この事件の犯人は……

「この事件の犯人は……」




「君だよ、麻雪ちゃん」


「……えっ」


「何言ってんだ、あんた! 麻雪ちゃんはずっとあんたと一緒にいただろ!」


「だからですよ。僕はずっと、天才丸さんが犯人だと誤解するように誘導されていたんだ」


「どういうこと⁉ 兄さんはあたしを疑ってるっていうの⁉」


「それに、凶器の包丁には麻雪ちゃんの指紋はついてなかったぜ? こいつはどう説明するんだ?」


 三条が尋ねる。


「現場で説明した通りですよ。本当の凶器は、包丁よりも一回り小さい刃物だったんだ。包丁を刺したときは、布か何かを使ったんでしょうね」


「じゃあ、その本当の凶器はどこにあるっていうんだ?」


「殺害してから司ちゃんが帰ってくるまでの時間の短さを考えると、隠している暇はなかったでしょうね。三条さん、金属探知機はありますか?」


「ああ、ここにあるぜ。麻雪ちゃん、協力してくれるかい?」


「……わかったわ」




 ――辺りに電子音が鳴り響く。金属探知機が反応した証拠だ。麻雪の足元のあたりで反応したのが分かる。


「麻雪ちゃん、靴を脱いでくれるかい?」


「嫌よ! あたしは殺してないもの!」


「じゃあ、何もやましいことはないはずだよね?」


「……」


 ――麻雪はしぶしぶ靴を脱いだ。靴の中にあったのは、折りたたみ式のナイフだった。麻雪は焦った様子でまくしたてる。


「そうよ、確かにこれはナイフよ! でもこれが凶器だって証拠はどこにも」


「……麻雪さん、もうやめなよ」


 口を開いたのは天才丸だった。


「病院から薬を持ち出したのも君なんだろう? 僕は何もしていないからね」


「しかし、病院と無関係な麻雪ちゃんが薬を持ち出すなんて、できるのかい?」


 三条が問いかける。僕は頷く。


「できますよ、共犯者がいればね。そうでしょう?」


 僕はゆっくりと振り返る。そこに立っていたのは、天才丸先生だった。


「ちょ、ちょっと待ってよ。あたしと先生に何の接点があるっていうの?」


 麻雪は弁明を試みる。しかし先生は、ニヤリと笑みを浮かべて言った。


「麻雪さん、捕まるときは一緒だって言ったじゃないか。お母さんに生き写しの君を、私が見捨てる訳がないよ」


 麻雪は膝から崩れ落ちる。麻雪と先生はその後緊急逮捕され、司は釈放された。

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