圧倒的技術革新

@lionspace

第1話


 親だと思ってた人間たちからは、自分が精子バンクと卵子提供で作られた血縁など関係の無い存在だと知らされた。


 特にショックは受けなかったが、なんとなく寂しさのようなものを覚えたかもしれない。




 学問は、先述したように脳内デバイスのメインサーバーから文献を閲覧すれば簡単に理解できる。


 スポーツは嫌いだ。ここでは体力仕事をする必要もないし、ましてや誰かと取っ組み合いの喧嘩になることなんてないから、体を鍛える必要は無い。体調管理だってサプリで充分だ。




 恋愛に関していえば、周りにいる人々は、みんな美男美女だとは思う。なぜなら自分もそうだったように、精子バンクと卵子バンクのおかげで容姿の優れた人間を作る事など、この世界にとっては朝飯前だからだ。


 しかし、当たり前と化した美の代償として、その感動は平凡化した。


 


 性行為はすでに快楽目的のものとだけされた。最悪VRでも済ませれる。なんなら、VRと快楽装置のおかげで、生身より仮想空間でのセックスの方が気持ちがいい。


 しかし、簡単に手に入るそれのおかげか、これもまたすでに飽きた。何か寂しかった。




 娯楽は一応ある。しかし平凡すぎる日々のせいか、感情が乏しくてなかなか反応しない。強い怒りや喜びなども、感情発生装置のおかげでこれもまた簡単に経験できた。全ては電気信号だからだ。これもまた、もうすでに飽きた。






 ーーー経験というものが、羨ましいんだ。


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