第17話 初体験
『アイザー先生』
2年生のボルグに呼ばれた。
こいつのことを知らない生徒や教員はいないだろう。
去年開催された四聖祭で、剣のみで優勝した学園きってのエリートだ。
「どうしました?ボルグ。先生が君に教えられることなんて、もうないと思いますよ」
ボルグは苦笑いをしながら、先日の授業内容について質問してきた。
こいつ頭もいいんだな。
そして、イケメンだ。
周りの女生徒達の視線を感じる。
ランドルク学園は広い。
それもそうだ。
ジェルゲン国内で一番だと聞いた。
ここにいる生徒達はエリートだけだ。
俺は魔法化学科で教鞭をとっている。
そこそこ評判がいいようだ。
まぁ前の世界の化学知識を混ぜた内容だから、この世界では新鮮なのだろう。
次の授業のため俺は教室に移動していたが、教室の入り口に男子生徒達が群がっている。
何やら騒がしい。
『アキ・・ん”ん”・・アイザー先生、今から授業でしょうか』
なんだこいつか。
まぁ顔もスタイルもいいから男子生徒が騒ぐのも無理はない。
「マリオール先生、こんなところにいていいんですか?次の授業が始まりますよ」
マリオールは何かを伝えたかったのか、俺が横を素通りすると少し寂しそうにしていた。
だが、すぐに顔を赤らめ、興奮しているように見えた。
おい、マリオールよ、ここで性癖だすなよ・・・。
『マリオール先生、先ほどの授業での型なんですが・・・』
ほらほら、マリオール先生。
お前の剣の腕は本物なんだから、ちゃんと生徒達に教えてやれ。
さて、俺も授業を始めるか。
ん、ちょっと君は近づきすぎじゃないか。
「セシリア君、もう少し離れなさい」
喜んで授業を受けてくれるのはいいが、セシリアはいつも距離が近い。
だが制服姿のセシリアはめちゃくちゃ可愛い。
魔力を供給できてないので、12歳くらいにしか見えないが。
『おい、早く始めようぜ』
うるさいな。
お前ら生徒側なんだから気楽だろ。
ラキは性格通り制服を着崩している。
フィリアはそのまんま優等生ぽく見える。
『主先生、私、先生の横がいいです』
うん、セシリアたん。それもいいけどね。
今は授業中だから我慢しようね。
今日の授業内容は火炎魔法を使った車の設計についてだ。
この世界は馬で移動するのが主流だ。
車が実現すれば、この世界の化学は大きく進歩するはずだ。
車の設計内容とは、火力魔法を使って圧縮された空気の熱を使ってタービンを回という、俺の理論を説明した。
そうエンジンだ。
魔法を保管できるアイテムがあれば、車の実現も遠くないだろう。
ふむ、今日の授業も好評だったぞ。
・・・・・・。
いや、違うだろ!
当初の目的よ!
この学園にきた目的を実行しないとダメだろ。
だけど、誰かに何かを教えるって楽しいものだな。
前の世界では学校に行ってなかったから、教師という立場でも学校という場を経験できて満足している。
『アイザー先生よ、何を女子生徒ばかりみておるのじゃ』
ため息が出た。
「どうもティム先生、お疲れさまです。魔法の授業は終わったのですか?」
『1か月後の四聖祭の準備は整っておるのか?』
ティムが先生の顔から、魔導士のティムの顔になった。
だが、胸は小さいままだ。
俺が何を考えているのか理解したかのように躊躇なく右ストレートをもらった。
ばあちゃん、学校生活って結構楽しいな。
第17話 完
ちょっと本気で生きてみた 夜摘 @Yotsumi
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