LOVELY

可愛い後輩

「きゃ!」


バサバサバサバサ……ッ!!


「す、すみません!」


階段で、私の頭に上からノートの雨が降ってきた。


「イッター……」


「だ、大丈夫ですか!?」


その言葉から、私は、二つ、推理をしてみた。まずは、大分高い方だとはお思うけど、これは、声変わりしても、アルト歌えちゃえる男子の声。そして、敬語って事は、一年生だろう。と言う推理だ。


「あ、大丈夫、大丈……ぶ……」


私は、目が合って、即刻その吸い込まれそうな瞳に、心を射抜かれてしまった。そう。一般的に言う、一目惚れと言うやつだ。


「え……やっぱり、どこか怪我しちゃいましたか?」


「……」


「あ……の……」


「あ、や! だ、大丈夫です!!」


(何敬語使っちゃってるの、私……)


もう、パニックだ。だって、滅茶苦茶可愛い男の子。身長は小さいけど、高い声と、それがまたマッチして、何とも言えないプリティさがある。


「顔、ぶつけちゃいましたよね? 顔赤ですし……」


「え!?」


「え?」


(顔赤いの!? 私!?)


「あ! や! 本当、大丈夫だから! ほら、拾おう!」


あたふたしながら、私は、その後輩の男子のノートを拾い出した。


「良いですよ! 一応、保健室行きましょう! 怪我してたら危険ですし!」


(私の知らないふり……見破らないで!)


焦りながら、私は、そう願っていた。なのに――……、


「行きましょう」


ガバッ!


「きゃ!」


その男の子は、私を抱き上げると、そんな小さな体の何処にそんな力があるの?と思うほど軽快に階段を駆けおりると、保健室に搬送してくれた。


「あー、このくらいなら、全然問題ないわよ。ちょっと、冷やして置けば大丈夫」


「本当ですか? あー……よかったっす!」


「あ……ありがとう」


「当然です。僕のせいなんで」







その後、クラスメイトの女子にその話をしたら、その後輩の男の子は、どうやら有名人らしかった。どう有名かと言うと、軽音部に入っていて、ギターボーカルをしているのだと言う。ギターもうまいし、歌もすごく上手いらしい。


「……全然知らなかった……」


麻耶まや、そう言うバンドとか興味ないもんね。でも、結構本格的にやってるらしいよ。月一で、ライブハウスでも歌ってるらしいし」


「そうなの!? 聴きたい!! 芽衣めい、付き合ってよ!」


「別にいいけど……その子、モテるらしいよ?麻耶、恋愛でいっつも消極的で、なんもできずに終わるばっかじゃん。今回は手強すぎない?」


「そんなにモテるの?」


「うん。ファンクラブまであるよ」


「入る!!」


「や……そう言う事じゃなくて……」


芽衣がげんなりする。でも、確かに、そんな人を好きなって、一体どうすれば良いのだろう?私は、芽衣の言う通り恋には消極的だ。別にトラウマがあるとかじゃないけど、何となく、男子が苦手で、何となく、男子と話さなくて……。


でも、こればっかは……。一目惚ればっかは、私もどうする事も出来ない。だって、仕方ない。



好きになっちゃったんだから――……。

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