ネコミミ少女とネット住民による人生開拓

本当によく出来たお話です。魅力的なポイントはいくつかありますが大きくは今の所3つです。
一つ目は異世界の開拓が堅実な点です。
可愛いネコミミ少女が女神様から与えられた力でネット住民達を召喚し、協力して異世界を開拓しながらより良い生活を目指す物語と聞くと割とありふれた感じに思えますが、ネット住民達は召喚に際して特殊な力を持ちますが同時に制限がありなんでも思い通りには行きません。なので現在他の植生や地理を調べ、個々人が持つ微々たる個性や能力や人間性を持ち寄ってなんとか行動範囲を広げたり、竪穴式住居を作ったりなど次々と進む割には進捗は緩いので見ていてとてものめり込みます。また女神様の力が現代のデジタルライフに即しており、トライアンドエラーを繰り返して異世界ながら現実的な形で開拓が進むので、児童書のようなタイムスキップがありません。非常に堅実です。
二つ目は登場人物がよく作り込まれていることです。
物語の主人公はミニャですが、同時に賢者と呼ばれるネット住民達も主人公です。彼らは00年代によくいた掲示板に屯するネット住民風ですが、初期メンバーは社会に対して上手くいかない人や惰性になっている人達が多く、異世界を介して自分の生活を良くしたいと考えていますが、ミニャのことを第一に考えているので見ていて応援したくなります。また大人しい子には元気な子が友達に、家族である人達はなんとなく似た雰囲気があるなどキャラクターの相互関係がよく考えられています。
人間性の考え方も良いです。異世界に行くと生き物を打倒するのに抵抗を感じないほうが都合が良いのでそうなりがちですが、この作品ではゴブリンを倒すのも出来ない人出来る人がいて、出来る人もかなり葛藤してからになります。また本気で人生を変えたいと思っているニートや必死な人ほど覚悟が出来て、女子高生とかは戦闘から離れたがる傾向がある点もとてもよく考えられています。但し普通はそういう人ばかりなので話をスムーズにする為に戦闘やサバイバルが得意な人や戦略が得意な人、まとめ役やフォローが得意な人がいて葛藤だけで進まないということがなくストレスがありません。
3つめが描写がとても良いと言う点です。
賢者たちは小さい人形に憑依して開拓に従事しますが、小さい故の描写が細かく描かれています。普通なら簡単な段差を登るのも、小さな木の根や繁茂した草木を掻き分けるのも人形サイズでは一苦労です。川下りの描写も臨場感があり笹舟にカメラを乗せてみたらこんな感じかなと思わず感じてしまうほどです。忍び込んだり潜んだり、抱えて交代するなど人形と女神様の力の特性を活かした描写などもよく出来てると思いました。ドガーン、バーンみたいな安直な擬音もありません。ただし満面の笑みである「ニコパ」はあります。可愛い。

とりあえず感じた良いポイントは以上ですが、実際にこんなことが起きたらそりゃ学校や仕事サボりたくなっちゃうよねとか思わせてくれるような、他の方のレビューにもありましたが、実際に行きたくなるような世界観の作り方がとてもいいです。ミニャと賢者達の交流が微笑ましく癒されるので是非読んでもらいたいです。最近はこの作品の更新を糧に毎日電車で職場まで…(この先はページが破られている