重い孤独に心をむしばまれて

突然、真の孤独のただなかに放り出された主人公。どこにも人はいない。いや動物すらいない。生活することは可能だが、話し相手もすれ違う他人もいない。たったひとりという絶望に潰れ、彼が向かったのは……。
人間は、たったひとりになったとき、たとえ食料や生活環境が整っていて「生きる」ことが可能であっても、ひとりぼっちという事実に耐えられない生きものなのかもしれない。孤独の重圧が本文からのしかかり、読み手も主人公の心情にシンクロして「そうだ、こうなったらもう……」などと思ってしまう。だからこそ、ラストには心底安堵するし、心がとてもあたたかくなる。読み手の感情まで引きずり込む文章力の高さがすばらしい。