参考文献篇「つんどく法」

 以前のエッセイ『筆を執って10年経つこの頃』の『第10話 社会を書くのは難しい』の中で『物語を書く上で、その国の社会情勢がどのようになっているのかを決めなければならない』と書きました。

 2022年の秋、私は電撃大賞という新人賞に応募するために、十八~十九世紀アメリカを参考にしようと思い、次の四冊を読んで参考文献としました。

 とはいえ、実際に知識として作品に落とし込めたのは一割にも満たなかったのですが、これは私にとって普通であるため、気にしませんでした。


(1)的場昭弘『「19世紀」でわかる世界史講義』(日本実業出版社)

(2)ゴードン・S.ウッド『アメリカ独立革命』(岩波書店)

(3)宮津多美子『人種・ジェンダーからみるアメリカ史 丘の上の超大国の500年』(明石書店)

(4)小川寛大『南北戦争 アメリカを二つに裂いた内戦』(中央公論新社)


 ここで問題となるのは、人間は忘れる生き物であることです。正直、十八~十九世紀アメリカの社会事情を語れと言われたら「分かりません!」と大きめな声で答えることでしょう。

 ですので、私の場合、気になった頁にメモ入りの付箋をペタペタ貼って「そういえば、こんな話がなかっただろうか?」と思い返した時に、即座に情報へアクセスできるようにしています。


 しかし、参考文献を読むのには時間がかかります。

 ここで、外山滋比古『思考の整理学』(筑摩書房)に書かれている「つんどく法」なる読み方を紹介してみます。


 仮に参考文献が十冊あるとすると、一冊目の読破に一番時間がかかるでしょう。二、三冊目くらいから「これは知っているゾ」という箇所が出てくる。定説となっている考えが出てくると、更に読むスピードも上がる。

 こうなってくると、参考文献を読むことは苦にならなくなっていきます。何故なら「私はコレ知っている」状態となり、はじめて読む知識であっても「アレと関係しているな」「コレとの繋がりの中で生まれたのか」と想像力が膨らむからです。

 読めば読むほど、「私はコレ知っている」状態が強化されていき、すべて読み上げる時間が短縮されるのです。


 読み終えたら、まとめの文章を書くことも言っています。本当に大切なことは忘れないにせよ、細部はどんどんと忘却の彼方へと消え去ってしまうからです。

『たくさんの知識や事実が、頭の中で渦巻いているときに、これをまとめるのは、思ったほど楽ではない。まとめをきらう知見が多いからである。しかし、ノートもカードもないのだから、頭のノートがあとからの記入で消える前に整理を完了しなくてはいけない』(p.94)


 まとめると、

(一)参考文献を集める

(二)一気読みする

(三)まとめの文章を書く

 となります。本を積んで読破するのだから、つんどく法なのです。


 私がコレを知ったのは最近の話で、まとめの文章など書いていません。

 たまーに、難解過ぎる文献の場合はまとめていたのですが、たまーにの話です。


 つんどく法。私も一度挑戦してみようと思った次第で、このような文章を書いた次第であります。

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