娘から孫へ

 あれから十五年。

 結婚し、娘が産まれ、私も母となった。

 娘は私に似て夜型で、目を離すとすぐに夜更かしをする。


 そこで、添い寝して、たくさんの物語を聞かせる。もちろん、娘が寝てくれるまで、だ。

 物語は、おとぎ話に、グリム童話に、その日にあった楽しいこと。

 そして――母から教えてもらった神様の物語。

 長年温めておいた話を、雨音が聞こえる今夜、娘に話している。


「おしっこは温かいのに、どうして冷たいお水の神様になるの?」


 あの時私が母にしたのと同じ質問を、今度は私が娘にされる。

 私が寝てしまわないように気をつけないと、などと考えながら、娘の頭を撫でた。


「お母さんはね、こう思うの。水の神様は、ママを助けたかったんじゃないかって。水の神様のママは火傷をしていたから、冷たい水で冷やして、ママを看病しようとしたんじゃないかなぁ」


 娘は、小さく寝息を立てていた。

 私は、ブランケットをかけて、おやすみ、と伝えた。


 あなたが大きくなって、子供ができたら。

 あなたも神様の願いを伝えてあげてね。


 お母さんも、いつまでも神様の願いを、あなたに伝えるから――。

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サヨナラは雨とともに 篠塚しおん @noveluser_shion

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