第4話 街中へ

「それじゃあ二つ目の質問……ずっと気になってたんだけど、その派手な格好は何なの!?」


 下手に指摘したらセクハラになるかもしれないと思ってなるべく触れないでいたが、さすがに限界だった。

 というのも、シャルの服装は非常に露出度が高く目のやり場に困るくらいセクシーだったからだ。

 具体的には、肩の部分が完全に露出した純白のドレスのような服装で、スカート丈は短く胸も強調されている。

 まるでキャバ嬢の衣装のようだ。とても普段着には見えない。

 そんなセクシーな衣装を、中学生にしか見えないシャルが身に纏っているから、どうしても指摘せずにはいられなかった。

 まさかとは思うが、この世界ではこんなキャバ嬢みたいな服装が普段着として浸透しているのだろうか……。


そんな俺の質問に、シャルが少し照れながら答える。


「ああ、やっぱり驚きますよね。無理もありません……あまり公共の場で着るような服ではないので……」


 どうやら普段着ではないようだ。服装の感覚は、俺のいた世界とそこまで変わらないのかもしれない。


「これは職場での正装と言いますか……制服みたいなものなんです」

「職場の制服?」


 制服だというなら、納得できないこともない。

 だが、同時にシャルの仕事について少し心配になってくる。

 一体、どんな職場で働いているというのだろう。


「もしよかったら、一緒に職場に来ますか?」

「……え?」


 俺がシャルの仕事について興味を持ったことを察したのか、職場に来ないかと提案してくる。

 

「そろそろ休憩時間も終わるので、職場に戻らないといけません。タツマさんも一緒にどうですか? ついでに街も案内しますよ」

「それは助かるけど、迷惑じゃないか?」


 突然この世界に飛ばされて右も左もわからない状態だったので、街を案内してくれるというのはありがたい申し出だ。

 しかし、よそ者の俺を街に招き入れることでシャルに迷惑や負担をかけるようなことになってしまったら申し訳ない。……まぁ、王国の中心部ということはそれなりに栄えているだろうし、よそ者が入ったくらいで気にする人間などほとんどいないだろうが。


「全然迷惑なんかじゃありませんよ。街を案内するくらい大した負担ではありませんし、それにタツマさんが私の店を気に入って常連になってくれれば私にもメリットがありますし……」

「……あれ? もしかしてただの営業だったりするのか?」

「そうですね。正直に言うと、営業も兼ねてます」

「意外と商魂たくましいな……」


 まさか営業されてるとは思わなかったが、そういうことならお言葉に甘えてもいいかもしれない。遠慮せずシャルに街を案内してもらうことにしよう。

 そう考えて、シャルに案内をお願いすることにした。


「まぁ、いつまでもここに一人でいるわけにはいかないし、俺も一緒に行くよ」

「わかりました。では、ついてきて下さい」


 シャルがくるりと背中を向け、歩き出す。

 そんな彼女についていこうと一歩踏み出すが、その瞬間、足に何かがぶつかる感覚があった。どうやら何かを蹴ってしまったようだ。

 

――うおっ! ……何だ? 俺は何を蹴ったんだ?


 気になって足下を確認する。

 そこには、元の世界で買った缶コーヒーが転がっていた。


――そういえばこんなものも買ったな……すっかり忘れてた


 謎の光源に吸い込まれた時に手に持っていたため、一緒にこの世界に飛ばされたのだろう。

 まだ未開封なので、中身はこぼれていない。

 俺は無言でしゃがみ込むと、芝生の上に転がった缶コーヒーを拾い上げた。

 買った時は冷えていたのに、今はだいぶぬるくなってしまっている。それだけ時間が経ってしまったということだろう。


――その辺に放置するわけにもいかないし、これも持っていくか……


 俺は缶コーヒーを右手で握りしめると、再び立ち上がって、先を歩くシャルを追いかけた。


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会社帰りにキャバクラ感覚で異世界寄ってもいいですか? 梅竹松 @78152387

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