第3話
「ゔ―、し…、死ぐぅー…」
熱にうなされ、普段言わない独り言を出してしまった。体温計で熱を測ると39.0度でていた。体を動かすことがつらい。それにしても懐かしい友達の夢を見てしまったものだ。ずっと忘れていた彼らの…
記憶のフタが開いた感覚だった。今まで彼らのことを思い出そうとはしなかった。それが熱によって蘇ったようだ。大学入学後も、数回は会っていたが、それも次第に会うことも減っていった。理由は特にないと思う。私も彼らも各々の場所があるのだから、連絡することに遠慮して次第に疎遠になってしまったのだろう。いつも一緒にいた友達でもそうなるのだから、最初の半年たまたま同じ中学校というだけで一緒にいた場繋ぎの友達には余計にそう思ったのかもしれない。
時間が空くと人に連絡するのが億劫になる。毎日顔を合わせていた高校時代は何の取り止めのない内容でもメールにできていたのに今はもう連絡するにもそれ相応の理由が必要ではないかと思ってしまう。
久しぶりに連絡をしようと思っても、彼ら2人が何をいまさらと思われたら?そんな考えがいつも頭によぎって連絡できない。
月曜日、結局週末は風邪のせいでゆっくりできなかった。損した気分になりながら電車にゆられている。電車をおり、改札までの途中で田中の姿を見つけた。
「おはよう。」
「あ、おはようございます。」
田中の顔はこないだの落ち込んだ表情とは違いイキイキしている。どうやら、私とは違い週末は上手くリフレッシュできたようだ。
「明るい顔だね。週末どこか出かけた?」
「はい、高校の友達とキャンプに行ったんです」
田中は嬉しそうな感じが声で伝わってきた。
「そうか、良かったな」
私は今でも学生時代の友達と交流がある田中が羨ましかった。
「はい、あと事務所に着いたら金曜日の仕事の資料打ち出しときます」
「うん、お願い。あと…… 」
一瞬、言葉の続きを言おうか迷ったがいうことにした。
「その友達は大切にしろよ」
私は口に出して恥ずかしくなったが田中が真面目にもちろんと答えた。
あの日の僕ら @daiten727
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