第13話
「そもそも私のアオイを取ったのは生徒会長でしょう!? 勇者パーティーに入れるつもりだったのに変な制約かけてさあ!!」
「はん! お主がちんたらしとるのが悪いんじゃないのか? それに弟子入りを頼んできたのはそこの弟子だしな〜〜」
「そうなの!?」
ギロリと鋭い視線を向けられる。それと同時にアカネの腕に力が籠った。気のせいか、頬も少し赤いように見える。
「ま、まあそうだけど。違うんだ。俺は一人の力じゃ勇者パーティーに相応しい人になれるとは思えなかった。だから、師匠に弟子入りを申し込んだんだ」
「ふーん。べ、別に勇者パーティーに相応しいとかどうか気にしないのに私……」
「たとえアカネが気にしなくとも、俺が気にするんだ。前々から言ってる通り、アカネ達の足を引っ張るわけにはいかないからな」
「そうじゃそうじゃ。妾はそんな弟子を評価して、育ててやってるだけじゃ。生徒会に入れようとしているのはその過程。理解できたかのぅ?」
そこで煽らないでくださいよ師匠。
得意げになって煽るから、ほらアカネが顔を真っ赤にして頬を大きく膨らませている。もうこれは完全に怒ってるじゃないですか。
「生徒会に入れる必要なんてありませんよね!? それも生徒会長に束縛される理由も! 生徒会長の方こそ、アオイに依存しているんじゃないんですか〜〜?」
「なっ……何を言うかお主! 妾はあくまでこやつのためを思ってやっているだけで依存とかそう言うのは……」
段々と心当たりがあるのか師匠の声が小さくなっていく。アカネは表情を一変させてニヤリと笑った。
「おやおや? どうやら心当たりがあるようですね生徒会長? 弱気になっているのがいい証拠じゃないですかっ!」
「な……妾、全然弱気になっておらんし? 何を言うかこの馬鹿者めっ!」
「ふぅんどうでしょうかね? と、に、か、くっ! アオイは渡しませんよ! 今日は私と一緒にお昼ご飯を食べるんですから!!」
アカネはここぞと言わんばかりに俺を引っ張る腕に力を込めた。それを見てなのか、対抗するように師匠も腕に力を込める。
や、やばい。勇者と剣姫の怪力に引っ張られて身体が真っ二つに割れそうな勢いだ。
「今日は妾と一緒に生徒会室でお昼を食べるんじゃ! お主の方こそ引っ込んどれ! そもそも毎日のように食ってるじゃろうが!!」
「生徒会長こそ、毎日のように鍛錬しているんじゃないですかっ! 私は羨ましかったんですよ!! あんなにアオイとイチャイチャできて……もう我慢なりません!!」
「独占欲が強い女とは嫌われるぞ? 余裕がないのが目に見えてわかるわ!」
「そっちは貴方の方でしょ!?」
言い争いはさらにヒートアップしていく。ついでに俺は天国と地獄を両方味わっていた。
二人が腕を引っ張るたびに当たる巨大なおっぱい!
これこそがこの世の天国……!
と思いたいけど痛い痛い痛い!!! 二人ともバカみたいに力強いのなんなの!?
どっから出てるんだよその力っ!
と、とにかくこの場を収めないと俺が真っ二つになってしまう……ここは。
「まあまあ二人とも落ち着いて……ここは穏便に三人で……」
「「アオイ(弟子)は黙っていて(おれ)!!」」
二人同時に反論されて俺はしゅんと丸くなる。あの二人の顔……今まで見たことないくらい怖かった。
「アオイは勇者パーティーに入るの! 生徒会長は邪魔しないでください!!」
「まだ弟子を外に出すわけにはいかん! 妾が丁重にこやつを育てていくのじゃ!」
「ど、どーしてこんなめに……」
魔法学園の高嶺の花である勇者と剣姫は今日も俺を巡って争いを続ける。
そんな賑やかな日常はどうやらまだまだ続きそうだ。
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拙い作品でしたが最後までお付き合いいただきありがとうございました!
魔法学園の勇者と剣姫が、平凡な剣士の俺を取り合っている件 路紬 @bakazuma
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