聖女フローラ
死霊の群れが、喜一の前まで来た。
死霊の群れが割れる。そこには、
「霧の谷のパヤシカ!」
思わず俺は叫んだ。あのアニメ映画のヒロインが、腐った森でつけるマスクだ。それに、ブカブカの服を着ている。
「あ~、宮田パヤオは、たまたまアニメ監督をしている。ロリコン、じゃなくて~、メカニックだし、この世界で、防毒マスクと防護衣を作ったら、あのアニメと同じになったよ~。すごいね。
君、転移前に新作を見た?見たら、内容を教えて欲しいな~」
「フローラ!卑怯だぞ。毒ガスは、禁止されている!」
「え~、ここは、日本ではないよ。ここは異世界!日本の条約や法律は適用されないのだよ」
「でも、卑怯だよ!」
「君が、間抜けなんだよ。自衛隊の装備召喚できる系能力者なんだよね。だったら、何故、防護マスクや、防護衣を召喚しない?
先進諸国の軍隊は、防護マスクは必須だよ。いくら条約で使用が禁止されていても、敵が使うときは使うのだよ。分かる?
その訓練に、結構なリソースを割いているよ。自衛隊にもあるよ。化学防護専門の部隊が、知らないの~~~」
まあ、私はその部隊の学校の教官&研究職だった。
だから、公式は頭に入っている。
生成できる能力が授かったらしい。
その耐性も授かっているが、まあ、今作戦は、訳があって、能力を切っている。
防護マスクと防護衣を着用している。
私は、魔王軍四天王の一人として、敵と話すときは、高圧的な言葉を使うように厳命されている。
魔王軍のカラーだそうだ。
それに
丁寧語だと、敵は増長するだろう。
相手は、知識マイナスの子供なのだから。
「でも、召喚した国を滅ぼすのはやり過ぎだよ!」
「グスン、グスン、フローラ、貴方は悪鬼です!お父様とお母様を返して、兄弟姉妹を返して、臣民まで虐殺して、貴方は、魔族です!」
「そお?正当防衛だよ。え~と、あの国のお姫様かな。あの国は、召喚という誘拐をする国で、人喰いだよ」
「そんなことあるわけないだろ!最上級の待遇をするって、そうだろ。マリアさん」
「・・・・・・・・・」
沈黙が答えなのに、彼とは、わかり合えないだろう。
だから、戦争が起きるのかな。
「それなら、貴方は、孤児まで、戦場に引っ張り出して、そっちの方はいいの?」
「だから、この異世界は、日本の常識が通用しないって!ウグ」
「ゴホゴホ」
「ほら、結界の中で、大声を出すから、酸素が無くなってきているよ。君が助かるには、防護マスクと防護衣を着けて、結界をといて、私と戦うことだよ」
「オープン、え~と、これと、これ」
「ああ、男性は目を背けてね。アリーシャは厳に前を警戒」
「「「・・・了解」」」
お姫様がドレスを脱ぎだした。
アタフタしている。
自衛官なら、数秒でマスクをつけ。速やかに、防護衣を着る。
やったな。私は、防護マスクをつけて、全力疾走をした。
『我らは化学科!普通科隊員よりも早く装着し、部隊を援護しなければならない!』
『はあ、はあ、はあ、はあ』
それにしても遅い。日本は、軍事知識がない国なのだ。
市民生活に役に立たない兵器の解説を得意気に話すマニアの知識のことじゃない。
その国として必要な軍事常識
周りを危険な国に囲まれ、ミサイル、化学兵器、核、それを使われたら、どうするのか?
迎撃ミサイルの備品が落ちるから反対する?リスクを過大に宣伝する野党
中国のキラー衛星は、環境に優しいと珍説を載せる新聞社・・・
いかん。いかん。私もあの災害で自衛官にお世話になるまで、何も知らなかった。
そもそも、彼は、武器をこの世界の住民に銃を配ったが、ロクに読み書き計算できない者に配る怖さを知らないのだろうか?
彼は、軍隊は集団行動であるとの認識はあるのだろうか?
