lovely
「あ……あの、これ、カップスープ……です。良かったら、皆で食べてください」
「「「「ありがとうございます!!」」」」
「ま、また来ます」
「はい!」
「話せたー!! 芽衣!! 話せたよ!!」
「はいはい。良かった良かった」
「めっちゃ緊張したぁ!! でも超嬉しいー!!」
「今日は泣かずに済みそうだね」
「……そうでもない。今、もう泣きそう……」
「え? なんで?」
「だって、話せたけど、二階堂君は、他の子とも同じように話すじゃん。私は特別じゃない、って事でしょ? そう思うだけで苦しくなる……」
「もう……言ってる側から泣かないでよ……」
「だって……胸……苦しい……。今にも死にそう……。胸、えぐりたい」
「怖いこと言うなよ……」
「だって、ホント、それくらい苦しい……」
「……恋は、辛いよねぇ……」
季節は、11月。私は、ドリンクや、お菓子など、当たり前の差し入れは避けて、色々手を変え品を変え、印象に、少しでも、二階堂君の印象に残るように、差し入れを選んだ。
勿論、渡すには、芽衣の存在が無くてはならないのだけれど。一人で差し入れは、一回もしたことは無い。と言うか、芽衣が、都合が悪いと、一人でライブに来ることも出来ない。どんどんどんどん、ファンを増やす二階堂君が、どんどんどんどん遠くなってゆく。
そして、私の胸の痛みは、それに比例して、増すばかり。
―一年後の三月九日―
「このままで良いの? 麻耶、後悔しないの?」
「……もう……会えなくなるんだね。きっと、多分、相当、長い間……」
一生分の涙が、私に溢れる。
私は告白する事も無く、彼より一足先に、高校を卒業した――……。
―六年後―
「芽衣ー! 久しぶり!」
「麻耶!」
「クラス会、久しぶりだね」
「そうだね。成人式以来? みんな元気そうでよかったぁ! 麻耶も元気だった?」
「うん!」
その後、クラス会で三時間ほどみんなと過ごした、私と芽衣は、一足早くみんなと別れ、二人で喫茶店に入った。
「……麻耶、今、彼氏いる?」
「うん」
「えー! マジ!?」
「ふふふ。何よ、その反応」
「いやぁ……だって、まだ引きずっててもおかしくないかな……って思ってたから」
「まさか! ……でも、本当は、少し後悔はあるよ。バレちゃえば良かったなぁとか、少し二階堂君を困らせても、好きだって伝えれば良かったなぁとか……」
「そっか……」
「でも、二階堂君が、私の本当の初恋だったんだよ。あんな気持ちになった事、自分が初恋だと思ってた時は無かったもん。……まぁ、それは良いんだけど……」
「良いんだけど……何?」
「……可愛かったなって……」
「二階堂が?」
「私が」
「へ?」
「泣いて、笑って、不安になって、期待して、本当に不器用で……もう、毎日ジェットコースターみたいな毎日だったけど……」
「けど?」
本当に、あの日々の私は誰より可愛かった気がするの……。
LOVELY 涼 @m-amiya
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