第5話 前と後の光景

 ある時ぼんやりと目が覚めた。

「おう!ようやく起きたか!」

聞き覚えのある声の方を向くと、化け傘だった。コイツは逃げ延びたんだな。そんなに仲良くもないが、まあ良かった。

「お前が瓦礫の中から運んでくれたのか?」

「おう!なかなか見つからねえから消されちまったかと思ったよ!見つけたら見つけたで瓦礫の中から運び出すのも大変だったしな!感謝しろ!」

「ああ…ありがとう。助かった。」

「へっへへ///」

(なんか嬉しそうだな。キモい。)

 何と無く寝心地が良いなと思いながら、ここは何処だと辺りを見回すと…

…ぬいぐるみゾンビ達の上だった。

 ゾンビの上で寝るというのは抵抗があるが、悔しくも寝心地が良い。もちろん道の何倍も。

「おい!鬼のお前!」

俺の下にいるぬいぐるみゾンビだ。

(うわっ絡まれる。めんどくさっ。)とか思っていたら、

「お前の下は死に心地が良いな!これからはオイラ達の上で死んで良いぞ!」

よくわからん理屈で褒められた。

「ぐぬぬ…」

化け傘は相変わらず、自分以外が寝床を確保したことがよっぽど悔しいらしい。何がコイツをこんなに拗らせたのだろう。

 なんて何気ない会話をしていてあることに気付いた。

 辺りが崩壊したままなのだ。あの男があれだけ暴れたのだからそれは当然だ。問題はそこじゃない。今思い返せば、暴れる前から崩壊していた気がする。前も後もそんなに変わっていない気がするのだ。

 ただ違いがあるとすれば、あんなに騒がしかった化け物達の気配がない。消滅させられたのか?

「なあ化け傘…あの男はなんだ?」

「ああ…閻魔大王様のことか?突如現れて暴れていくんだ…何度も。」

(やっぱり。辺りにあまり変化を感じないのはアイツが暴れるのは初めてじゃないんだな。)

だとしたらまた来るのだろう。

 許せない。そう思った。

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死んでも生きられたら @mmn00

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