第2話 熱中できることがないという人へ その2

 お正月なのでスペシャルでもう一話熱い話しを書くことにした、第一話と同じくトピックで、熱中するならエロが手っ取り早いという話しの続きだ


 私はエロの二大要素は、①状況設定と、②倒錯だと信じている。これは食欲にも当てはまっている。例えば天気の良い日に水彩絵の具と洋紙を持って風光明媚な自然の只中へ行く際に、大きな海苔結びを作り、美味い緑茶を淹れてポットに入れて行く。 

 昼下がり、描画に疲れ一息入れたい時に陽光に煌めく山河を眺めながら茶を啜り、齧りつく海苔結びは格別だ。リビングで食っている十倍は美味い。これが状況設定だ。


  倒錯の話をすると、調理学校に通っているころ、こんなことがあった。すまし汁を作るのに上等の利尻昆布と南紀の鰹節を使って出汁を作った後、捨てるのではなく先生の指導の元、昆布を千切りにし、鰹節と混ぜてレンジで乾かし、温めて、更に醤油、味醂を混ぜて更にレンチンした。

 

 これを炊き立ての白飯に乗っけると極上の振りかけになる。ウソだと思ったらやってみるといい。出汁で使い終わった具材を捨てないで何とかならないかと散々考え、あり得ない用途にしている立派な倒錯だ。かの魯山人はこういうことをいっぱい述べている。


 というわけで、エロにおける一つ目の状況設定だ。

 盛り上がるセックスの際に、ラブホなぞ普通のしつらえである。セックスそのものの状況設定なので、しつらえによっては興醒めもある。私が推奨するのは少し遠方の温泉旅館だ。カノジョやかカレシ、夫婦でローカル線に乗っていくがいい。ローカル線はゆっくり進むので、今日はどんなヤラシイことをしようかとイマジネーションを巡らせるプロセスが極上だ。車は焦るし、ヤリすぎると睡眠不足で事故にも繋がるのでおすすめしない。


 和室というのは日本人にとって幼い頃から居住まいを正すオフィシャルな状況設定だったのでキンイを破る快感に満たされる。温泉が誰も来ないような混浴施設なら余計にいい。恥ずかしげに浴衣を脱ぐカノジョの様子などもいいが、カノジョを先に風呂に入れて、脱いだ後のパンツなんかを匂って体温を感じてみると、変態願望最大になっていよいよ期待は高まる。


 浴衣でまぐわう時は全部脱がさないのが鉄則だ。浴衣の乱れほど、日本人の琴線に触れる事は北斎以来、春画の歴史が証明している。あの行燈型のライトは極上の間接照明といえよう。カノジョが「恥ずかしいので消して」と言ってもそれを敢えて無視し、消さずに羞恥心を煽る。交わっている時に、


「最高にきれいだよ」


 は必殺の常套句だ。


 後、浴衣の紐はライトSM行為の必須アイテムになるので覚えておいていい、ただ後ろ手に縛ると相手を骨折させたりするリスクがあるので注意してやる方がいい。もちろん、浴衣の下に履くパンツは定番の白だ。黒は洋装である。浴衣の下のパンツはいいが、ノーブラは鉄則だ。ノーパンはロマンがない。あの脱がしにくいパンツを無理矢理引き下げるのが浪漫主義者というものだ。


 その二、倒錯の話をする。例えばJKとエッチすると逮捕されるリスクがあるのは大人なら分かっているだろう。であるのなら、カノジョにむかし高校のころ着ていたミニスカやリボンつきのカワイイ制服を着せてヤルのである。一丁前の化粧をし、髪を染めた大人に制服着せるほど盛り上がるエロはない。そういうのがないならメルカリで取り寄せたらいいだろう。


 あのルーズソックスというのは、とてもエロ趣味に叶っていてる極上のアイテムだ。後、パンツは半分だけ下ろして、後方突撃がキク。妊娠がOKな関係なら、ミニスカに発射するエンディングもいいだろう。


 もうひとつ外せないとしたら、体操服の半袖とブルマ。で、例えば運動部のコーチと部員というロールプレイングゲームを展開する。ボールなんかを持って行くと更にゲーム展開がリアルになる。


「お前、どうしてそんなプレーになるんだ」

「すみません、コーチ」

「オレがちゃんと腰を鍛えてやろう、そのブルマ、下ろしてみろ」

「いやです、ブルマですらハズイのに(泣き真似)」


とか、いくらでもヤラシイことは考えられる。


 秀吉が政治的、外交的に侘び茶の利休を重用していた頃、利休が「庭いっぱいに朝

顔が咲きました」と遣いを出したという。秀吉は何気なく利休の屋敷にいき、庭の障子を開けると朝顔は全部刈り取られていた。そして床の間の投げ入れに一本だけ、早朝に咲いた瑞々しい朝顔がこちらを向いていたという。


 その瞬間、聡明な秀吉の想像の中に、利休の茶庭一面を敷き詰める朝顔がこちらを向いていた。マルセルデュシャンのかの「泉」にも匹敵する倒錯の局地である。


 というわけで、「何も熱中することがない」というような退屈な人生を送るくらいなら、本能に任せて溢れる欲望にウツツを抜かす方がまだいい。


「こんな下品な事はできません、よく正月からこんな下劣なこと言いますね」


というのなら、映画を見たり、音楽を聴いたり、ライブやコンサート、アートギャラリーや美術館に行ったりすればいいだけだ。スポーツクラブで汗を流すのもいい。日本にはそういうところが溢れているのだから。


ほんとうに終わり








 


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熱中できることがないという人へ 山谷灘尾 @yamayanadao1

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