第19話 大戦士の末裔

オレたちは王都の中で王城の次に目立つ建物を目指した。


校門に辿り着くと数え切れんほどの人だかりができていた。


「今年も大盛況ですね。」


「…毎年これか?」


オレは前世から人混みが苦手だったのもあり、うんざりしながら言った。


「はい、かの五大英傑のお一人が治める学園ですから。」


レイアはうんざりするオレの様子を見て苦笑しながら答える。


「まぁいい、それで受付は?」


「えーと…分かりやすく列を成してるあそこですね。」


「…並ぶとするか。」


長蛇の列を見て更にうんざりする。


「アビー、アーサー、ここでいいわ。貴方たちは家に戻って今回の襲撃のことと、ノル様と試験を受けることをお父様に伝えて。」


「ノル様、レイア様、お気を付けて。」


「お二人とも良い結果が出んことを。」


そう言ってメイドと騎士はオレたちから距離を取るとメイドが別のスクロールを発動してフッと消えた。


「行くか。」


「はい!」


「どけ、雑魚ども。」


「うわ!何するんだ!ちゃんと並べよ!!」


そうして並ぼうとすると早速問題が起きたようだ。


そちらを向くと、白髪のガキが突き飛ばされたのか倒れた状態で青い髪をオールバックに纏めあげたガキを見上げていた。


「並べだと?貴様、僕が誰か分かってて言ってるのか?」


「順番も守れない奴のことなんか知るかよ!」


起き上がりながら啖呵を切る白髪。

青髪は白髪の身なりを見てため息をつく。


「これだから平民は…貴様のような奴がこの格式高い学び舎に足を踏み入れることなどあってはならん、命は勘弁してやる。」


そう言って青髪の後ろに水の槍が生成される。


「なっ!?魔法まで使うかフツー!?」


「ふん、平民である貴様には今後一生お目にかかれん本物の魔法だ。ありがたく受け取るがいい。」


そう言って水の槍が射出され、白髪に向かって飛んでいく。


「あぁ…合格するまで使っちゃダメって言われてたけど、すまん父ちゃん。」


白髪が小声で父親に懺悔すると、次の瞬間カチリと時計の針が止まる音がした。


気が付けば青髪が大の字で倒れ伏していた。


「ほう…」


オレが感嘆しているとレイアは手を顎にあてて考え込んでいた。


「お父様がおっしゃっていたのはコレね。」


「侯爵が何か言ってたのか?」


、と。」


「…なるほど、思ったより分かりやすくて良いな。」


オレは如何にもな騒動に自然と口角が上がる。


「…ダメですよ?」


「…まだ何も言ってないだろ。」


「短い時間ですけどノル様のお人柄は多少分かりましたから。」


「(賢い女はつくづく苦手だ…)」


「今、私のことを苦手だと考えてるでしょう?」


「ぐっ…(鋭い女はますます苦手だ。)」


「フフ、ノル様の悔しそうなお顔に免じて今回は勘弁してあげましょう。さ、並びますよ!」


レイアはご機嫌に鼻歌を歌いながらオレを先導しながら歩き出した。


オレたちが最後尾につく、なんの偶然かその後ろにさっきの白髪がやってきた。


「くっそぉ…アイツのせいで俺までとばっちりじゃんかよぉ…」


どうやらあのイザコザで並び直しになったらしい。


「父ちゃんとの約束も破っちまうわ踏んだり蹴ったりだぜ…」


「災難だったな。」


「うぇ!?」


オレが急に振り返って声をかけると白髪は間抜けな声を出した。


「だが、いいケンカだった。」


「ど、ども…」


白髪はまさか褒められると思っていなかったのか緊張しているようだ。


「お前、瞬間移動できるのか?」


「なっ!?あ、アンタなんでっ!!?」


オレが単刀直入に聞くと、白髪は分かりやすく狼狽える。


先の戦い、一見いつの間にか青髪が倒れていたが五感が鋭いオレにはちゃんと見えていた。

白髪が、手刀を首に見舞ったのを。


「オレの目は特別なんだよ。」


「つ」


「つ?」


「ツイてねぇ〜〜〜〜〜…」


白髪はそう言って幸せ全てが口から放出されたかのようなクソデカため息を吐いた。


「空間魔法なんて…位階8の大魔法じゃないですか…!?」


レイアが小声でまくし立ててくる。


「なんで小声なんだよ。」


「当たり前じゃないですか!?位階8の魔法が使える平民なんて貴族からしたら喉から手が出るほど欲しいに決まってます!!!!!」


レイアはあくまで小声で荒れ狂う。


「じゃ、これはオレたちだけの秘密だな…というかなんでそんな危ねぇ橋渡って学園入りたいんだよ。」


「父ちゃんから言われたんだよ、この学園の学園長とは知り合いだから世話してもらえって。」


「……なんだと?」


「あ、貴方のお父上のお名前は…?」


レイアは恐る恐る尋ねる、その顔は青ざめている。


「テルゾだけど…え、俺の父ちゃん有名なの?」


「…オレは聞いたことないが。」


レイアの方を向くと、目を見開いていた。


「テルゾ・ガルルガン…!大戦士の血を引く一族の族長じゃないですかぁ!!!!」


位階8の空間魔法を使う白髪のガキは、五大英傑が1人『大戦士ウォーロック・ガルルガン』の末裔だった。


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