第5話 8と7

「はぁ、良かった……成功だ……」

ニッコリ笑うエイトの顔を見て自身の状況などすっかり忘れて私も笑顔をエイトに向けた。

「ナナ、これで僕らは同じだ。」

「うん。」

そうは言っても……先程見た己の顔を思い出して絶望する。

「私……私の顔はさっきと変わってないでしょう?」

恐る恐るエイトに尋ねるも

「うん。でも僕はナナがどんな姿になっても気持ちは変わらないよ。」

私は複雑な気持ちになった。

老け込んだ自分がこれからどうやってここで生きていくというのか。

先立つものは?

何処に住んでどんな生活を送れというのか……

「ねぇ、エイト……知っていると思うけど……この世界はお金というものがないと何も出来ないの。私、それを持っていない……」

「あぁ、それなら少しはあるよ。十分とは言えないけどね。」


私達はまず、今が何年の何月なのかを確認した。

エイトが言うようにかなりの時差があったらしく、私が戻って来たこの世界では三十年の月日が経過していたのだ。

私が老けるのも無理はない。

それからエイトの手持ちのお金を確認した。

紙幣は私の知るそれではなかったが、エイトは特に気にも停めていなかった。

そのお金で今日は近くの安いホテルを見付けて取り敢えず休む事にした。

ホテルで一泊して翌朝目覚めて私はエイトをまじまじと見つめる。

ベッドで眠るエイトは少し疲れているように見えた。

でも、これから新しい二人の生活が始まるのだと思うと心が踊った。

あの美しい女よりも私を選んでくれたエイト……

彼の気持ちを何よりも有り難く大切に思った。


エイトが目覚めてから私達は電車に乗り、海と山が見える田舎の町に居を構えた。

二人で話した結果、ここで自給自足の生活を送る事にした。

家財道具も一通り揃えて慎ましやかな生活がはじまった。

数ヶ月が経ち、私はエイトのある変化に気付いていた。

僅か数ヶ月しか経っていないのにエイトは私と同じ位の年齢の見た目になっていたのだ。

このまま時が流れたらエイトは私よりも凄く早いスピードで死を迎えてしまうのではないだろうか?

恐ろしくなってエイトに相談すると

「あぁ、どうやらこれが副作用のようだね。でも大したことないよ。副作用はある一定期間を過ぎると消えるし、老けたのは僕がここの世界に馴染んだ証拠だよ。」

ニッコリ笑うエイトはいつものエイトだ。

それを聞いて安心した私は微笑み返す。

「じゃあ、今日も畑の手入れに生きましょう。そろそろトマトが収穫の時期だから……」

「うん。」

二人で手を繋ぎ畑へと向かう。

私達は幸せだ。




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