この世界の住人に現代兵器を配るとしたら、車両、LAM、銃になる。それ以上は難しいだろう。
まるで、紛争地域の武装ゲリラだ。
そうだ。この軍隊は、まるで、武装ゲリラそのものだ。
おっ、そろそろか?
「お着替え終わったかな。あの~」
「はあ、はあ、はあ、マリアさん。結界を解いて、すぐに撃つよ」
「はい!」
ダン!ダン!ダン!
銃声が響き。フローラに向かって放たれるが、フローラの前に来ると、途端に、銃弾の勢いが弱まり。フローラの足下に落ちる。
「何故!」
「だから、いちいち教えないよ。それよりも、君、気密点検していないでしょう。目のグラスが曇っている。
もう、君、死ぬよ」
バタン、バタン
二人は倒れた。
防毒マスクはただつけただけではだめなのだ。きっちり、ゴム紐で調整して、密着しているかどうか、気密点検をしなければならない。
古い映像で、冷戦下、市民たちが防毒マスクをつける訓練の様子が出ているが、気密点検を真剣にやっている。
これは、教わらなければ、分からないわね。
私は、知らないことがあると知っている。
それが、彼との差、ほんのわずかな差。
いわば、知識のなさの盲点を突いているだけだ。
第一次世界大戦でも、ガス戦は、対策されたら、大きな戦果は望めなくなった。
自衛官が異世界転生したら、まず。正体を隠す。銃は魔道具と言い張って冒険者になるだろう。
何故なら、現代兵器を扱うことの難しさを知っているからだ。
高度の教育を受けた職業軍人が、訓練をし。そして、やっと、各職種が生き物のように連動出来るのだ。
相手は、素人、だから、私はギリギリ勝てるのだ。
「せめて、魂は、日本に帰りますように・・・」
「フローラ様、もう、こんなことお止め下さい。ウォーターフォール解きますわ」
「ええ、お願い。魔王軍幹部って、何かあおりスキルが高いものだと」
「フローラ様は、そのままでいいですわ。逆に丁寧語で話された方が、恐怖が増したと思います」
「うん。魔王様に奏上します」
水の壁を周りに展開していた。水の密度は、空気の800倍以上、銃弾の勢いは弱まるとされている。
初戦で、銃弾が効かなかったのは、この水の防壁のおかげである。
私は、毒ガスを解除し。魔道士アリーシャさんに、風を人族の国の方向に吹かせて、
マスクを取った。
「「「!!!」」」
そして、戦場を隅々まで歩き。
「状況ガス終了!」
と宣言し、皆はやっと、マスクを取った。
これをするために、耐性スキルを切っていたのだ。
これが、化学防護隊の幹部の務め。
「それにしても、身も蓋もない能力ですな」
「それはいっちゃいけない約束だよ」
☆☆☆聖王国
「猊下、ルクセル王国遺民と、キイチ・スズキとその兵団、魔族領で全滅しました」
「そうか。どうでも良い。それよりも、フローラ殿と交易の調整だ。奇跡の土を手に入れたい。ルクセル王国は転移者に対するやり過ぎがあったと表明する。
フローラ殿は、こちらに、来られるように、聖女の認定を出すぞ」
「御意」
☆魔族領
・・・私の服屋への道は遠い。
私のデザインは、全然、売れないのだ。
「動きやすいのに、これじゃ、ミミリーちゃんたちのお給金支払えない。
そうだ。化学肥料を精製して売ろう」
「フローラ様、そっちの方が良いのでは・・・」
「・・・自覚しています。この世界の魔道で工場を作れないかな。相談ね。そしたら、魔族領は豊かになって・・・」
逃げた先で、空気中の窒素からアンモニアを抽出して、化学肥料として売ったが、売れなかった。
フローラとばれて、おいて逃げたら、今になって、その効能がわかったのね。
「フローラ様、聖王国から、フローラ様は、豊穣の力がある。よって、聖女として認定するとの声明が出ました!」
「それ、やり過ぎでしょう!」
化学肥料の父は毒ガスの開発者でもあった。
もしかして、戦争と平和は、地続きなのかもしれない。
殺戮聖女フローラ~異世界転生した女性自衛官が聖女になる話 山田 勝 @victory_yamada
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます