第2話 美優の道

「司と香織をどこにやったんですか!!」


 首輪をつけられ、家族3人は別々の場所に連れられてしまった。美優は連れていった男、確かジオロールと呼ばれていた男に怒鳴りつけた。美優にとって大事な家族、しかも司には雷を撃っていたのは見ていた。彼女の顔は怒りに満ち溢れていた。


「安心してください。あなたがしっかり仕事をしてくれれば彼らと合わせましょう。」

「そんなっ!なんで!」


 今にも駆け出そうとした瞬間、首輪から電流が走る。この首輪は魔法で作られており、首輪に繋がれていたものが所有権のあるものに歯向かったり、所有権のあるものが任意で電流を流すことができる。

 美優はその場に膝を着く。


「貴様に我々に歯向かう術はない。大人しく言うことを聞け。」


 美優はジオロールを睨みつける。そんなことを気にせずにジオロールは話を続けた。


「この世界には魔力、聖力せいりょく、邪力の3つの力が存在しています。

 魔力は誰でも扱うことが出来、現実では起きえない奇跡を起こします。火をつけるであったり、雷を放つであったり、体の強化をできます。魔力を使った奇跡を魔法と呼ぶのですが、この魔法では人の傷を治したり、作物を育てやすくするといった生命に干渉する奇跡を起こすことができません。」


 ジオロールは右手に炎、水、雷、風を起こしながら説明を続ける。美優は今は反抗するよりは情報を集めることを優先し、話を聞いている。


「そんな生命に干渉できる力を持つのが邪力と聖力なのです。ただ干渉の仕方や恩恵がこの2つでは違います。


 邪力を扱えるのは魔族たちであり、邪力から魔物たちが生まれます。そして命を奪い続けるのが邪力の力です。


 反対に聖力は心の正しき人間のみが使うことができる力です。力が清ければ清いほど扱う量も増えます。そして邪力に対抗できる唯一の力もまた聖力であり、その力に溢れているのが聖女であるあなたなのです。」


 美優は話を聞いているがそんな力が自分にあるとは思えない。自分はそれほどまでに良い人間とも思えない。


「あなたにはこれから私たちと行動を共にし、各地に漂っている邪力を無くすこと、そして魔族との戦争で回復してもらうのが仕事です。


 魔族を滅ぼし、邪力が無くなった時、あなたは家族と会えるでしょう。」

「ふざけないで!戦争なんてしたく...きゃぁぁぁ!!」


 美優がジオロールに反抗しようとした時、美優の体にまた電流を流した。ジオロールは美優に近づき、言葉を続ける。


「決定権はあなたにありません。私たちの命令を聞いていれば家族には合わせましょう。大丈夫、もう1人の女性はこの国で保護しましょう。聖女の血を引いているので使い道はあると思います。」


 美優は倒れたまま、ジオロールの言葉を聞いて疑問が湧く。じゃあ司は?確か国王らしき人が奴隷商なんて言葉を言っていたような。


「ただ男性の方は...奴隷としてこれから暮らしています。あなたが早く聖女の役目を果たさないと死んでしまうかもしれないですねぇ。」


 不気味な笑みを浮かべるジオロールに怒りを覚えるが今の自分には何も出来ないことに絶望してしまう。そんな暇などないというのに。美優は覚悟を決めた。私が早く聖女の役目を果たせさえすればみんな救えるはずなのだ。


「わかりました。聖女の役目を果たします。早くしてください。家族が待っているんです。」

「それでいい」


 ジオロールはやはり笑ったまま、美優はその姿に怒りを覚えながら家族に会うために覚悟を決めるのだった。

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