第4話 『 お兄ちゃん、異世界転移に気づく 』

第4話『お兄ちゃん、異世界転移に気づく』




緑の化け物との戦闘から数時間、僕と心は森を抜けた。

運が良い事に抜けた先には街道があった。このまま道なりに進めばいつか街が村に着くことが出来るだろう。

そうして僕達は街を目指し街道を歩いて行った。



2時間ほど歩くと高い外壁に覆われた都市のようなものが見えてきた。だが同時に疑問が湧いてくる。


「(今の日本に、このような高い外壁などで覆われた街はあるのだろうか)」


しばらくして外壁の近くまで歩いてくると、馬車に乗った人や鎧を着た兵士のような人たちがいた。


「(ここにいる人たちおそらく日本人じゃないよな)」


馬車に乗った人も兵士さんも顔立ちはほりが深く、髪色は金髪や青色などで染めているようには見えない。

僕は心を連れて門の前に並ぶ列に加わる。門の前では、兵士らしき人に何かを見せ入っていく人や、見せてから何かを渡して入っていく人、何かだけ渡して入っていく人がいた。

その様子を見ていると、心が黙ったまま僕の服の袖を掴んでくる。

心は両親をなくし、父の両親や施設での経験で人見知りになってしまった。

今の心は人の多い場所が苦手なのだ。

僕は心の頭を優しく撫で、声を掛ける。


「大丈夫、何かあってもお兄ちゃんが何とかする」


もしも、兵士たちに襲われても心だけは俺が必ず守る。そう固く決心した後、俺達の番が回ってくる。


「カードはあるか。ないなら銅貨5枚だ。」


兵士さんの言葉に疑問を抱く。


「(カードってのはなんだ、円やドルではなく銅貨とはなんだ)」


正直、兵士さんの言っていることが分からない。仕方ないので聞いてみることにする。


「カードとはなんですか。あと銅貨とは」


兵士さんは顔を訝しげるが答えてくれた。


「カードってのは、冒険者カードか商人カードだ。これがあると中に入るのに金はかからない。」


冒険者カード。商人カード。全く分からない。

そうして悩んでる間にも兵士さんは言葉を続ける。


「銅貨ってのはこれだ見た事あるだろ。」


そう言うと兵士さんはポケットからコインの様なものを出した。そのコインには見覚えがあった。あの鬼の化け物の住処にあった物に似ている。

そう思い出し、心のリュックから袋を出し中から金色のメダルを出し兵士さんに渡す。

兵士さんは驚いた様子を見せ、此方へと喋りかけてきた。


「おめぇ、それは大金貨じゃねえか。世間知らずの田舎者かと思ったが予想以上だ」


少し呆れた様子でため息を吐いた兵士さんは、ちょっと待ってろといい、外壁の前にいる他の兵士を呼んで此方に帰ってきた。


「しばらく頼むは、お前らはこっちに来い」


兵士さんは、別の兵士に持ち場を代わってもらって僕達の相手をしてくれるようだった。

少し離れた場所に来た僕達は、兵士さんと話を再開する。


「お前、通貨は分かるか」


兵士さんは少し呆れながら聞いてきた。


「わからないです」


「じゃあ、ステータスボードやこの都市の名前は」


「わからないです」


それを聞いた兵士さんは大きなため息をついて、聞いてきた。


「お前どこから来た」


「日本です」


兵士さんは疑問を浮かべて尋ねてくる。


「聞かねえ、名だな」


その言葉に今度は僕が疑問に思い尋ねる。


「ここは日本ではないのですか」


「ちげえぞ。ここはアルファリア王国のダンジョン都市カナムだぞ」


アルファリア王国。ダンジョン都市カナム。聞き覚えのない国名に聞き覚えのない都市。と考えている時ふと思い出す。


「あーーーー」


兵士は少しビッグどして声をかけてくる


「何だよいきなり、叫び出して」


兵士さんの言葉に目もくれず考える。

ダンジョン。確かライトノベルである異世界系の話に出てくる魔物たちが蔓延る迷宮の名前だ。そういえば、俺が倒した緑の化け物あれってゴブリンじゃないか。

