32撃 ”追加戦士になりました”

 ***


   

 父親との再会の数時間後、俺は爆弾マゾックの残骸を姉貴に解析してもらっていた。


「リアムさん、大丈夫……ではないですわよね?」

「いや、大丈夫だ。父親に会えて良かった……」


 姉貴が自分の部屋で解析している間、俺たちはリビングで結果を待っている。桃谷や、他のみんなも俺を気遣って優しい言葉をかけてくれている。


「立派だったわよ、よく頑張った。泣いていいのよ、胸貸してあげようかしらん?」

「いらない」


 ラフォーレがしつこく胸を貸そうとするのを阻止しながら、逃げ回っていたら、姉貴の部屋がガチャリと開けられる。


「姉貴、何かわかったか?」

「うん。けど、どういう状況?」


 胸を貸そうと俺を追うラフォーレと、悪ノリした晴人とグエンの三人が俺を囲む光景に動揺する姉貴。そして何を血迷ったのか、姉貴も悪ノリをしようとしたので、一旦スルーしてもらって本題に入ってもらうことにした。


「爆弾マゾックは、ただの箱にお父さんの魂を入れてたっぽい。詳しくは分からないけど」

「箱? って爆弾マゾックの体のことか?」

「うん、そういうこと」


 姉貴がいうには、父さんは殺されたのではなく、魂をどこかに保管されていたのではないかと言う仮説を立てるのが一番しっくりくると言っていた。爆弾マゾックには、魔法で何かを固定してた痕跡を確認できたらしいし、ほぼ確定だろう。ただ、実際そんな魔法が存在するかは証明できないそうだ。

 だが、一度倒したマゾックが再び現れたのは、父親の魂が無事だったから。そう考えると信憑性は高くなる。


「父親にリアム倒さそうとしてたんか? それともリアムに父親を倒さそうとしてたんか? どっちにせよあいつのやりそうな悪手には変わりないな」

「その本人はもう倒されて怒りをぶつけることはできないじゃんね。こんな展開ありかよ。あまりにもリアムっちが報われなさすぎるっしょ」


 悔しそうに話す晴人とグエンはこう言っているが、不思議と俺は怒りが湧かない。困惑はしたけど、俺はこれで良かったんじゃないかとすら思っている。父さんに会えたんだから。


「辛い時は無理しなくていいんだよ。マゾックは残り少ないだろうし、しばらく休んでても……」


 父親の魂が縛られていた箱は供養するようにスチュアートに頼み、父親が最後まで握っていた小さな爆弾を手に握る。もう爆発する心配はないらしく姉貴はこれを、形見の一つにしたら? と慰めるように渡してきた。爆弾マゾックの顔を彷彿とさせるゴツゴツとした時限爆弾。ミニマムな時限爆弾の液晶はもうつくことはなかったが、どこか安心感を感じさせた。


「いや、俺はこれからもお前らと戦う。父さんのような立派な人になるために。追加戦士になったからには、胸張ってこいつを振り続けるよ」

「そっか……! 一緒に頑張ろうね!」


 今の俺には姉貴が、スチュアートがいる。それに仲間もいる。いつ失うかなんて分からない。けど、少なくとも俺は今回の件で、失ってもなお心には残ることを身をもって経験した。俺はもう恐れない、失うことを。

   

 だから俺は明日からも堂々と胸を張って戦うんだ。”追加戦士になりました”ってな。

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転生した俺は追加戦士として成長する 真白よぞら @siro44

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