第13話『面倒を起こすなよ……』
第十三話『面倒を起こすなよ……』
早朝の森、地面に掘られた悪魔蜂の巣から出て深呼吸。
緑の香りが鼻をくすぐる。
朝の日差しが眩しい、空気はやや冷えている。
大木の枝に泊まった大きな鳥が軽快に鳴いた、うるさいので魔力弾を飛ばして撃ち殺す。
侍女蜂のペロちゃんがそれを拾いに行く、あとで一緒に食べようね。
この森に移り住んで十一回目の春、たぶん……
今年で俺も十二歳だ、たぶん。
感慨に
今日は浮遊せずに珍しく歩いている、弟のナウォヤだ。
俺にお早うと声を掛けると、ナウォヤは御付きの侍女に大きな
どうやら朝飯を運んで来たようだが……ナウォヤが俺に向けるガキ大将を見守る幼馴染的な視線が気になる、まさに後方彼女ヅラ、お前は弟だしっかりしろ。
まったく、
この大きな森は二年前に俺達が完全掌握した、ナウォヤの不死隊が居れば掌握にそれほど時間は掛からなかった。
ナウォヤと戦ったヤツは死んでこちらの駒になる、敵の数は減り味方の数は増える、しかも不死だ、負けようがない。
勲功第一はナウォヤ、他はドングリの背比べ。ナウォヤの遠距離吸血攻撃と眷属化が強力過ぎて他が
戦争中、姉の
ナウォヤが味方に居る、それだけで本当に楽な戦いになった。
森のボス的なドラゴンも吸血で瞬殺、よく血抜きされた上質な肉に早変わり、その後は俺達の腹に納まるだけ。
マジで楽だった、楽すぎて逆に進攻が遅れた。急がなくてもいいんじゃね?となってしまうのも仕方が無い。
兵隊の強化やインフラ整備を完璧に済ませて次の戦いへ……その方が効率良く戦力強化出来たしな。
そんな感じで
だからみんなコイツに甘いのである。
冒険者侵入の報告を受けて巣から外に出たのに、コイツだけ行楽気分でニコニコ、しかし誰も注意しないのである。
ペロちゃんに憑依していた次姉様が憑依を解いてナウォヤの隣に座る、ピクニックスタイルへのツッコミも無いのである。
そもそも次姉様は何故毎日ペロちゃんに憑依しているのか疑問なのである、俺達のお世話的には
毎日憑依する
「お兄ちゃん、早く食べよ?」
「……鳥の塩焼きを食べるのである」
「何その喋り方、変なの~、うふふ」
『義政、ここに座りなさいな、ズボンを脱いで』
「次姉様、そこは『靴を脱いで』の間違いである」
『ズボンを脱ぐ、で合ってるわ。貴方が間違えてるの、困った子ね。ペロちゃん、手伝ってあげて』
無言で頷くペロちゃんが僕のズボンを脱がしに掛かります。申し訳なさそうに頭を下げるペロちゃん、しかし僕は知っている、君は性的興奮を覚えると乳首がピーンてなるんだ……今のようにねっ!!
僕はズボンを脱がされました。パンツなんて有りません、そうです、フルチンです。
ほぼ毎日フルチンにさせられる僕は威風堂々と
枯草で出来た茣蓙がチクチクするのです、ケツ穴に刺さるのです。
あっ、これがケツ穴確定と言うやつかな?
俺の勘が『正解だ』と告げている……また頭が良くなってしまう、参ったな。
よし、このジューシーな鳥の塩焼きを食うぜっ!!
「むしゃむしゃ、美味いっ!! それで、吸血蜂からの第一報は冒険者侵入だったが、今はどうなってる、もう殺したのか? むしゃむしゃ、森の浅い場所で薬草採取程度なら見逃しても良いが」
「ちょっと待ってねっ……」
ナウォヤは視覚と聴覚を吸血で不死化させた眷属と共有出来るので、遠く離れた敵情なんかを割と詳しくリアルタイムで知る事が出来る。優秀っ!!
「浅い場所ではあるけど、何か建ててるみたい」
「……?? 建ててる? 小屋とか?」
「木の家だね、大きさ的には……侍女蜂が十人は入れるくらいかな」
「侍女蜂が十人……高さ2m50、長さ4m、幅2m、それが十……そいつらは何か
「楽しそうに喋ってるけど……あいつら日本語じゃないから会話の内容は余り解んないや」
むむむ、ここで俺の日本語教育が仇となったか。
姉兄達の念話も日本語で聞こえるしな、ナウォヤは現地の言葉を覚える気が無いので俺も姉兄達も無理に教えようとはしなかった。
ナウォヤの現地語レベルはちょっとした日常会話が理解出来る程度だ。
まぁ、俺達もナウォヤも特に困る事は無いけどな。
今回もそれほど問題にはならん。
ナウォヤの眷属は蜂だけじゃぁない、地中から空から池の中から、冒険者を常時監視出来る状況だ、何か俺達に不都合な動きがあれば飛んで行って殺せる。
森の浅い所に大きな小屋、恐らく採取や狩猟の前線基地ってとこだろうが、どうするかねぇ、殺しても構わんが……
冒険者共の目的を確認してから
殺したせいで調査隊出されちゃ面倒だしな……
まぁ、俺達に少しでも被害が出れば話は別だが。
どうなるかな……
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