

透明なので、例えば二枚用意して(レイヤーA、レイヤーB)、Aに植え込みを、Bに女の子を描いてA on Bすると、「植え込みから顔を出してる女の子」みたいな絵が作れます。

ついでにもう一枚レイヤーを作り足して(レイヤーC)、これに「背景:木々」を描いて一番下に重ねると、「木々を抜けて植え込み越しにこっちへ顔を出した女の子」とかの絵になる。


「重ねたレイヤーをバチンと留めて一枚のイラストにしちゃう」のを「結合」という。

一度結合したレイヤーはもう一枚ずついじったりはできない。


デジタルで絵を描かれる方はこういうのを活用して、「顔の輪郭だけ描いたレイヤー(D)」とは別に「目・口・鼻など表情を描き込んだレイヤー(E1、E2、E3……)」を何個も作り、D×E1、D×E2、D×E3と組み合わせたパターンを別個結合してくことで「表情差分」を作ってく……らしい(間違ってたらゴメンナサイ!)。


長くなりましたが、だいたいそんなものが、この記事で引き合いに出したい「レイヤー」という概念の大枠です。

僕がこれを知ったのはそこそこ前なんですが、ほどほど前ぐらいから、「小説をイチから作るのって沢山のレイヤーいじるみたいな作業だな」と思うようになって。

それがおおむね頭の中で落ち着いた感じになったので、書き出してみようと今キーボードを叩いているという次第。

一概に言い切ることはできないと思うんですが、当てはまる人、結構いるかもしれないなとも考えていて。

「あーやってるねそんな感じよ」って方は教えてやってください。

では記してってみます。



■B

お話を作って小説として書く、っていうのは、直感的にいうならルービックキューブみたいなものでもあると思うんです。

キャラ、設定、展開……全部の面をいい感じに揃えたくていじりまくり、あっちを揃えようとしたらこっちが揃わない、そっちに手を着け始めたらいつの間にかあっちが不揃いになってる……みたいな。


具体例を挙げると、


【キャラの暴走をどうにか防ごうと四苦八苦する】

・「主人公がボスの横暴にキレて勝ち目ない序盤なのに勝負を挑む」現象が発生

・プロットの時点ではこれを想定できていなかった。挑んだら殺されて話が終わるので止めたい

・プロットの時点ではいなかった大人キャラが生えて「ヒロインを一人にすんな! お前だけの命じゃねえんだよクソボケ!」と叫ぶことで事なきを得る

・だが代わりに以降「キャラが増えたことによる展開の修正、エピソードの増減」に苦しむことになる

・展開を綺麗にするためになかった設定が増える、または減る

・それによりキャラの在り方が微妙に変わりプロットでは想定していなかった展開が起こるように(以下エンドレス)


こんな感じ。


で、これを抽象的に言いかえると、

【キャラ、設定、展開……各レイヤーそれぞれをいい感じにしたい思考が三つ巴している】

になるなと。


個別のレイヤーを見てる時はいい。

自分の中の“いい感じ”……ヘキとか美学とか狙いとかを出発点とする“整合性らしさ”の感覚……にしたがって、ほいほい作っていける。


でもこれが複数のレイヤーをいじる段階になると、「A(キャラレイヤー)はそれでいいんだろうけどよお! B(設定レイヤー)どうなんだよ!」「Bが幅を利かせすぎなんだよ! C(展開レイヤー)で字数班が“このままじゃ規定からはみ出ちゃいますう”って泣いてんぞ!」「Cは作者の都合だろうがAはもうこうなっちゃうの! お前らが合わせるしかないんじゃい!」とかとか、けんけんがくがくの大げんかになる。


