第14話 欲張り

 息子「かあちゃん、かあちゃんー」

 母「なにー?これから布団干して買い物行かないと行けないんだけど、急ぎー?」

 息子「いやいや、大した事じゃないかもしれないんだけどさー」

 母「なによ、それー。スーパーの開店に間に合わないとマズいんだけどー。大した事じゃなければ、後にしてよー」

 息子「・・・・・・実は昨日、3万円拾った」

 母「えっ!!」

 息子「・・・・・・なーんて、嘘〜」

 母「・・・・・・」

 息子「あっ。怒った?ごめん、ごめん」

 母「ガオー!!」

 息子「ごめんってー」


 夕方


 母「夕飯出来たわよー」

 

 ドシドシドシドシ


 兄「やっほーい、炒め物の油の匂いだー。俺油多めでー」

 息子「犬かよー。どんだけ敏感な嗅覚してるんだよー」

 母「さあ、温かいうちに食べるわよー。はい、座ってー」

 兄「なんか今日豪華じゃない?おかずが二品もあるよー」

 母「そうなのー、最近新発見があって2丁目のスーパーの値引きのタイミングが3時頃に変わったのよー。それも半額よー、2割引でも高くて躊躇するのに3時に大量の半額商品が出ると、私にとっては最高のタイミングなわけよー。パートの帰りに寄れるからね」

 兄「うそー、今年度最高のニュースじゃないかー」

 母「でしょー。勤め先のスーパーの上司にも言ってみようかしら、うちの値引きのタイミング遅すぎやしませんかってね。そしたら、2時半とかにしてもらってパート帰りに値引き商品漁りハシゴできるわー」

 息子「そんな、いちパートの意見が通るわけないだろー。 2丁目のスーパーだけで充分じゃないかー」

 母「ふん、いちパートだって意見するって決めたからにはやってやりますからね。まあ見てなさい・・・・・・」

 息子「あんまり、勤め先に迷惑かけないでよー」


 数日後


 母「さあみんな〜。ご飯よ〜。おいでなすって〜」


 ドシドシドシドシ


 兄「腹減ったー。あれっ!またおかずが増えてる!」

 息子「えっ、本当だ!今日誰かの誕生日だっけ?」

 母「ふふふっ」

 兄・息子 ・・・・・・?。

 母「やったわよ、わたし。言ったわよ、言ってやりましたよ。上司に。2丁目スーパーの値引きについてね。はじめは大して相手にされなかったけど、毎日毎日チクチクチクチク言ったらね、ようやく店長に話がいって、そしたらすぐに『うちは2時半に値引きするぞー』ってね。商売感が高い人は動くの早い早いー。それで、わたしが上がる時には値引き品がわんさかあるわけよ!」

 兄「すげー、店を動かしたのー」

 母「ははは、そうよ!そうよー!安く仕入れ、店もロスなく、競合店にもお客さんを取られない。一石三鳥の活躍よー」

 兄「おかずが増えて俺も嬉しいー」

 母「はははっ、どう!?計画通りよー」

 兄「さすがー!よっ!」パチパチパチパチ


 息子「・・・・・・。このまま上手く行くとは思えんが・・・・・・」


 数日後


 母「ほらー、ご飯よー、冷めるから早くすわれー」


 ドシドシドシドシ


 兄「メシめし飯ー。今日は何だなんだー、うひょーい」

 息子「・・・・・・」

 兄「ん?どうした?・・・・・・あれっ?これで全部?」

 母「なに?文句あるの」

 兄「ご飯と味噌汁と納豆だけって・・・・・・、肉は?魚とか・・・・・・」

 母「無いわよ」

 兄「えー、なんでー。値引品ゲット出来なかったのー」

 母「あー、もう。その話はしないで、腹立つわー」

 兄「そんな・・・・・・」


 息子「やっぱりなー、元に戻ったんだろー。値引きタイミングー」

 母「ああぁぁん、そうよ。ったく。店長もすーぐ他人の意見に流されるもんだからー」

 息子「2丁目のスーパーも?」

 母「そうよ、なんなら前より遅い時間にしやがったわ。主婦の敵よ、あんなスーパー」

 兄「えー、じゃあ前みたいにおかず出ないのー」

 母「そうよ、仕方ないでしょう」

 兄「うううぅぅ」

 母「あーあ、夜に買いに行ってもいいけど、夕飯の時間遅くなるし、何より値引きコーナーが混むのよねー」

 息子「かあちゃんが、欲張るからだよー。2丁目スーパーだけで満足してればよかったのに、自分ところのスーパーでもって言っちゃうからさー」

 母「何よー、私が悪いみたいな言い方しないでよねー」

 

 兄「ふぇーん。ご飯の楽しみが・・・・・・」

 母「ちっきょう・・・・・・。こんなチャンスなかなか無かったのに・・・・・・、もっと買っとけばよかった」

 息子「・・・・・・」


 息子「・・・・・・、結局この話のオチってなんなん?」

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