第7話
「雪か…………」
昨日した約束の待ち合わせ場所に着き、時間を確認する。
(今日全部言おう)
俺がドグであること、国を追われていること、前世の記憶があること、そしてその前世での好きな人に似てること
「あっという間の二か月だったな」
あの国から逃げ出し俺を救ってくれた彼女には感謝してもしきれない。聞きたいことも山ほどあっただろうに何も言わず一緒にいてくれた。
「早く着きすぎたか」
頭と肩に冷たい重みを感じる。気づけば約束の時間から一時間が経過していた。
(おかしいな)
いつも同じ時間に帰ってきていた彼女が今日に限って遅刻するとは思えない
(いや今日に限ってだからか、昨日の件が尾を引きずってるのか...嫌な予感がするな)
多くの考えが頭の中を駆け巡る、体感にして10分ほど考えていただろうか。
『ぎゃあーーーーーーー』
『きゃああああああああああああああああああ』
『たすけ…………』
騒音で我に返る。気づけば周りの雪はなくなり信じられないほど明るさが目に入る。
周りの暑さと裏腹に冷や汗が頬を伝う。
この時間が楽しすぎて永遠になればいいと思っていた、ほんとは頭の片隅にずっと残っていた不安が今芽を吹く。
(あいつらが俺を見逃すわけがないんだ)
もしかしたらまひるさんのこともすべてばれてるかもしれない
「まずい」
今すぐ彼女のもとに駆け付けたい
「あ、、、」
そういえば俺は彼女のことは何も知らない。どこで働いてて何の仕事をしていて何者なのか。
(彼女が言っていたのはこういうことだったのか)
『***君の言うことはほんとかわかんないよ』
前世での彼女の言葉がよみがえる
「結局俺は嘘だらけだ、見栄っ張りでプライドが高い。何も変わってない」
どうしても小さな嘘を積み重ねてしまう、昔からの癖だ。
ーーーーーーー
『いい加減にしろ!!!』
『ごめんなさい』
父はよく怒る人だった。だから怒られるのが怖くて咄嗟に小さな嘘をよく会話に挟んでいた、相手が満足いくなら心地がよかった。
小さい頃は空気が読めていい子ねってよく褒められていた。そういわれるのが凄い嬉しくて人の声色や物音の大きさに耳を澄ませるようになっていった。
けど歳を重ねるにつれて段々空気を読むってことは自分を隠すことなんだと気づき始めた。勿論時には自分を隠すことも必要なのかもしれない。でも嘘は雪だるまのように積み重なっていっていつしか自分がわからなくなるんだ。
そうしたら常に自分のことを疑うようになりどうせ自分なんてっていう考えに縛られ続ける。もしかしたら父は優しい人だったが自分がダメすぎたせいで怒らせてしまっていたのかもしれない。
自分の判断に自信がもてない、どうすればいいのかわからない。そうやってすべてのことから逃げてきたんだ。
気づいたときはすでに遅かった、一生日が当たらなくなったら生える木は変わる。生き物はみな必死でその環境に合わせようとする、なるべく効率がよく楽に生きれるように。本音を言わず常に相手に合わすことはすごく楽である一方自分自身を限りなくカメレオンにする。
そんな環境にはもううんざりだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
どごおおおおおおおおおおおおおおおおおんんんんnnnnnnん
突如で近くで爆発音がし、我に返る。
「シュテンnnnnnnnnnnnnnnn!!!!」
耳が痛くなるほど汚い声に思わず顔を
(まじかよ)
どうやらあいつらは俺のことをどうしても殺したいらしい。
「くそざる…………」
あふれんばかりの筋肉、六つもあるギョロ目。右手には赤い如意棒を握った目の前の猿は国で五本の指に入る獣
「オマエモウナッタンダッテナア」
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