第2話・重い出話
朝の教室。五時十五分と、授業の始まる時間がもう過ぎているにもかかわらず、先生はまだ現れず。元気いっぱいな可愛い子供たちは気にせずはしゃいでいる。「プロテモン」のカードでバトルをする子達も居れば、真面目に自習や自トレに励んでいる子達も居た。女の子たちのグループは、来週の遠足の為に等身大のてるてる坊主を作って、サンドバッグにして可愛がっていた。
そこで、やっと骨太田先生が登場する。所々破れた服に木の枝や葉っぱが絡んでおり、顔も土まみれ。
先生「はいはい、皆さん、席に付きましょうね。今日はちょっと事情があってね、遅れたもんで。早速授業を始めましょう」
ツヨ子「先生!ちょっとやばい感じだけど何があったのー?」
先生「いや、まぁ、罠にひっかかってしまってね。玄関の前に鉄の檻が設置されていて、気づいたらそこに閉じ込められていたんだよね。格子が太かったから壊すのに時間かかってしまって、こうやって遅れてきちゃったわけさ。すまんな」
筋次郎「でも服とか破れてますよ?」
先生「そうだな、檻の中には熊も居たから、一応あいつを仕留めてから出たんだよ。これで分かったか?大人って大変だぞ!」
ツヨ子「でもなんで先生の家の前にあんな罠が・・・?」
先生「さあな。ガキのいたずらだろ。まあ、ともかく、今日なんの授業をやるかを決めないとだ。邪君、ルーレットを回してくれ」
授業が終わり、子供達は部活の準備をはじめている。
太腕ノ助「貴様、数学の直後の割にピンピンしてるじゃねぇか」
筋次郎「まぁな。大地のエネルギーを汲み取って偉大なる力を自分の身体の中に注ぐ方法を見つけてね。実はもう、寝たり休んだりしなくてもいいんだぜ」
太「へー。やるじゃん」
筋「そしてほら、これを見てみろ」
筋次郎はリュックサックから小袖を取り出す。右半分は黒、左半分は白で、襟は金色。胸に魚太極図の刺繍が入っている。小袖という割には袖はかなりでかい。
「部活の話をしていたら、一緒に住んでいる警察官が徹夜して作ってくれたんだ。昔は風水の県大会に出たんだとか、そんなこと言ってた」
太「じゃあ、すごい人じゃん。先生はどうだろ。県大会とか出たことあんのかな」
噂をすればなんとやら、先生は二人の後ろに突然現れる。身の丈2メートルもある大男だが、その動きは素早く、忍び込もうとしたら誰にも察知されず自由に動ける。不思議である。
先生「県大会だと?笑止千万だこと」
太「うお!先生じゃん。」
先生「お前ら、聞きたいのか?先生がどんなにすごいかって」
ツヨ子「聞きたい!です!」
先生「フン。これは、結構前の話だ。具体的に言うと・・・俺の生え際後退5センチ分前の話・・・」
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混沌の時代。悪に満ちた世界を彷徨い、人々は戦い、争い、躊躇なく互いを騙し合う生地獄。友人同士であっても、現代のように技術や文化も発展しておらず、連絡をとるのも会う為に移動するのも一苦労。数人の有力者が社会を牛耳、人の心は闇の濃霧に覆われている。この闇もまた広く、深く、底しれず。感情を失っただけでなく、人間の誇りであろう知恵と理性さえも失ったのだ。町に出たのなら、いつ、誰に斬られるかと怯えながら道を歩かなければならぬという、そんな時代。1998年である。
夢を抱えてやっとの事で大学を卒業できた
「偏差値低くても良かろう。親から学費を借りていて良かろう。8年間をかけて短大を出ていて良かろう。何がどうあれ、俺は世界一のピアニストになってやる。」
彼はそう信じていた。しかし、運命の悪戯とでも言うべきか、彼にはピアノがなかった。もっとも、人生で一度もピアノを引いた事がなかったのだ。不平等なこの世界は骨太田大史をうんざりさせていた。努力が足りなかった訳ではない。鉛筆削り屋でのバイトをいくら頑張っても、鉛筆一本に付き10円しか稼げないのだ。丁寧にやるのであれば、一時間で削れる鉛筆はおおよそ三本。睡眠を削って鉛筆を削っていればピアノが手に入るなど、そんな生ぬるい話でもない。
「俺のせいじゃない。親のせいでも、店長のせいでもない。一体誰のせいなんだ?なんで俺はこんなに苦しまなければいけないんだ?」
一日分の給与を賽銭箱に突っ込みながら、骨太田は神に問う。
「悪いのはお前さんじゃない。この世界が悪いのじゃ」と、一つの声が答える。しかし誰も見えない。
「誰だ?」
「ホホホ!儂の名前は
「
「ならば、鍛えてやろう。儂が住まい、
声は遠くなり、あっさり消えていった。
骨太田の夢は、もう変わっていた。
「何がどうあれ、この世界を救ってやる」
ガチムチ筋トレキッズ 第二頭筋 筋肉は砕けない Marco Godano @MarcoG
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