エピローグ

「桜太郎、礼を言う。まさか貴様ごときに助けられるとはな」


「素直じゃないなあ、司ちゃんは」


 僕と司は他愛もない話をしながら歩いていた。突然、司が切り出す。


「しかし、今でもわからないことがある。なぜ麻雪は、鈴音を殺したのか? なぜその罪を、俺様や天才丸に着せようとしたのか? 天才丸の親父が麻雪に協力した理由は、心当たりがあるが」


「それ、僕もずっと気になってた。どうしてなの?」


「天才丸の親父は、うちのお袋の後輩なんだ。天才丸の親父はお袋を慕っていて、ストーカーまがいのことまでやってたらしい」


「『お母さんに生き写しの君』って、そういうことだったのかー」


「とにかく、今回の事件はわからないことだらけだ。結局、麻雪が持っていたナイフは凶器だと認定されたらしいがな」


「司ちゃん、難しいことばっかり考えてないで、今日はパーッとお祝いしようよ!」


「そうだな。よし、今夜は俺様のおごりだ!」


「わーい!」


 すっかり暗くなった帰り道を、僕らは二人でそんな話をしながら歩いてゆく。



 このとき、僕はまだ知る由もなかった。今回の事件の裏に、世間を揺るがす大事件が隠れていたことを。


 今回の事件は、これから待ち受ける波乱に満ちた日々の序章に過ぎなかったということを、僕は身をもって知ることになる。

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木道探偵物語 第一章「痛くない自殺の方法」 @komame-kurata

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