作者あるあるではないでしょうか。

そして最終的にどれか……たとえばキャラ……が整合性こいつはこういうやつをブッ貫いて「うるせー! 知らねー!!」するとかもまたあるあるではないでしょうか。

別レイヤー担当のものたちは埋葬される。


また別のパターンもある。


【詰まって作る手がストップしお蔵入りになる】

・いいキャラなはずなんだけどグッドな場面が撮れない、キャラが動き出さない(キャラの位置にプロットなど好きな言葉を入れてよい)

・OKURA IRI ~セメテイタミヲシラズニヤスラカニシヌガヨイ~


こっちの説明はあんまり要らなさそう。

自分はこれですごい長いこと悩んでました。


ここを抽象的に言いかえると、

等が思考を縛っている】

なんともシンプル。


こういう時の正解は「レイヤー移動を解禁、奨励する」なんですよね。

「キャラを完成させなければならない」「プロットを書かなければならない」みたいな思い込み、または意気込みを捨てる。物語には構成要素があって、それをまとめるとこういう項目群ができて、一つずつ仕上げて……みたいな発想に捕まるとこうなりがち。

その辺を全部捨てて、自分の“いい感じ”を優先させてあれこれ作り、「いいじゃん!」となったものを各レイヤーに割り振っていく。

この割り振りの話や、「“いい感じ”を優先させる」ができない場合にどうするか、という話もありますが、ここでは置いときます。


ともあれ言えることは、「レイヤーの視点を入れることで“いちおう完結させられる作者あるある”と“すぐエタるかお蔵入りになる作者あるある”の両方を説明できて、後者については特に解決策の講じようが出てくる」かなと。



■C

このレイヤー目線、使い出は結構あって。

特に膨大な情報をいじらないといけない長編をやる時には、型や体裁にとらわれやすい一部の人(僕みたいな)をかなり救ってくれます。


やっとタイトル回収になるんですが、「レイヤーを停めるな」。

具体的にいうと、たとえば「“キャラ一覧”とか“設定一覧”とか、レイヤーを他から独立した状態で作っちゃうのは危険」。に、救われている。

レイヤーは他のレイヤー全てと繋がってはじめて……有機的(※1)となってはじめて像を結ぶのであって、個別に取り出すと人によっては“いい感じ”かどうかが何もピンとこない代物になる(顔の輪郭レイヤーDだけだとのっぺらぼう、E1E2E3レイヤーとかだけだと目・口・鼻が宙に浮かんでるだけで、どんなやつか見えてこない)。

それぞれのレイヤーを独立した状態で項目立てして書き下すWikiみたいなものは、作り終わったものを人が後から理解するために書くものくらいに思った方がいい。


――――――――

※1

有機的、というとわかりにくいかもしれないんですが、要はお母さんのお腹の中で形を持ってく赤ちゃんみたいな感じです。

人は心臓・胃・肺、みたいに個別に臓器を理解するけど、実際は全部がぼんやり同時並行的にできてくし、単体で独立閉鎖的に自分の仕事だけやってる臓器ってのは実際ない。どこも連係してる。みたいな。

――――――――


レイヤー停めないで当社比助かった例を挙げるとこんな感じです。


・キャラがちゃんと動いてくれるようになった

・プロットが最後まで作れるようになった

・どこかが想定外起こした時に“詰み”になる率が下がった


伊草がキャラ作って動かすのすーげーえー下手なのは旧版読んで下さった方だったらご存知だと思います。当社比マシになったのはレイヤー先輩のおかげ。

プロットはゼロがイチになった感じでかなり劇的でした。

詰み率は「やべーかなこれ」になった時、「手を入れてないレイヤー探して話ふってみよう」ができるようになったら下がりました。


それぞれ長く話を広げられるネタなんですが、ここまで書くだけで3500字いってしまったのでこの記事はここまでで。

また機会できたらまとめようと思います。


やるんなら次これにして、等ありましたらまたコメントなどでおしらせください。

考えをまとめたら別の順番じゃなきゃ書けなさそう、とかじゃなければ沿えたらと思います。

感想ももちろん、おきがるに!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る