第8話

目の前の自分と同じ師団長という肩書をもったかつての同僚は不気味な表情で笑う


「オマエナッタンダッテナア」


(まずいな)


肩書きこそ同じといえど目の前の猿神と俺の力には天と地の差がある。


(ん?こいついま「ナッタ」って言ったか?)


ーーーーーーーー


『シュテンはそろそろ覚醒の儀をすべきかのう?』


ーーーーーーーー


突如直近の嫌な記憶がフラッシュバックする。ナル、ナル…………成るか!!あの出来事の直後急に力が漲ってきたことを思い出す。


(前世の記憶を取り戻すことが覚醒のトリガーなのか??)


思考の渦にはまりかけてた頃、目の前の瓦礫と目が合う。間一髪、無意識によけれていることに自分でも驚く。


目の前の猿神がにたにた笑みを浮かべている。


「マエのオマエならヨケレナカッタゾ。ナッタオマエとヤリアウのがタノシミでシカタナカッタゾ」


まひるさんのことが気がかりになり焦り始める。なんとか交渉を試みる


「なあ、第四師団長さん。頼む少し待ってくれないか、少しだけでいいんだ。まじで本当に」


突如場の空気が変わり、間違いなくその場の温度が2,3℃上昇する。


「オマエ俺のことなめてるのか」


(さっきと口調ちゃいますやん)


思わぬ地雷を踏んでしまったことを後悔する。


「そうか…………おまえも、、オマエも俺のことを馬鹿にしてるのか!!!!!!!!!!!!!」


更に周りの温度が上がる、徐々に視界の端の公園のベンチが溶け出すのが目に入る。


(おいおいおい、冗談じゃねーぞ)


あまりの目の前のどうしようもない絶望感に若干イライラし始める。


(そもそもこっちは呼んでないし、勝手に来て怒って力振るうっていかれてんのか。なんかむかつくな)


「上等だよ糞ざる、三秒で殺してやるからさっさと来いよハゲ」


「けしぇえええええええええええええええええええええええええええええ」


言葉にならない規制を発しながらこっちに向かってくる。


(おいおい、ほんとに勝てんのかよ)


一狩り行こうぜのノリが現実世界になった気分だ、目の前の猿の動きに必死に合わせる。信じられないくらい体が軽い。軽くジャンプすれば空を飛べて、軽く力をこめれば大地が割れる。

とてつもない万能感に体がつつまれる。

交互に左右からの攻撃を必死に受け止めて流す、ほんとにゲームをしてるみたいだ。


「オイオイ、マモルだけじゃかてないゾ」


猿神の速さが更に増す、必死にそれに合わせようとする。そんな攻防が何度も続いた後……




「オイ!!!!ナゼコウゲキシナイ???オマエヤッパリナメテルダロ」


突然右手に赤い如意棒が飛び出す


(あぶな!!)


急に伸びてきた如意棒を避けつつ安堵していると右腕の違和感に気づく


「うわあああああああああああああ!!!!」


前腕がごっそりなくなっている、この体だからかアドレナリンがでてるのか痛みは感じない

動機が止まらない顔が真っ赤になり段々青ざめていく


(やばい、やばい、やばい、やばい、もしかして俺死ぬのか)


ついこのあいだまで自殺までしようとしていたのにどうしても死にたくない。なんとか抵抗したいが前世では小学生の時に少し空手をやったくらいだ。


(やばい来る)


小さいころの記憶から引っ張ってきた正拳突きをかます。うまくバランスが取れず地に倒れ伏してしまう。


何とか相手の攻撃を避けながら逃げる。


(情けねえなあ…………)


自分の情けなさに涙が出てくる。早くまひるさんのところに行きたい。


(今の俺に何ができるんだ、迷惑をかけて嫌な思いさせるだけじゃないか)

どうすればいいんだ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

憂鬱二散ッタ者達へ kamo_f @keyton__

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