第8話 新たなぶっかけプレイ誕生!

 千佳が望んだ通り、お弁当のオカズにマヨネーズをかけたボク。白身魚のフライと唐揚げはともかく、かぼちゃの煮物と卵焼きにかけるのはためらったよ…。


それでも彼女はすごく喜んでいた。内心ボクは複雑だけど、あまり気にしない方が良さそうだね。



 放課後になり、ボクはいつもと変わらず千佳の家にお邪魔する。リビングに入ったところ、キッチンにいた千尋さんがこっちに来てくれた。


「母さん、今日の戦果を報告するから」


「やっとなのね♪ 待ち侘びたわ♪」


オカズにマヨネーズをかけ終わった画像を楽しみにするなんて、やっぱり変わってるよな~。ボクはそう心の中でツッコんだ。



 「…これよ」

千佳は携帯であの画像を千尋さんに見せる。


「うまくぶっかけてあるわね~♪ さすがはーちゃん♪」


そんなのを褒められても嬉しくないんだけど…。


「…あら? ご飯にはあまりぶっかかってないわね」


「そうなのよ! アタシは全然気にしないのに、創が日和ったから…」


「だって♪次は気を付けてね♪」


「はぁ…」

こんな風に言われるのは、世界広しといえどボクだけだろう。



 「そうそう。家事をしてる時に他のぶっかけ候補を考えてたのよ♪」


もうぶっかけ話はいらないけど、千尋さんの嬉しそうな様子を見ると言えない。


「なになに?」


千佳は興味津々だ。いくら下ネタ大好き母娘でも、そんなに食い付かないでしょ。


「“練乳”なんてどうかしら? マヨネーズに合わないものにもきっと合うわ♪」


イチゴとかの果物には合いそうだ。千尋さんの言う通りかも。


「母さん。それってどっちかと言うと、創じゃなくてアタシ達向けじゃない?」


“向け”って何?


「…母乳のことね♪ 今日のお弁当ははーちゃんがかけたから、明日はちーちゃんがかけてあげたら?」


「そうする! しかも明日は木曜日!」


千佳がハイテンションの理由は明白だ。木曜日は千佳か千尋さんがお弁当を作る日になる。


「アタシ(わたし)達のターン!(♪)」


2人して、デッキからカードをドローする仕草を見せる。ボクが小学生の頃、カードゲームアニメにハマっていたのを未だに覚えていたようだ…。


「創、楽しみにしててね」


「ちーちゃん、わたしも協力するから♪」


「お願い。アタシ1人じゃ色々不安なのよね~」


今日と違って、合わないオカズにはかけない感じだからそこは安心できるけど…。



 翌日の朝。千佳の家の前で少し待つと、彼女が嬉しそうな様子で玄関から出てきた。見るからに機嫌が良さそうだ。


「おっはよ~!」


「おはよう千佳。調子良さそうだね」


「うん。火曜と違って、アタシもお弁当作りを手伝えたからね。と言っても、ほとんど母さんに任せちゃったけど…」


「そうなんだ。早起き大変だったんでしょ?」

ボクより早いのは間違いない。


「まぁね。でも創のためだから頑張れるの」


下ネタ弁当が関わってるとはいえ、こんな嬉しい事を言ってくれるなんてありがたいよ。


「行こっか」


「うん」


千佳が差し出した手を握り、ボク達は登校し始める。



 そして時は流れ昼休みになった。いよいよ下ネタ弁当とご対面だ。千佳はカバンからお弁当箱を2箱取り出す。


この中に練乳をかける果物が入ってるのか…。


「練乳をかけるデザートはタッパーに入れてあるから安心して」

千佳はそう言って、小さいタッパーも取り出す。


それは透明だから中身がわかる。イチゴとバナナとパイナップルが入ってるな。


「ぶっかけプレイは後のお楽しみ。先にお弁当ね」


「うん」

千佳がお弁当を開けたのを見て、ボクも開ける。


…火曜日の時とは違うふりかけが白米にかかっている。オカズはタコさんウインナー・ミニグラタン・エビフライ・ポテトサラダのようだ。


「創。タコさんウインナーを掴んでみて」


千佳がそう言うので、箸でつまんでみる。…すると、小さくて細長く切られたゴボウが出てきた。


「ゴボウがタコのに入ってるってシチュエーションなの。〇乗位のほうがわかりやすいかも?」


あの時の話を応用させたみたいだ。(6話参照)


「話は一旦ここまでにしよっか。お腹すいたし」


「そうだね。ボクもお腹ペコペコだよ」


一緒に“いただきます”を言ってから、ボク達は食べ始める。



 ……お弁当を食べ切り、後は果物だけになった。


「今回はアタシが練乳をかけるわ」


「うん、お願い」


「創。“ぴゅーぴゅー”忘れないでね」


そういえばボクがマヨネーズをかけてる間、千佳はずっとぴゅーぴゅー言っていたっけ。今度はボクの番って事?


「わかった…」


「それじゃ、かけるわよ」


…千佳が本当に練乳をかけ始めた。タイミングは今だ。


「ぴゅーぴゅー…」

恥ずかしいので小声で言い続ける。


そんなボクを見て、千佳は嬉しそうにかけ続けるのだった。

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今宮君とH大好き古宮さん あかせ @red_blanc

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