伽藍胴殺人事件side雅隆/全16話
第42話 駿我雅隆 1
──二〇一六年十月、群馬
「くそっ! どこからだ!? どこから狂ったんだ!?」
その切れ長の目は、全てを俯瞰するように見透かしているようであり──
その薄い唇から紡がれる言の葉は、柔らかくも自信に満ちている。
整っているという表現がしっくりくるだろうか、
その
「だめだ……だめだだめだだめ……」
と、頭をがしがしと掻き毟り、眼前の美しく整ったテーブルに拳を叩き付ける。
何度も何度も叩き付け、拳に看過できない程の痛みが走った。目の前に拳を持ってきて開けば、小指が真っ赤に腫れ上がっている。
「あぁあぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
腹の底、心の底からの叫びが整った室内に響き渡る。無機質な室内。無駄なものが一切存在せず、生活感の欠片も感じられない室内。むしろ整い過ぎているが故に、この室内で人は正気を保っていられるのだろうかとさえ思ってしまう。
今この室内で整っていないのは……
あの二人に出会うまでは全てが整っていたはずだ。いや、やはり
そう、
だが
怖くなってきたのだ。言葉を覚えるのが異常に早く、三歳時点で豊富な語彙を理解し、まるで大人のように理論的に話し始めた息子の
そういった指摘するような言動が始まったのは
もちろんその言葉に悪気は無い。両親を観察し、思った言葉を他意もなく発していただけ。だが両親はそんな息子に恐怖を覚えた。もしかすれば
父が大切な
金庫を開けようとしている母を見た
幼いが故に、
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