第4話 オレンジジュース

 明の風邪も良くなり、明は自転車で美鈴と遊びにいきたかった。それは美鈴も同じ気持ちだった。明は美鈴が子犬を飼っていて、動物好きな事を知っていたのだ。

そして、以前から、動物園に行きたいとも言っていた。

「美鈴さん動物園にいってみない」

「少し遠くないですか?」

「自転車で二人乗りで行こう」

「明さん大変でしょ」

 自転車で行っても遠い距離だった。しかし、二人にとっては決しては遠くはない時間であった。

「大丈夫だよ。ふたりで行くのは初めてだね」

「そうですね、楽しみです」

「そうだね」

 二人の声は風船のように弾んでいた。そしてようやく動物園へ着いたのだ。

動物園はお客さんも多く賑わっていた。

「着いたよ。1時間もかかったよ」

しかし、二人にとっては幸せな時間であった。美鈴は自分の体重を気にしていた。

どちらかというと、スマートな方であったが思い悩んでいた。

「重かったでしょ?」

「ああ」

 無神経な明であった。

「途中で倒れるかと思った。」

「もう、失礼ね」

 可愛らしく怒る美鈴におどける明。

「冗談だよ」

 当時は珍しい動物が多かった。

「象をみたい」

「ああ、人気者だもんな」

「わあ、大きい。餌を食べてるね、本当大きい」

「美鈴さんより大きいよ」

 おどける明にふくれっ面の美鈴。

「もうどこが」

「あちこち」

「いやらしい」

 これ以上ないほど楽しかった二人である。幸せだった。

「次は何を見るかな?」

「キツネを見たい」

「キツネはね、騙すんだよ」

「知っています」

「僕も美鈴さんに騙されたのかな」

「私がだまされたのです」

「ハハハハ」

 言葉巧みな二人であった。

「楽しいね」

「はい」

 そう、この時は楽しかった。幸せだったのだ。

「蛇を観てみようか」

「いや、怖いです」

「大きいな」

「ええ、こんなに大きいの。美鈴さんより大きいな」

「もうまた、変な事考えてる」

「ハハハハ」

「フフフ」

 美鈴も負けじと言い返す。

「猿はどうですか」

「いいね」

「明さんより賢いですよ」

「こらこら、僕も頭はいいよ」

「本当かしら」

「ハハハハ」

「フフフ」

 太陽が二人に優しく微笑んだ。

「そろそろお昼にしようか」

「お弁当をもってきています」

「どんな、お弁当かな?」

「上手なんですよ」

「本当かな、梅干しだけじゃない?」

「失礼ね。ちゃんといろいろ入っています」

「おお、おいしい」

「そうでしょう、ほらお茶もオレンジジュースがよかったですか」


お茶があうよ

でも、今度はオレンジジュースかな


はい


「ごちそうさま。おいしかった」

「美鈴さんがこんなに料理が美味しいなんて、知らなかったな」

「そうでしょう」

「へへヘ」

「うん、びっくりしたよ。僕のお嫁さんになってほしいな」

「駄目です」

「な~んだ」

「じゃあ食べ終わったところで何をみる?」

「キリンがみたい」

「そうだな。よし行こう」

「本当に首が長いなあ」

「わあ」

 ここぞとばかり、明は美鈴に告白した。

「美鈴さんがお嫁さんになってくれるのを、首を長くしてまってるよ」

「もう、恥ずかしい事を言わないでください、冗談ばっかり」

「本当に婚約者になってもらえないかな?」

「恥ずかしいから少し考えさせえてください」

「どうした、急に黙って」

「ううん」

 美鈴は戸惑いを隠せなかった。

「さっきの話は本当だよ」

「恥ずかしいです……」

「じゃあ、返事を待っているよ」

「はい」


じゃあそろそろ自転車で帰ろうか


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時の記憶~約束 虹のゆきに咲く @kakukamisamaniinori

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