第2話 スキル付与の儀式でゴミスキルを授かる

「さあ、スキル付与の儀式を始めましょう」


 聖女のミラベルさんが、俺たちに向かって宣言する。


 王者の神殿――


 俺たちはマクタロード皇帝の居城、クリスタル・パレスを出た後、


 大きくて古い神殿に、俺たちは連れて来られた。


「ここは王者の神殿です。今から、勇者様たち一人ひとりに、【スキル】を付与します」


 スキル――魔族と戦うための、特別な力らしい。

 

 【異界の勇者】が得るスキルは、普通の人間とは違ってすごく強いそう。


「この魔法陣の上に、立ってください……」


 俺たちは一人ひとり名前を呼ばれて、聖女の前にある魔法陣の上に立つ。


「……ササヤマ様、前に来てください」

「おう……」


 笹山はビビりながらも、聖女の前に出る。


「創世の女神よ……この者に、勇者の力を与えよ」

「うおおおお……!!!」


 魔法陣が青く輝き始めて。


 笹山の手の甲に、何か模様のものが浮かび上がる……


「おお……そ、その紋章は……【剣聖】の証です」

「け、剣聖……?」

「【序列2位】の勇者様ですわ」

「なんだよ……【序列】って……?」


 笹山がそう言いかけると、


「聖女よ。【女神の予言】について勇者たちに話さなければならぬぞ」

「私としたことが……失礼しました」


 女神の予言――この世界【アルトリア】を創造した女神アルテアの残した予言。


「女神の予言によれば、【30人の異界の勇者が、魔王から世界を救う】と……」


 たしかに俺たちのクラスは、剛田先生を入れて30人いる。


 つまり、俺たちが予言の【30人の異界の勇者】というわけだ。


 異界の勇者には序列があり、第1位の勇者から第30位の勇者まである。序列が高いほど強い勇者であり、低いほど弱い勇者だ。


 特に1位から4位までの勇者は、四天王ならぬ【四英雄】と呼ばれる。魔王討伐の戦いにおいて、人族側の重要戦力らしい。


 そして、笹山の授かった【剣聖】は、あらゆる剣技を使いこなす。剣士系スキルの最上級だそう。


「異界の勇者には【序列】があります。それは強さの位階を意味します」

「じゃあ……【序列2位】の俺は、2番目に強い勇者ってことか?」

「そうです。ササヤマ様は、30人の中で2番目にお強い方。我々人族の、重要な戦力です」

「俺が重要な戦力……。でも、2番目なのか……」


 自分が1番じゃないと気が済まない笹山だ。


 自分が「2番目」だと言われて、かなり不満げな様子だ。


「剣聖が序列2位なら、序列1位は何だよ?」

「序列1位は……【創成】の勇者様です」


 女神の予言では、【創成】のスキルを持つ勇者が【序列1位】らしい。


「創成の勇者様は、30人の勇者の【指導者】として、人族を導き、魔王を討伐するのです。創成の勇者様がいなければ、魔王を倒すことはできません」


 創成の勇者は、1番強い勇者で、魔王討伐に必要不可欠――


 神代の創成魔法を使える唯一の存在で、どんなものでも作り出すことができるそうだ。


「神代に失われた【英雄武装】を創造することもできます。たとえば、神剣アルテミス、神盾ガイア、神弓クロノス、神鎧タイタロス、神砲プロメテウス……それだけでなく、人の生命まで」


 とにかくヤバそうな【最強装備】を作ることができるってことか。

 

