野良猫の給食

@sore12

第1話 野良猫給食&ステイ

 野良猫が怪我をしてやってきた

 そういえば この猫は我が家の飼い猫とよく喧嘩をしていた猫だな 猫の出入り口を使い盗み食いにも来なくなり どこかで餌を貰えるようになったものと思っていた

 我が家の猫は怪我をしていないから喧嘩の相手ではなさそうだ 野良猫があまり居ない地域なので もしかしたら野良アライグマかもしれない 

 とにかく 傷の様子を見てみると 耳と目の間に怪我 膿が出ている これは大変だ 野良は簡単には触らせない 抗生物質を塗り込むこともできない 流石に野良は何事にも強く痛そうな様子がないが目の上は腫れている 食欲はある ならば! 餌に抗生物質薬を混ぜる

 薬など飲みなれていないから 良く効く 7日間投薬 凄い効き目だ 投薬を止めて10日後にはかさぶたとなり その後 ぶらぶらしていたかさぶたも取れ 綺麗にハゲとなり治った そして 我が家での給食生活が定着した

 野良は 声を発しない 足音を立てない 食べることに強欲で大食らいだ

 飼い猫は 結構ドスドス音をさせて歩く 生きる為の欲がない いつでもご飯にありつけるからだ

 野良でも 名前がないと会話もしにくいので あるブツを確認しマルオと命名した

マルオは腹が減るとやって来る なので時間は決まっていない 少し困る しかし以前のように盗み食いは無くなり 玄関で待つようになった 利口だ

 こちらは 社会生活リタイヤ初心者 ダラダラした生活が楽しく又空しい時期で 朝起きる時間はまちまちだ 飼い猫達は 飼い主とは10年以上の付き合いで 理解しているのか 起こすことも無く 寝添い寝で待つ

 朝方トイレに起きると 既にマルオがスタンバっている まだ早いだろうと告げ 寝ること数時間 そんな日々が続いて 最近では腹時計をこちらに合わせるかの様に譲歩している マルオの我慢強さには感心する 年季の入った野良猫だが なんとも健気で可愛い 自分のだらしない生活を反省すること度々 現在に至る


 寝床は 主に隣の空き家らしい 時々我が家の藁置き場で寝ている事もあるが 結構守備範囲が広く 田舎の小さな村ではあるが 40件程の集落をテリトリーとして歩き回っているようだ 我が家だけではなく 他でも食事を手に入れているのだと察しがつくが 正真正銘の野良で 今は我が家の給食がお気に入りのようだ 

 半年も経つと 鼻ツンくらいはさせてくれるようになる 声も出始めた 催促を覚えたのだ なんと! 蚊が鳴くような声を聴いたのは我が家の給食を食べ始めて半年が過ぎた頃だった しかし 給食を出した時の威嚇シャーも毎回忘れない

 そのころには 飼い猫達は 外に出られなくなっていた 歳は近く 若い頃は喧嘩仲間だったはずが 今では野良猫の風格に負けている マルオをガラス越しに見ただけで 唸りまくる 見た目は 黒ヒョウのような凛々しい雄猫だが 基本気が優しく 来る者拒まずの性格で 同居の元野良の雌に一目惚れされ 今でも惚れられているハンサム猫だ 早々二匹の為に室内トイレを設置 時々はマルオの姿が無いことを確認しては コソっと外へ出るが 直ぐに戻る 飼い主が外に居ると 散歩へも行かず傍を離れない 負け猫という言葉がピッタリだ

 それでも 朝夕の給食を出す順番は 飼い猫1番 マルオ2番としている これは人間社会でのけじめ感からなので 野良には関係ない とにかく食えれば良いのだろうが 文句を言われたことはない

 マルオは 秋までは 井戸の上で 涼んだりしていたが 秋も深まり 藁置き場を囲い マルオ冬用の寝床を作った

 そんなある日 マルオの後を付いてきたのか? 猫達のコミュニティで話題になったのか? 小さいのが 現れた あれ? 子猫?にしては少し大きいか 床下のこんな小さな隙間から? これじゃマルオも通れまい 流石に野良候補だけある しかしまだ子供なので警戒心はあり触らせないが良くしゃべる 声がでかい これが都会ならご近所迷惑になっていただろう 

 ガリガリで寒そう 目ばかりぐりぐりしている 

 様子を見ていると 来たり来なかったりだ マルオは怒る訳でもなく 自分が先に食べ終わるとカッサライに来る 子猫だろうが容赦ない 我が家の猫達もガラス越しに静かに見学している様子 しかしいつも空腹だと見てわかる 姿を見る度に 少しずつ柔らかい物から与え 床下の小さい子専用の出入り口付近に寝床を設置した

 どうもノミが付いているようだ ならばこの子はフィラリア薬だと思い 子猫用のフィラリア薬を投与 やはり今年誕生した猫だけあって 薬が良く効いたようだ 

 この子は雄か雌か? 半月経ってもわからない しかし名無しでは呼びづらい 

 ある朝の夢でミドリとお告げ?があり ミドリに決定

 給食はもう1匹増えることとなったが 老猫ばかりだった所に こんなに若いのが来ると年寄用は栄養が不足するだろうと思い 子猫用を用意 給食待ち3番目が決定した 早く太れ!そして春には自立してくれ と願うばかり

 猫コミュニティ 恐るべし 

 何だか高貴な猫がやってきた えっ! なんだ!この でぶなシャム?

 ミドリの寝床で寝ているミドリは居ない 様子を見ていると 1日置きに家の周りをうろうろしては姿を消す そういう時は給食時間が来ても出さないことにした

 すると ピタッと来なくなった 食い物が無いと判断したらしい 冷たいようだがあの姿を見たところ 多分飼い猫のようだ 実際こちらもこの先何年生きるかわからない 老い先短い年齢を考えると 増えて欲しくはない 

 飼い猫達やマルオは既に10歳は超えている ミドリはこちらより長生きだろうと想像できる 春が来たら 何とか自力で餌にありつけるよう マルオに指導してもらいたいものだ

 ミドリもようやく安心して寝床で寝るようになったが 最近風邪をひいたいようだ やぐらコタツを設置したが この急な寒さや放射冷却でコタツを認知する余裕が無かった為 案の定風邪をひいた 現在投薬治療中

 マルオは 病気とは無縁のようだ 毎日力強く 生き延びている

 これから雪が降る さてどうしたものか…….

 こんな想像もつかなかったリタイヤ生活に 今までに無い忙しき幸福に浸る


 まだまだ 野良猫給食&ステイは続く

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