第4話 司の道
「ここはどこだ?」
司は目を覚まして辺りを確認する。牢屋のような場所で足には枷と重り、残った左腕も鎖に繋がれていた。
確か急によく分からない場所にいて...。
「香織!美優!!ぐわぁぁぁ!!」
そうだ、家族が捕らえられたんだ。そう思って2人の名を叫んだ瞬間に司の体に電流が流れ出した。すると近くにある扉が開き男が中に入ってきた。
「よお!目が覚めたか。お前は今から売られるんだよ!」
そういうと繋がれていた左腕の鎖を外し、首輪から伸びた鎖を引っ張られる。抵抗しようとしたらまた電流が流れてしまう。いやいやついて行くと今度は開けた場所に出た。
ドームのような場所で複数の人間が仮面をつけてこちらを見ていた。壇上の中心まで連れてこられるとマイクから大きな声がする。
「さあ!次の奴隷は...世にも珍しい異世界人です!どうやら家族でこちらの世界に来たらしいです。
しかも!彼の妻はなんと同じく召喚された聖女様!!
右腕と右目は失っているがその価値は高いぞ!まずは1万から!!」
その放送が終わると一斉に仮面を被ったものたちが手を挙げている。何やらサインのようなものを司会に見せていた。状況を察するにここは奴隷オークションなのだろう。
(今は情報がない。それに首輪の件もあるんだ...。ここは気を伺おう。買われた後だ。)
司は今後の行動について考えた。今暴れても電気が流れるだけ。召喚には何か意味があるはずなのだ。自分がこの仕打ちなら他の家族にはまだ利用価値があるから召喚したはず。
「おおーと!決まった!落札です!!」
そんなことを考えていると自分の落札が終わったらしい。見てみると黒髪でストレートの女性と思わしき人が1人手を挙げている。どうやら彼女に落札されたらしい。彼女に買われてからが本番だと思っていた。それが地獄のような日々の始まりだとも知らずに...。
司を買ったのはスーレン家のイエナ・スーレンという女性だった。スーレン家の長女であり、あとは兄、母、父の4人家族のようだ。どうやら王国?から外れた場所に領地のある貴族のような家らしい。今は広大な畑を耕している。
司の他にも何人かの奴隷がいた。今は畑仕事をしている。命令に従い畑を耕しているのだが、担当を任された畑は一人でやるには広大だった。ただ問題は...。
「何してる4番!早くしろ!」
4番と呼ばれた白髪でショートカットの少女が背中に鞭を打たれる。痛みからその場に倒れ込んでしまう。歳も幼く見える少女に対しての仕打ちに司は腹が立った。
「この子の分まで俺が働く。だから手を出すな!」
気づけば少女を守るように鞭を打った使用人の前に立っていた。それがどうやら使用人の怒りに触れたらしく鞭を打たれる。ここで声を挙げては相手の思う壷だと思った司は声を押し殺す。
「奴隷の分際で何をほざいている!貴様はまだノルマが終わってないのだろう!」
それでも司は倒れない。倒れたら今度はまたこの少女に鞭を打たれてしまうから。
鞭を打たれ終わった司は現在、自らを買ったイエナの部屋にいた。明かりは最小限にしかつけておらず、薄暗い。それになぜ呼ばれたのかがまだ分からない。
「私が呼んだ理由がわからないようね?」
そんな司の心を見透かすようにイエナは話しかける。するとおもむろに服を脱ぎ、司に迫る。それに司は反射的に距離を取ろうとするが電流が流れそれを許さない。
「私はね。略奪愛じゃないと燃えないの。あなたは奥さんがいたのでしょう?それに異世界人、顔もそれほど悪くない。まさに絶好の相手だわ。」
司は美優に出会って救われた。彼女のことを愛していた。そんなことを嘲笑うかのようにイエナは司と交わるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます