第一章: 1 目覚め
……ジジジジジ
「うぅ……」
私は寝返りをうつ。
……ジジジジジジジジジジ
私は拳を作り、音の元に向けてその拳を軽く落とす。
時計がサイドテーブルから音を立てて落ち、呻き声のようなベルの音が鳴る。
私は目をゆっくりと開け、横に首を傾けると綺麗に整えられた二段ベッドが見える。
そして、私はハッとして飛び起き、落ちた時計を拾い上げる。
時計を見ると、針は8時を指している。
「やばっ!」
私は、急いでベッドの下からトランクとスリッパを引っ張り出し、着ていた服をベッドの上に脱ぎ捨て、トランクの中にあった白いワンピースを上から被るように着て、スリッパを履く。
流れる様に化粧台に向かい、椅子に座らずに鏡へ顔をグッと近づける。
そこには……
ーー歳は15、いや、16だろうか……? 透き通る様な銀髪と青い瞳を持つ少女が写る……
荒い手つきで机の上に置いてあった櫛で寝癖を整えようとするが、横の寝癖が手強い……。
「うーん……」
私は顔を顰めながら寝癖と格闘するが、急に時間を思い出し、櫛を机に置く。
扉を勢いよく開け、両側に幾つも部屋がある長い廊下を寝癖を揺らしながら走り、下の階に降りようとする。
廊下の突き当たりを曲がろうとした時、突然大きな影が角から現れる。
そして私は、柔らかな影にぶつかると、その反動で尻餅をつく。
「あいたたたたた……!」
すると、
「大丈夫ですか……? 全く……」
という心配する声が聞こえる。
私はゆっくりと顔を上げると、心配そうな顔をしたブロンドヘアで背の高い女性が手をこちらに差し伸べている。
「ごめんなさい……お母様」
と言うと私は腰をさすりながら、その手を掴んで立つ。
「大丈夫ですよ。それより、みんなが下で待ってますよ」
お母様が微笑み、優しい声で言った。
「はーい」
私は生返事をして階段を駆け降りる。
「あっ!」
階段の半ばで私は盛大に足を滑らせ、視点が回転しながら落ちていく。
咄嗟に私は右手を広げ、魔法を使う。
すると、右手の銀製のブレスレットに嵌め込まれたサファイアのような宝石がわずかに光を放つ。
そして私は、床が目の前に近づいたところで止まった。
私は自分の体をゆっくりと下ろし、苦笑いしながら振り返ると、
「あなたって子は……そういう不注意なところですよ!」
お母様がやれやれ、という顔をしながら言い、首を少し横に振るところが見える。
「気を付けまーす……。」
私は不貞腐れた返事をしながら立ち上がる。
ーーそして、私は正面の大きなステンドグラスがあしらわれた玄関扉から日の光を浴びつつ、少し左に向かって歩き、目の前のドアをゆっくりと開く……
comet 〜忘れられた魔法使い達〜 @arisaka_novelist
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