ガチムチ筋トレキッズ 第二頭筋 筋肉は砕けない

Marco Godano

第1話・部分的な活動

骨太田ほねぶとだ先生「ちょっとしたお知らせがあります」


筋次郎きんじろう「転校生ですか!?」


骨太田先生「いいえ、転校生なんていません」


太腕ノ助ふとうでのすけ「え?じゃあ、教室の外に突っ立っているやつはなんですか?」


骨太田先生「教室の外?あー、よこしま悪巧わるだくみ君ね。俺の秘書として昨日雇ったばかりだ。まあ、いないふりしてくれ。ともかく、お知らせだけど、我が校で部活制度を始める事にした。君達で新しい部活を作っても良いし、この俺が予め用意した部活に参加してもよい。今日中に決めてくれ。では、授業を始めるとするか。今日は国語な」


第二の昼休みになって、太腕ノ助と筋次郎はメシを食べながら話している。

ちなみにこの学校は、生徒の食欲の都合上、昼休みが二回あります。


太腕ノ助「部活かぁ。悩むね」


筋次郎「他のやつらからチラシとかもらったけどよ、魅力的なのをばかり作りやがって。決められなくなるだろうが。野菜部とか、良さそうじゃね?」


太「悪くはないな。でも道具は自腹ですって書いてんだよな、ケチ共が」


筋「中古の鍬しか買えない貧乏っていじめられそうだしなぁ」


太「茶道部も良くねぇか?カテキン摂れるし」


筋「そいつは無理だな、猫舌だし。あとは・・・この『キンケンブ』ってなんだろ?韓国料理とかそういう系?」


太「ああ、筋肉研究部か。あんなん絶対だめだよ。細男ほそおが考え出したぜ?」


筋「あの棒人間が?頭でもおかしくなかったのか、あいつ?」


太「元々だろ。まぁ、ほら、筋肉がねぇから研究するって話だろう」


筋「研究してどうにかなるもんかよ。そんな暇あったら鍛えた方が良くね?」


太「しゃあないよ。あいつ頭悪いから、こういうのは難して理解できねぇのさ」


筋「だな。後はなんだろ。サッカー部、スクワット部、漫研部、三頭筋鑑賞部・・・それと・・・なんだこのチラシ?紙めっちゃ黄ばんでるし、崩し字だし、全く読めねぇじゃねぇか!」


太「俺によこせ、このひょろ脳ばかが。ん・・・?すまん、流石にこれは俺でもよめねぇ。ってか、コピーでもなくね?赤い墨でそのまま筆で書いてあるように見えるが・・・」


その時、二人の机に大きな影が現れる。上を見てみると、安いスーツの割に貫禄のある骨太田先生が近くまで来ていた。

骨太田先生「おやおや。二人共、どうしたかね?俺の部活のチラシをそんなにジロジロ見ちゃって。」


太「え、先生のですか?てか、なんの部活ですか?」


骨太だ先生「良く聞いてくれた。俺が考え出した最高で最強の部活、男の中の男の集まり、精神も身体も極め清め己を磨く為の心の道場。その名も『風水部』」


筋「かっけぇな!」


太「マジかっけぇ!で、メンバーは誰います?」


骨太田先生「現時点では、そうだな、俺のみ」


筋「え?他誰もいないの?」


太「というか先生も参加すんの?生徒じゃないのに?」


骨太田先生「わかっちょらんな。風水たる神聖な知識をお前らに教えるために作ったものだ」


筋「へー。で、太腕ノ助くん、どうする?」


太「やっぱ漫研部にすっか?」


骨太田先生「何が漫研だ、猿どもが!お前らに教えるためと言ったのは、文字通りお前ら二人のためだ。お前らは超級風水師にならなければならない」


筋「へー。なんでですか?」


骨太田先生「それが運命なのだから。風水の流れが俺に語りかけてきた。囁いている・・・来たる災いの事をな。救うにも値しない腐りきったこの世界でも、否が応でもそれを守るのが俺に課された宿命。だから俺は聞いた。どうすればこの世を救えるか、と。そうしたら、風水の流れに宿る無数の意識達が答えた。森々太腕ノ助と出貝筋次郎に風水を教えろ、とな。」


(放課後)


筋次郎「なんでツヨ子もいる?」


ツヨ子「楽しそうだったからツヨ子も風水部に入ったよ!」


筋次郎「いや、でも、これは部活っていうか、宿命とかあーゆーやつだから。」


太腕ノ助「い、いいじゃないか!別に!一緒に宿命しようぜ!」


骨太田先生「では諸君、始めましょう。最初だからとりあえず基礎を学びましょう。今日はこの世とあの世の狭間に巣食う悪の精霊を屈服させて、しもべにする方法を覚えよう。風水羅盤はちゃんと持ってきたか?」


子供達「はーい」


担任であり、パートタイムで陰陽師であり、そして超級風水師である骨太田先生の指示の元、逞しい教え子達は初めて風水の力の勉強に挑む。


先生「このの所をね、こうやってやるんだよ」

筋次郎「ごめんなさい、リサイクルショップで買った羅盤なもんで文字がちょっと欠けちゃってます」


ツヨ子「せんせー、悪霊でちゃったよ!どうすればいいの?」

先生「とりあえず一発殴ってやれ」


太腕ノ助「あのー、良く分かりませんけど、末代まで呪ってやるとか言ってますよ?」

先生「適当にお経とか唱えてりゃ勝手に消えるから」

筋次郎「ひでーな。関係ない松田まで呪う事はないだろ」


汗だくになりながらも、元気いっぱいな子供たちは練習を終える。


骨太だ先生「よし、今日はこんくらいにしておこう。やっぱりお前らには才能がある。出貝君、氣の操り方はもうバッチリじゃねぇか」


筋次郎「まあ、なんだ、その気になればどーってこたぁありませんよ」


先生「そしてツヨ子君、四象ししょうまでこんなにあっさり召喚しちゃって。先生は嬉しいぞ」


ツヨ子「ありがとうございます!でも・・・君?」


先生「そして森々君、貴様。こんなに早く他界を行き来できるようになるなんて・・・俺が始めたときは三日もかかったぞ?」


ツヨ子「太腕ノ助君、すごいじゃん!」


太腕ノ助「へへ、照れるなぁ・・・」


先生「このまま進めたいとろこだが、もう0時過ぎたし、帰ってこなきゃお前らの親も流石に心配するだろ?」


筋次郎「俺は大丈夫っすよ?こないだお姉ちゃんを殺した時に家を追い出されたし、もう学校の庭の小屋に住んでますし」


先生「え?小学生が一人で?」


筋次郎「ううん、警察官三人組付いていますよ。裁判官さんが、なんつーの、情状酌量とかしてあげるけどそのかわりずっと観察な、って言ったから。麻雀は弱いけどいい人達ですよ」


先生「ならよかった。どっちにせよ、この時間帯にやれば流れを乱してしまうから続きは明日だな」


その時、木の影から誰かが盗み見ている。

???「骨太田め!また余計な事をしおって。あいつの力は侮れん・・・千年前の戦いでも十分世話になったからな。計画を早く進めねば・・・」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る