第15話 タナベライド
ギャラリー「かっ飛ばせー、かっ飛ばせー」
ワーーー、きゃーーー、ワーーー。
息子・生徒A・B ・・・・・・。
生徒B「俺たちの青春って、一体なんなんだろうー」
生徒A・息子「・・・・・・」
生徒B「少なくとも、フェンス越しに活発な野球部の応援女子をぼーっと見る事じゃ無いと思うんだよなー」
生徒A・息子「・・・・・・」
生徒B「はぁー、何か言ってくれよー。余計虚しくなるだろー」
わーーー、キャーーー。
生徒A「・・・・・・あっ!そう言えば。タナベライド?もうすぐタナベライドの時期じゃね?」
生徒B・息子「!?」
生徒A「6月半ばだろ、そろそろじゃね?」
生徒B「たしかに!そうだ、タナベライドの季節だ!忘れてた」
息子「はやいなー。あの興奮からもう1年も経つのかー。土曜に行ってみようぜ」
生徒A・B「ああ、行こう行こう」
土曜日
《ピンポンパンポーン♪》
《ご来園のお客様にお願いです。交通公園では、ゴミ箱を設置しておりません。ゴミはお客様ご自身でお持ち帰りいただきますようご協力をお願い致しますー》
生徒A「来たな」
生徒B「まさに、今日だったな・・・・・・。思い出してくれて助かったぜ」
息子「ふたりとも、準備はいいか?」
生徒A・B「ああ」
息子「いくぜー」
係員「最後尾は、こちらですー。一列に並んでお待ちくださいー。こちらのゴーカートは、只今30分待ちですー。本日、開園記念につき、無料で乗車出来ますー。順番が来るまで、このタイヤに沿って並んでお待ちくださいー」
息子・生徒A・B ・・・・・・。
30分後
係員「次の方どうぞー」
生徒B「よっしゃ!」
係員「次の方も続けてどうぞー」
生徒A「じゃあ、先行ってるぞ」
息子「うん、気をつけて」
ブーーーン。
係員「はい、次の方ー」
息子「はいっ!」
係員「あれー?・・・・・・。君、どこかでー?」
息子「・・・・・・。はいっ?」
係員「いやいや、座ってベルト締めてねー」
息子「ああ、大丈夫です」
係員「はい、じゃあアクセル踏んで進んでねー。スタート」
ブーーーン、ブーーーーン、ブーーーーーン。
生徒B「来たか」
息子「お待たせー」
生徒A「よしっ、揃ったな」
息子「ひさびさで、緊張するなー」
生徒A「簡単にコースとルールの確認だ。ちょうどこの先のカーブに見える定食屋『タナベ』の看板のところ、この時期にだけタイヤのクッションが移動されて、交通公園の外周に出れる抜け道が現れる。そこから外周に出て公園を一周、またコースに戻って先にゴールした奴の優勝でいいな?』
生徒B「ああ、バッチリだ。優勝賞品は去年と一緒、ビックマックセットでいいよな?去年は、最後の最後でこいつに抜かされたからなー。今年こそ絶対勝つ!」
息子「生憎お前らに奢る金が無いんでな、今年も悪いが勝たせてもらうよ」
生徒A「ん?やばい、後続車が来そうだ。始めるぞー」
ヨーイ、スタート!
ブーーーーーン。ブーーーーン。
生徒B「よし、良い出だし!いくぜー」
生徒A「くそ、こいつステアリングが重いなー」
生徒B「よっしゃー!トップで抜け道通過だぜー」
息子「まだまだ、勝負はここからだ!」
ブーーーーン。ブーーーーン。
生徒A「ヨシっ、トップに立った!お前ら今年は勝たせてもらうぞ」
生徒B「加速力がねぇなコイツ。なめんなー」
息子「邪魔だー、抜かせろー」
ブーーーーン。ブーーン。ブーン。
生徒B「くそっー、外周で一気にビリかよー、スピードにのらねぇ」
生徒A「!おい、右!」
息子「やばっ、今年ははやいな。注意しろよ」
生徒B「俺やばい、捕まるー」
ブーーーーーン。ピーーーーーッ!
ブーーーーーン。ピッピーーーーッ!
係員「止まれー!そこの3台ー、何やってるだー」
生徒A「次のストレートで、お前らも係員も、突き放してやるぜ」
息子「望むところよ」
生徒B「やばい、なんかこの車体加速しないー。俺だけ捕まっちゃうよー」
ピッピーーーーーッ!
係員「止まれー」
ブーーーーン。ブーーーーン。
生徒A「やるなー」
息子「まだまだ勝負はこれからよー。コースに戻ったら一気に決めるぜ」
生徒B「おーい・・・・・・。ちょっと待ってくれー、やばいよー」
係員「はぁ、あ、危ないだろー、止まって降りろー」
ブーーーーーン。
息子「さあ、こっからだぜー」
生徒A「くそっ、並ばれたかー」
生徒B「先に戻るなよー、ちょっとマジで捕まるー」
ピッーー。
係員「はぁ、はぁ、止まれー」
ブーーーーーン。ブーーーーン。
生徒A「くそっ、カーブきつい。ハンドルが重いー」
息子「うぉりゃー!!」
生徒B「おーい・・・・・・」
係員「はぁ、はぁ、はぁ、まてー」
息子「うぉりゃー!!!」
生徒A「のぉああぁーーー!」
夕方 マクドナルド
息子「いっただきまーす」
生徒A「悔しいわー」
息子「うまー、一年ぶりのこの味〜」
生徒A「はぁー。ハンドルが重過ぎだったんだよなー。車体が敗因だわー」
息子「それは違うわ。全ては度胸と腕次第よ」
生徒A「なにが、腕だよー。ちゃんとした車だったら最終コーナーであんなに膨らまねぇよ、・・・・・・てか、お前大丈夫かよ?」
生徒B「・・・・・・」
生徒A「おい、説教の1時間くらいなんだよ。気にするなって」
生徒B「・・・・・・。オッさんと言えども、6人に囲まれて、みっちり1時間だぞ。しかも去年の分もまとめて俺ひとりで罪を被らされたんだぞ」
息子「やっぱり去年のこと覚えてたんだー。乗る時、ん?って顔されて一瞬焦ったんだよなー」
生徒A「てか、捕まえられたノロマなお前が悪いんじゃん」
生徒B「あのなー!ガス欠だったんだから仕方ねぇだろ。うんともすんとも言わねぇ車でどうやって逃げるんだよー。くっそー、どんなに詰められたって、お前らの事は言わなかったんだぞ!」
生徒A「あー、その点は偉い。大したものです」
生徒B「家とか学校に連絡されたらどうしよー、あー」
息子・生徒A「GOOD LUCK」
生徒B「はぁー?そんだけかよーなんなんだよ!」
生徒A「まあまあまあまあ」
息子「うま〜。ビックマックのこの味が俺の青春だわ〜」
ハップル⭐︎ビンボー回顧録 大造 @IRODORInoSATO
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