第4話:勇者の誕生
国王に教えられた通りにステータスをイメージする。と、薄い板のようなものが私の前に現れる。国王の説明曰く、基本的にこれは本人にしか見えないようだ。
「どうだった?どうやら、俺が一応勇者みたいだ。そっちのステータスは?」
「あー、なんか……」
一通り確認し終わったであろう大和が私に聞いてくるが、私は口籠る。何故なら、ステータスが大幅に文字化けしていて、職業しか読み取れないからだ。だが、私が勇者ではないことが分かっただけでもありがたいだろう。と、早速国王がステータスのことについて数値を聞いてくる。
ちなみに大和のステータスは、
……………………………………………………………………………………………
Lv,1 神埼大和 性別:男 職業:勇者
HP 95/95 MP73/73
物理攻撃:216
物理防御:182
魔法防御:21
魔法攻撃:58
保有スキル………
なし
外欄/特性…………
なし
……………………………………………………………………………………………
とまぁ、こんな感じらしい──この国のステータスは、思っていたより項目が大雑把な表示だ──。国王達は、驚いていた。曰く、この世界では初期ステータスで値が三桁をいく者は滅多になく、あったとしても精々一つの欄のみ。そしてそれ以外のステータスは一桁なんてこともザラにあるらしい。この能力の高さ、流石は勇者といったところか。私もステータスを聞かれたが、「職業と名前、性別、それからレベル以外は文字化けして読めない」と前置きした後、「影法師」「魔法使い」という二つの職業が表記されていたことを話した。
「職業が二つ?影法師なんて聞いたこと無い。」
「嘘なんじゃないのか?」
「聞いたことないぞ、歴代勇者の付き人も全て職業は一つだったはずだ」
などと周りが騒つく。と、国王が周りを手で制した。国王の名は伊達じゃない。
「落ち着くのだ。…付き人様、それは確かですかな?念のため、ステータスを見る魔法を使用したいのですが…」
「えぇ、勿論です。」
そう言うと、横からローブを着たおじいちゃんがやってくる。その人に見てもらったが、まぁやはり私と同様、文字化けしたものが見えているようで。
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Lv,1 神埼星奈 性別:女 職業:魔法使い
影法師
HP ????/???? MP????/????
物理攻撃:貂ャ螳壻ク榊庄
物理防御:貂ャ螳壻ク榊庄
魔法防御:貂ャ螳壻ク榊庄
魔法攻撃:貂ャ螳壻ク榊庄
保有スキル………
•逾樊?シ隗」謾セ
外欄/特性…………
•蠖ア豕募クォ
•陌ケ迸ウ
……………………………………………………………………………………………
「……国王様。言葉に
国王は若干の動揺を見せながらも小さく「そうか…」と呟いたあと、私に向かい直すと、「付き人様。今はステータスで見えるものが少ないと思いますが、鍛練を積んでいくと見えると言った事も考えられます。もし、新たに見えるものがありましたら、必ずやご報告を。」という。私は国王に、その際は必ず逐一報告する事を誓った。
* * *
「勇者様と付き人様には、誠に勝手なお願いではありますが、魔王を討伐することでこの世界を救っていただきたいのです。どうか、協力してはくださりませんか?」
静かになった謁見の間で、国王の傍で静かにしていたセレン王女が口を開き、そう言った。若干の緊張が伺える。まぁ勇者に拒否されるのも多々あったのだろうと予測できる。
大和はこれからどうするつもりだろうか?私は、大和の決めた方向に従うつもりだ。迷惑でなければ。だから、今ここでの大和の意思が、私の意思となる。
「私は大和の意思に従うよ。」
「そっか。……分かりました。私が、魔王を倒し、この世界をきっと救ってみせます。」
まぁ、そりゃそうだと思う。大和は弱きを助け、悪を挫くといった、
「おぉ………勇者様方は、我らの願いを聞き入れて下さるのですね!」
「やった、これで世界は安泰だ…!魔王も怖くないぞ!」
この謁見の間に集まっている人々は安心しきっているようだけれども、大和と私はまだこの世界に来たばかり。勿論、日本でそんな殺伐としたことも無かったので、武闘の心得など、神であった時分を覗けば、まぁないと言える。
そもそも、神と人間では勝手がかなり違うのだから、いずれにせよ、魔王討伐のためにはこれから結構な量の鍛錬を積まなければならない。
だと言うのに、既に平和が約束されたかのような、安心した顔をしている彼らを見て、争い事の少ないであろう彼等はすっかり平和ボケしていそうだなと、呆れてしまった。
勇者召喚に巻き込まれた元神様は異世界ライフを堪能したい エム @emu_like
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