第14話『ちゃんと自覚しろ、愚か者めっ!!』





 第十四話『ちゃんと自覚しろ、愚か者めっ!!』





 う~ん今朝も良い天気だ。


 ピーピー鳴きながら頭上を飛び回るやかましい鳥を撃ち殺す。


 いつもの様にペロちゃんが鳥を拾いに行ってくれた。ありがとう。


 森に入った冒険者達のお蔭で、朝の見回りが最近のお気に入りとなってしまった、健康すぎて困るぜっ!!


 そんな私は今日も元気に巨木の天辺に立ち南西をながめる……


 結構な大きさの小屋を建てる冒険者達を監視すること十日、しっかり堀までこしらえた立派な前線基地が完成したようだ。


 昼夜問わず人数にモノを言わせた突貫工事の賜物だが、一つのパーティーが建築工事を任されたと言うより、ギルド等の組織が主導して人を送り込んだフシが見受けられる。


 現場監督みたいな奴以外は二日間だけ作業すると、三日目の朝には後続と交代して帰還していた。


 交代する際も軽い挨拶程度で済ませ、特にいたわりの言葉や後続への激励も無い、淡々としたもの。


 同じグループに所属する仲間には見えない、大きなパーティーやクランと言った組織仲間ではなさそうだ。


 アイツらを纏めるモノ、ギルドや国、領主、どれか分からんが主導はそいつらだろう。


 まぁ、世間知らずなジャングル育ち男の推測だけどねっ!!


 奴らは前線基地を造っただけでまだこれと言った動きはない、生活の為の採取か狩猟か、それとも魔石や素材を得る為の魔物狩りか……


 前者なら縄張りに侵入せん限りは放って置く。


 だが後者なら殺す。


 魔物狩りなら遅かれ早かれ悪魔蜂も狩りの対象になるからな、蜂だけ見逃す優しい世界なら問題無いがね。


 進化した悪魔蜂は普通の魔物蜂より三~五倍はデカい、素材として考えるなら垂涎すいぜんものだろう。


 そして上半身は美しい人型、知能も高い、テイマーや特殊な趣味を持つ紳士なんかに人気が出そうだ。


 う~ん、念のため悪魔蜂は巣から出さん方が良いな。

 冒険者共の対処はナウォヤの眷属と悪魔姉弟でやるか。


 まずは監視だ、敵の総数も解らんし背後に居るかもしれん存在も見えてない。


 一気に前線基地ごと冒険者を消滅させるのは簡単なんだけどなぁ、それが切っ掛けで殺気立ったアホが後からワラワラ湧いて来られちゃかなわん。



 さてと、朝の見回りはおしまいっ!!

 うるせぇ鳥を撃ち殺しながら帰ろう、昼は焼き鳥祭りだっ!!


 帰る前に、お天道様に手を合わせて黙祷……

 今日も一日平和でありますように~。


 さぁ帰りますぞペロちゃんっ!!


 え、少し寄り道しないかって?

 ……好きだねぇ君も、この淫売めがっ!!


 まぁ悪くない話だ、悪くない……

 しかし君の中には次姉様が……え、今は居ない?


 まったく、まったく君と言う子は……



 三十分だけだお?




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 ペロちゃんは中々腕を上げたな、いや舌を上げたな。

 この私を十四秒ジャストで昇天させるとは、見事だ……っ!!


 彼女は専属侍女から専属痴女に昇格させねばならんな……

 お姉様、手続きを頼む。え、駄目? 厳しすぎるぜ……


 女王ママンに憑依したお姉様が俺を抱えて焼き鳥を食べさせてくれる。美味しいです。


 ゴクンと肉を呑み込むとすかさず爆乳を押し当てられます。心を無にして乳を吸います。肉、乳、肉、乳、このサイクルです。


 栄養価が高すぎてたくましく育ちます。

 ペロちゃんに抜かれた白いヤツも補充完了です。


 当たり前のように全裸なので補充後のイラちが目立ちます。


 そんなイライラ棒をお姉様女王が撫でてくれます。


 ウッ、イライラが解放されました。

 侍女達が旧イライラ棒に群がります、こそばゆいです……


 俺の右隣で食事中のナウォヤがガン見しています、ゴクリと喉を鳴らしています……ち、血が欲しいのでしょうか、血だと言ってよブラザーっ!!


 そんなナウォヤが不意に眉間を寄せ虚空を見つめました。


 あぁ~、非常に嫌な予感がしますなぁ……



「お兄ちゃん、吸血ネズミが殺された」

「……はぁ~、で、ったのは冒険者か?」


「冒険者……かなぁ、ナヨっとした女だよ」

「そいつに何か特徴は? 装備だとか服の意匠だとか」


「えぇ~っと、長い金髪、青い服、杖を持ってる……あ、また吸血ネズミを殺した、何か白い光に包まれて死んだ」


「白い光、色付きか……姉様、白い光は神聖属性か?」


『正解、お利口ねおチビちゃんは』


「おチビちゃんではない、義政だ」



 まったく、いつまでも赤ちゃん対応で困るぜ。


 しかし、そうか……

 神聖魔法使い、僧侶的なヤツが居るのか……


 日中の吸血眷属は弱いが、一発で消滅となると……

 悪魔蜂も無傷とはいかんかもしれん……

 対不死族特効を持ったエクソシストも居そうだな?


 少し考えを改める必要が有るねぇ。


 ちぃっ、メンドクセェ……



「あ、お兄ちゃん、金髪女と同じ服を着た奴らが沢山来た、馬に乗ってる、金ぴかの鎧も着てるよ、暑くないのかな?」


「お姉様、そいつらに心当たりは?」

『う~ん、青服なら……教会の騎士じゃないかな?』


「教会……宗教集団が何で森に?」

『さぁ? お告げが有ったとか?』


「ははっ、お告げ? 何の?」



『う~んと……ジャガノーイの森に怪物がみ付いた、とか?』



 俺は隣に居るナウォヤを見た。

 首を傾げるナウォヤ。



「まったく、自覚が無いのは困ったもんだなっ!!」


『そうねぇ……』









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ジャガノーイの怪物 つんくん @akatsu

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