感触

「芽衣、今日、ライブハウス付き合って!!」


「今日も? そろそろ一人で行けば?」


「ムムム無理だよ!! この前、芽衣が居てくれたおかげで、3回目のライブで、やっと差し入れ出来たんだから!!」


「でもさ、向こうも麻耶の顔、覚えててくれたじゃん。それに、結構話かけてくれたし」


「死ぬかと思ったよ!!!」


「は……?」


「もう、うれし過ぎて、家帰って、泣いた!! ……ううん。……切なすぎて泣いた……」


「本当に、恋愛恐怖症かよ……」


「嬉しいんだよ? 嬉しいんだけど、誰にでもあぁやって優しいのかな? とか、私なんて一個上だし、年上ってなんか


「年かぁ……まぁ、それは何とも言えないよね。好みは絶対あるし」


「そう……だよね。はぁ……胸痛い……泣きそう……」


「ここで泣くな」


「……はい」


確かに。ここは、教室だもんな……。クラスメイトに全部バラす気か? 私。






でも、あれ以来、私は、毎日嘘みたいに涙が出て来る。もう、切なくて、苦しくて、好きすぎて。


もしも、二階堂にかいどう君に、好きな人がいたら……彼女が、いたら……、そう考えるだけで、胸にきゅぅぅぅぅ!! って何かが詰まって、息が上手くできないんだ。そして、気付かないうちに、涙がポロポロポロポロ私をこぼれる。


初恋の時、私はこれと本当によく似た感覚に陥ったけれど、何が違うって……好きのレベルが違いすぎる。初恋って、どこか、みたいなところあった。だから、この切なさ、苦しさ、悲しさ、辛さ、痛さ……初恋とは比べ物にならなかった。


私は、毎日、二階堂君を想って泣いた。歌声を、思い出しながら、耳にこびりついた彼の声を聴きながら、眠りにつく。






ポンっ!


「!」


私の肩に、誰かが触れる。


高坂こうさか先輩、また来てくれたんですね!」


「え! あ、二階堂君……!?」


「いつも、ありがとうございます!! 今日のどうでした?」


「す、すごく良かったよ!!」


「ありがとうございます!! また、聴きに来てくださいね!!」


(も……も……も……)






「もちろん……」


(……)


ガバッ!!


「ゆ……め?」


(あ……)


私は、泣けてきた。だって……。


右肩に、消えない、二階堂君が触れた生々しい感覚……。夢のくせに、こんなに、リアルに私の欲望を捕らえるなんて……。


(目まで……合っちゃった……)










―ライブ当日―

「病気だな。恋煩い」


「……こんなに……苦しいものだとは思ってなかった……」


「うわ……ここで泣くな。もう二階堂出て来るぞ……」


「「「「「きゃーーーー!!!!」」」」」





この瞬間だけは、痛みも苦しみもない。


只、ひたすら、見つめるだけ。


を――……。

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