「マジかよ。俺が1番強い創成の勇者じゃねえのか。俺以外に創成の勇者にふさわしい奴いねえだろ……っ!」


 ブツクサと文句を言いながら、笹山は魔法陣の外に出た。


「では、次はサクラダさん。前に来てください」

「あ、あたし……?」


 今度は桜田が聖女に呼ばれる。


「創世の女神よ……この者に、勇者の力を与えよ」

「きゃあああっ!」

「……サクラダさんのスキルは、【賢者の勇者】です」

「賢者?! それって強いの?」

「はい。【序列3位】の勇者様です」

「ウソ……あたし、3番目に強いんだ……」


 賢者――この世のあらゆる魔法を使うことができる。魔術師系の最上級スキルらしい。


「あたしが……クラスで3番目なんだ」


 戸惑いつつも、嬉しそうな表情をする桜田。


「サクラダさんには期待しています。では、次はミヤモトさん」


 亜美の名前が呼ばれた。


「優斗……」


 隣にいた亜美が、俺の手を握った。


 亜美の手は震えて、不安そうな表情をしている。


「大丈夫だよ。亜美ならきっといいスキルをもらえる」

「うん……」


 亜美は俺の手を離して、聖女の前に行く。


「創世の女神よ……この者に、勇者の力を与えよ」

「つ……っ!」

「……ミヤモトさんのスキルは、【贈与】の勇者です」

「ぞ、贈与……?」


 贈与の勇者……?

 

 剣聖や賢者と違って、名前からどんなスキルかイメージできない。


 なんとなく、攻撃系というより支援系のスキルだと思うが。


「どんなスキルなんですか?」

「モンスターを倒した時に得られる経験値【ポイント】を増幅して、味方に分配することができるスキルです」

「分配? 増幅? それにポイントって……?」


 この世界には、【レベル】という概念があるらしくて……


 まあ、ファンタジーゲームでよくある「レベル」とほぼ同じだ。


 生命の強さを示す指標で、【ポイント】と呼ばれる経験値を一定以上獲得すると、【レベル】が上がり、【ステータス】の数値が上がって強くなる。

 

 つまり、ポイントをたくさん獲得すればするほど、どんどん強くなることができる。


「ミヤモトさんの任意で、獲得したポイントを特定の人に多く分配したり、逆に少なく分配することができます」 


 つまり、強い奴にポイントを集中させることもできるってことか。


「あと、ミヤモトさんにポイントを【デポジット】することで、ポイントを増幅することができます」

「そ、そうなんですか……それで序列は、きっと低いですよね?」  


 戦闘向きのスキルではないではないから、序列は低そうにも思えるが、

 

「いいえ! 【低い】なんてとんでもないです。贈与の勇者様は【序列4位】です。とても強い勇者様ですよ」

「あたしがクラスで4番目に強いだなんて……」


 亜美は本当に困惑した様子だ……


 強くなるために不可欠なポイントを操作できるのだから、やはり強力なスキルということだろう。


「期待していますよ。贈与の勇者様」

「はい……」

 

 ★


 どんどんクラスメイトたちは、スキルを授かっていく。


「次は、ミナトガワユウトさん」


 やっと俺の番が来た——

 

「では、魔法陣の上に立ってください」

「はい」


 俺はどんなスキルを授かるのか?


 できれば平均、序列20番代がいいな……


「創世の女神よ……この者に、勇者の力を与えよ」

「おお……!」


 俺は青い光に包まれて、


「……ミナトガワさんのスキルは【工作】です」

「こうさく……?」


 名前からして「弱そう」なスキルだが。


「いや、こんなことは、あり得ない……」


 聖女が焦っている。


「その、このスキルは、そんなにヤバいんですか?」

「ええ……【工作】は、予言にないスキルです」

「マジですか」

「予言にない以上、ミナトガワさんは【序列外】の勇者様……いえ、勇者ではありません」


 聖女の表情が、険しくなっていく。


「【工作】は、異界の勇者が持つはずのないスキルです。つまり——」

「ゴミスキル、ということじゃな?」


 マクタロード皇帝が、落ち込む聖女の肩を叩く。


「はい……陛下。ゴミとしか言いようがありません」

「ならば、不要なゴミは捨てたほうがよいな」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

★あとがき


この話は連載候補です。


「続きを連載して欲しい!」

「面白そう!」


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序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくないから強くなってシナリオぶっ壊したら、主人公にキレられました。え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし〜

https://kakuyomu.jp/works/16817330669027010005/episodes/16817330669029457203



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ゴミ扱いされ捨てられた【工作の勇者】は、実は帝国の探し求める最強の【創成の勇者】でした〜迫害されたエルフと共に帝国へ復讐を〜 水間ノボル🐳@書籍化決定! @saikyojoker

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