第25話 鉱山村
汽車に乗り、数時間。ついに鉱山村の近くまで来た。王都とは全く違い、見る限り山、山、山。大自然に囲まれたところにそれはあった。
村に着いた時、一人のおじさんが僕達の方にきた。
ゴツイ体格に鋭い瞳、片目には動物にでも引っかかれたのかくっきりと三本の爪痕が残っていた。
「お久しぶりですエドワルドさん」
どうやらシエナはそのおじさんのことを知っているらしい。
エドワルドと呼ばれた男はくとを開いた。
「久しぶりだなシエナちゃん」
「そんなに子供じゃないよエドワルドさん」
ちゃん付けだと───。
「それでどうしたんだ?今日は騎士団の交代日だろ」
「はい、それで私達が来ました。今騎士団は少し忙しいみたいで代わりに任されたんです」
「そうかよろしくな」
その後、各々自己紹介をした。
「私はサナカ・ミカエルと言います」
「もしかしてミカエル王国の王女さんか?」
「はい、そうですよ」
エドワルドさんは少し驚いている様子だった。当然だ、二国の王女が揃っているのだから。
そうしてエドワルドさんに連れられ宿に案内された。
木で影ができてるからかな?王都より涼しい。
宿の部屋はそこそこ広く、二人ずつ入ってちょうどいいくらいだった。
なので僕とオルト、シエナとサナカといった感じで泊まることにした。
荷物を置いて少し休憩。
「なんか良いなこういうのも」
「そうだな。王都の騒がしさが無くなって心地良いよ」
「それにしてもよ、何でサナカさんも着いてきたんだ?」
「わかんないんだけど、僕目付けられてるっぽいんだよね……………」
「えっ!?何それ怖ぇ〜」
二校戦で少し目立ちすぎちゃったかもな。
しばらく休憩しているとドアを誰かにノックされた。
玄関に向かいドアを開けるとシエナとサナカの姿があった。どうやら仕事らしい。
「魔物がこの村に来るのはだいたい夜なんだけど、それまでも来る時は来るから見回りするよ」ということらしい。
村を四等分し、一人で見回ることになった。
シエナが全員に[同調]の魔法をかけたので何かあった時は話しかけて、と言い僕らは別れた。
自分の持ち場につき、僕は辺りを見回っていた。
散歩にはもってこいだな……………。なんて思いながら村を歩いていた。
この村には数十人の人が住んでおり、全ての家に田んぼや畑があり農業をして暮らしているみたいだ。たまにツルハシを持って森の中に入っていく人があるのは恐らく魔法石の採取だろう。魔法石は水色に光るクリスタルみたいな見た目をしておりそこそこ綺麗だ。それを売って収入を得ているのだろう。
一時間ほどして持ち場を一周した。
さすがに暇になってきたなぁ……………。
そう思い空を見上げていると村の人に話しかけられた。
「そこの兄ちゃん、ちょっと手伝ってくれねぇか」
「良いですよ」
何を手伝うのか分からないまま僕はそのおじさんに着いて行った。
「斧がを壊れちまって木が割れねぇんだ。兄ちゃんの魔法とかでどうにかならないかい?」
「僕に任せてくだい」
[空間断裂]
僕は軽々木を真っ二つに割った。
「兄ちゃん今何したんだ?俺には見えなかったぜ」
おじさんは目を見開いて驚いていた。
「す、すごい…………」
今まで気が付かなかったがそこには僕とあまり年が変わらなさそうな少女の姿があった。
癖の桃色の髪にまつ毛に覆われた大きな瞳を持つ少女。
麦わら帽子を被っており気が付かなかった。
僕は不意に少女と目が合った。
「こ、こんにちは…………」
「こんにちは」
少し恥ずかしそうに目を逸らす少女。
「この子、最近村に来てな。この村の若いもんはこの子くらいで同年代の子とあまり話したことないらしいんだ」
なるほど人見知りということか。
ならここは僕から話しかけようかな。
「はじめまして、僕はシン・クロイセル。君は?」
「私は…………シャル・クレア」
「シャルさんか。しばらくよろしくね」
「シャルで良いよ…………。後よろしく」
赤く染った頬を隠すためか麦わら帽子を深く被るシャル。
隙間から見える口は嬉しいのか微笑んでいた。
それから一時間ほどおじさんの手伝いをして時間を潰し、宿に戻った。
その間特に何も無かった。
※
夜を迎え、僕らはもう一度持ち場に移動した。昼とは違う異質な雰囲気を纏った村は心霊スポットかと思うほどに寒気がした。
『ワォォォォォォンッ!!』
尋常じゃないほどにでかい犬の遠吠えが聞こえた。
『来るよ───』
シエナの声が聞こえた瞬間、夜の空に何かの影が見えた。
その正体はすぐにわかった。さっきの遠吠えをした犯人だ。
オオカミをふた周りほど大きくした魔物、目は真っ赤に染まっていた。
「カ、カッケェー!」
だがまじまじと見ている時間などなかった。ざっと五体のオオカミが歯を剥き出しにし、飛びかかってきた。
[空間断裂]
その五体のオオカミの首を一気に飛ばす。
今回は村を守らることが前提なので遊んではいられない。
次々と森から飛び降りてくるオオカミをただただ倒していた。
オオカミ自体はそこまで強くない。攻撃パターンが単調であまり攻撃を避けようとしない。
だが数が桁違いに多い。どこから湧いてきたのかと考えてしまうほどに軍勢の波は止まらない。
みんなは大丈夫何だろうか?
10分近く立ちオオカミの波は収まった。
獣臭いな。それに血の匂いもする。
辺りはオオカミの死骸と血で小さな池みたいになっていた。
『こっちは終わったよ。みんなはどう?』
『ええ、終わりました。思ったより少なかったですね』
『こっちも終わったぜ。思ったより少なかったな』
あれが少なかった?絶対おかしいでしょ。
それに───シエナさんから連絡が来ない。
空間魔法しか使えない僕は学園に劣等生として入学した〜実は強かったムーブで楽しんでいるといつの間に学園の外でも噂になっていた〜 シュミ @syumi152
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