僕は小説は読むが、ライトノベルは読まない、昔友達に勧められて少し読んだぐらいだ。

もしかして、僕達異世界にきてしまったってことだろうか。

そう、悩んでいると兵士さんが声をかけてきた。


「とりあえず落ち着け。どうした」


そう言われ、少し考えてから兵士さんに事情を説明する事にした。


「僕達違う世界から来たんです」


当然、兵士さんは「何、言ってんだこいつ」と言う顔をする。

僕もいきなり言ってしまったが、もしここが異世界だとするならば、僕達はこの世界の知識が全くない。知識は力だ。何もわからないままではいずれ騙されて大変なことになるだろう。それなら少ししか話してないが、何も知らない僕達に色々教えてくれるこの人なら信用出来る気がした。

兵士さんが悪い人なら多分金貨を取られていたか、悪い人じゃなくても、僕らみたいな怪しい人は捕まっていただろう。

そして僕は、兵士さんに話してみることにした。

光に包まれたと思ったら森の中にいて、見たことのない化け物に襲われ、何とか森を抜けて街道を進んで来たらここに来た。と、ここまでことを事細かく説明した。


「にわかには信じがたいが!嘘をついてるようには見えないな」


「あ、ありがとうございます」


この荒唐無稽な話を信じてくれた兵士さんに感謝し、頭を下げる。それを真似しておれの背中に隠れていた心が頭を下げる。めちゃくちゃ可愛い


「あ、まぁいいよ。頭上げろ」


兵士さんは少し照れた様子で言う。


「まぁ何だ。お前達がこの国のことを全く知らないことはわかった。仕方ねえから簡単なことは俺が教えてやる」


そう言うと、この国のことやこの都市のこと、周辺のことなどや、冒険者のことや僕の戦った魔物こと、教会のことお金のこと分かりやすく説明してくれた。


「まぁ、こんな感じか。割とざっくりだし俺もそんな詳しくないこともある、俺が分かるのはこの都市の事と冒険者のことぐらいだな」


「兵士さん、本当にありがとうございます。」


僕は心身と頭を下げた。

兵士さんはバツが悪そうに言った。


「兵士さんはやめろ、俺の名前はバルトだ。そう呼べ。何だ困ったことがあれば俺に聞きに来い。俺は大体ここか、門入ってすぐにある兵士の駐在所にいる。」


そう言って、門のほうを指す。

そしてバルトさんは思い出したように言う。


「そうだ、ステータスボード持ってないんだよな」


「はい」


「なら、教会に言ってステータスボード作ってもらえ、あれは色々便利だ。」


ステータス。ゲームとかで見る能力が分かる物か。とりあえず、教会に行くべきだな。

そう考えているとバルトさんはこれからどうするのかを聞いてくる。


「とりあえず、仕事を探そうかと考えています」


「そうか、話を聞く限りお前には冒険者の才能がある。お前が戦ったていう鬼の化け物はCランクの魔物だ。それを倒せたなら冒険者になるのもいいかもしれねえ。」


冒険者。1度考えてみよう。この世界に何の知識もない僕はしっかりとした仕事にはつけないだろう。それなら危険を伴うが誰でもなれて、高ランクになればかなりのお金を貰える冒険者もいいのかもしれない。幸いここにはダンジョンなる魔物が多くいるらしく、仕事には困らないらしい。


「バルトさん、本当にありがとうございます。」


バルトさんに頭を下げる。そしてバルトさんに通行料を払いカナムの都市へと入っていく。



▽▽▽▽▽

あらすじ


拝啓 第4話を読んで頂いた読者様


今回の第4話は『お兄ちゃん、異世界転移に気づく』となっております。他の話もその様に『お兄ちゃん、〇〇』に変わっておりますが、内容は変わっておりません。


追伸


透がやっと異世界転移にきずきました。長かった気がします。


青猫侍

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