1-3 人形のスペックは?
ミニャと握手を終えたサバイバーは、一度大きく深呼吸する素振りを見せると、さっそくなにやら行動を開始する。ミニャは興味津々だ。
「なにしてるの?」
ミニャの質問にサバイバーはフキダシで答えた。
『サバイバー:俺に何ができるのか確認してるんだよ。ミニャちゃんは俺がどんな能力を持っているかわかるかい?』
「えー、ミニャわかんないなぁ。んふふぅ」
ミニャはにこにこしながら、そんなサバイバーの行動を見守った。さすが幼女、お人形が大好きなのである。
しばらくすると、サバイバーの前に小さなウインドウが現れた。
「みゃっ、ウインドウ! ミニャと一緒! ねえねえミニャと一緒だよ!」
ミニャはサバイバーに一緒だということを教えてあげた。一緒なことが好きな様子。
『サバイバー:ああ、本当だ。一緒だね。嬉しいね?』
「うん! 嬉しい!」
サバイバーは、人形の仕様を噛みしめるようにミニャの言葉に頷いた。
『サバイバー:ミニャちゃんはウインドウの使い方がわかるのかい?』
「うーん、ミニャ、ちょっとしかわからない!」
『サバイバー:そうか。じゃあ一緒に使い方を覚えていこうな』
「うん!」
サバイバーはなかなか幼女の扱いが上手い様子だった。
しばらくすると、チャットルームにサバイバーからコメントが現れた。
≪サバイバー:問題なし!≫
≪覇王鈴木:サバイバー無事か!≫
≪サバイバー:小人になったみたいで超楽しい! これマジで異世界だよ!≫
≪アルカス:うぉおおお、次は約束通り俺だからな!≫
サバイバーはそんなコメントをしながら、ぴょんぴょんとジャンプした。
≪ニーテスト:サバイバー、ミニャに危険がないとも言い切れない。早急にいろいろと報告してくれ≫
≪サバイバー:すまん、その通りだな。ちょっと待ってくれ。俺のステータスを表示するよ≫
ニーテストの言葉を受けて、サバイバーは浮かれた気持ちを抑えて報告を始めた。
まず自分のウインドウを晒す。そこにはサバイバーのステータスが表示されていた。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■
サバイバー
お仕事ポイント:2P
ジョブ:探索者
属性:水
ボディ:カカロン人形
活動時間:230/240
魔力:500/500
影響制限
動物:0/100P
魔物:0/100P
植生:0/100P
地形:0/100P
生産:0/100P
伝授:0/100P
■■■■■■■■■■■■■■■■■■
≪サバイバー:まず、こんな体だが五感が全て存在する。息は出ないが呼吸らしいこともしているし、今は興奮で胸がドキドキしている。体の可動性能は自分の体となにも変わらないように思える。ただ、筋力はわからない。この辺りはゆっくりできる時に報告するよ≫
≪覇王鈴木:ボディタイプが明記されているから、これがいろいろなことに影響しそうだな≫
≪ニーテスト:活動時間は1分で1点減っているようだな。となると4時間活動できるのか≫
≪ネムネム:じゃあ約4時間でサバイバーは死ぬってこと?(;’∀’)やべぇ!≫
≪サバイバー:やめろやめろ。帰還するんだと思う。というかそう信じたい≫
≪アルカス:魔法は!? 使ってよ!≫
アルカスの要望を受けて、サバイバーは魔法を使ってみることにした。
ミニャに動かないように伝えて、サバイバーは茂みから出て周辺を探ると、川の上流へと手を向けた。
茂みからピョコンと顔を出したミニャがワクワクしてサバイバーを見つめる。
サバイバーがしばらくあれこれやったのちに、手から水の弾が放出された。水の弾は野球選手が速球を投げる程度の高速で空の上に飛んでいき、やがて空中で飛散した。飛距離は50mほどだっただろうか。
魔法を放つと、ステータスに変化が現れ、『魔力』が10点減った。
「ふわぁ、しゅげーっ!」
興奮したミニャはキャッキャとして茂みを揺らした。
サバイバーは慌ててミニャに近寄り、お口に手を添える仕草。ミニャはハッとして、両手で口を塞いだ。
サバイバーは周囲を警戒し、危険がないことに安堵した。
≪サバイバー:破壊力は不明だが、発射時に音がないのがいいね≫
≪アルカス:岩とか木に当てろよ。検証する気あるのか?≫
≪サバイバー:対岸にゴブリンが入っていったから、あまり大きな音を立てると引き寄せるかもしれない。わからないことだらけだから慎重にいきたい≫
≪ニーテスト:わからんのだが、魔法の知識とかがインストールされるのか?≫
≪サバイバー:いや、召喚されて何か知識を得るということはないね。土の弾を打ち出そうとしたけど無理で、水の弾だと撃てた感じだよ。どこまで強力な魔法が使えるかは不明。ちなみに、この属性は俺が賢者登録の時に選んだ属性と同じだよ≫
≪ニーテスト:なるほど、わかった。魔力の問題もあるから検証は控えたほうが良いだろうが、威力を確かめるのも大切だ。周りに気をつけながら検証してみてくれ≫
≪サバイバー:了解≫
≪覇王鈴木:それにしても、あの速度の魔法を50発も撃てるって凄くないか? 威力はいまいちわからなかったけど≫
≪ネムネム:女神様から貰った人形だし強いんだよ(*’▽’)無敵!≫
≪ニーテスト:あとは人形を再使用できるのかが大きな問題だな。ミニャ、そのあたりのことは知らないか?≫
賢者たちの相談をふむふむと知ったような顔で頷きながら見ていたミニャは、自分の名前が出てきたのでぴょんと肩を揺らした。
もう一度ニーテストの質問を読んで、ミニャはふむと頷く。
≪ミニャ:ミニャわかんない!≫
頷いたがわかるとは言っていない。
≪アルカス:なんだそれ。自分の能力なのに知らないことも多いんだな≫
≪ニーテスト:みんなと一緒に能力を検証していくスタイルなんだろ。メニューの『図鑑』が真っ白なのが良い証拠だ≫
≪ミニャ:それ女神様も言ってた! 賢者様と一緒にいろいろ頑張りなさいって≫
≪ネコ太:ミニャちゃん、私も頑張るね!≫
≪ミニャ:うん!≫
賢者たちはミニャのオモチャ箱の趣旨を理解していく。
相手は7歳。到底こんな複雑な能力は使いこなせないだろう。暇人たちの魂に、熱い火が灯った。
≪工作王:俺が気になるのはステータスの影響制限ってやつだな。これはなんだろう≫
≪ネムネム:世界に与える影響が制限されてるのかな(。-`ω-)わからぬ≫
≪アルカス:なにそれ、つまんねぇ! もっと好きにやらせろよ!≫
≪ニーテスト:それは女神の言葉とミニャのオモチャ箱の性質から推測できる。つまり、たくさんの人に力を貸してもらうように設計されているんじゃないか?≫
≪ネムネム:それありえそー(*’▽’)あたしが先に言ったことにして!≫
そんなコメントを、ミニャはふんふんと頷いて読んでいく。
自分も話し合いに参加しているつもりなのである。
けれど、幼女なのでむつかしいお話に早々に飽きちゃったため、サバイバーの周りにせっせと砂をかき集めてドーナッツ状の牢獄にした。ミニャのオモチャ箱において、初の刑罰である。
ネコ太は話し合いには参加せず、そんなミニャの可愛い行動に対してコメントするのだった。
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