おじいさんたちの冒険

滝口アルファ

おじいさんたちの冒険

むかしというほど

むかしではないむかし。

あるところに、

マチュピチュのような村がありました。

そこには、

おじいさんすぎるおじいさんと、

おばあさんみたいなおじいさんと、

おじいさんフェチのおじいさんと、

そのほかにも、

多様性あふれるおじいさんたちが住んでいました。


そんなある日のことです。

おじいさんたちがみんなで柴刈りに行った帰りに、

なにげなく川沿いを歩いていると、

一人のおばあさんの腐乱した死体が流れてきました。

おじいさんたちは、

「なぜ、桃じゃないんだ」とか、

「どうせなら、オフィーリアが流れてきてほしかった」とか、

口々に勝手なことを言っていました。


この出来事をきっかけに、

強欲に拍車がかかってしまったおじいさんたち。

やがて、

村中の柴を刈り尽くしてしまって、

やることがなくなったおじいさんたちは、

とうとう、

毒入りのきびだんごを作って、

愉快犯のように、

村のいたるところに、

毒入りのきびだんごを撒き散らして、

毎日を過ごすようになりました。


そんなふうに

村の治安が荒れに荒れていたとき、

かぐや姫と名乗る

スーパーモデル級の美人がやってきて、

実の祖父を探していると言いました。

おじいさんたちは、

興奮を抑えながら

かぐや姫の話を聞きました。

それによると、

その祖父の特徴は、

眉間に大きくも小さくもない

瘤があるということでした。

しかし、残念ながら、

おじいさんたちは、

毎日のように動物を毒殺して、

ストレス発散していましたので、

瘤どころか、

にきびひとつない

つやつやのお肌なのでした。


かぐや姫は、

おじいさんたちを見渡して、

(この中に私の祖父はいないな)と確信して、

ちっと舌打ちしました。

実は格闘家だったかぐや姫は、

周りにいる野次馬のおじいさんたちに、

つぎつぎとかかと落としを食らわせると、

置き土産のように、

銀色の玉手箱を残して、

突風とともに去って行きました。


そして、

かかと落としを食らった

おじいさんすぎるおじいさんが倒れて、

ダイイングメッセージを残そうと、

最後の力を振り絞って、

伸ばした左手の指先を動かしていると、

それが玉手箱の暗証番号のボタンに当たって、

偶然、玉手箱が開いてしまいました。

すると、中から、

もくもくもくもく

ショッキングピンクの煙が立ち込めました。


気が付くと、

おじいさんたちは全員、

令和のギャルに転生していて、

「これってやばくない?」とか、

「マジうけるんだけど!」とか、

はしゃぎながら、

その現実を受け入れて、

渋谷の街を闊歩していったのでした。














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