イクリプス・ロンド

@Osshi

プロローグ 少年は絶望し、決意する

-太陰暦715年-

極東にある国家ラクリムス。その地で一つの国が終わりを迎えようとしていた。

燃え盛る家屋、響きわたる悲鳴、慣れ親しんだ街、顔見知りが怪物によって破壊、蹂躙されていく。


そんな中、一人の少年は一振りの剣を持ち、怪物を斬り倒しながらある人物の元へと駆けていく。


「退け!」


斬られた怪物は、紫色の体液を撒き散らしながら倒れる。しかし、少年はそれを避けようとせず、気にせずそのまま走り抜ける。


「頼む、間に合ってくれ!」


そして走り抜けた先で見たものは一人の男と怪物が斬り結んでいる光景だった。


「くくく...強き者と聞いていたがこの程度か」

怪物が言葉を話す。その事に男は驚愕し、そしてそのまま思っている事が口から零れ落ちる。

「な!–話す事ができたのか!」

「ははは!逆に何故話せないと思った。まさか言葉を発するのが人間だけだとでも思っていたのか?ならばそれは傲慢であろう?」

怪物は笑いながらそう聞き返す。しかし男の疑問も間違いではない。なぜなら、今までの歴史で怪物が言葉を発したなどという事は聞いた事がなかった。故の疑問。


しかしその疑問はー


「父さん!」


一人の少年の登場によって掻き消えた。


「バカやろう!なんで来た!」

男の怒声に少年は一瞬立ち止まる。しかし立ち止まったのは一瞬で、直ぐに近づこうとしている。

「俺も一緒に戦うよ!」

「来るな!こいつは普通じゃない!お前が来ても万に一つも勝ち目は無いんだ!分かったら今すぐ逃げろ!」

「じゃあ父さんはどうするんだよ!父さんが一人でも勝てないんだろ!?このまま戦ったら死んじゃうんじゃないのか!?」

少年は男に向かって叫ぶ。


しかし男は


「ああ、そうだな。...恐らく俺は死ぬ。こいつは俺が全力を出しても足元にも及ばない存在だ。だが、足止めして、時間を稼ぐ事はできる。お前が逃げる時間を稼ぐくらいはな。」

「なんで...!」

「なんでって、そりゃあ親だからな。親が子に生きて欲しいって思うのがそんなにおかしいか?」

「俺が、ここに来なければ、父さんは...」

「それは違う。こいつはどのみちこの国の全ての人間を殺していた。だから戦うのは避けられなかった。だから、どっちみちだ」

そうやって言って男は笑った。

「さあ行け!お前が笑って生きてさえいてくれればそれだけで十分だ!」

そう言って男は先程とは違う笑み、微笑を浮かべ、しかし自分の人生に悔いが無いような満足な顔で言い放った。

「う、うあああぁぁぁぁぁ!」

少年は涙を流しながら、しかし振り返ることはせず全力で走り抜ける。

その後ろ姿を見ながら男は

「お前の父親になれて、俺は幸せだった。元気でな、雷華」

そう呟くのだった。




少年は走った。涙を流しながら、叫びながら、それでも足を止めずに。動かなくなるまで。そして、限界が来て倒れてしまい、その衝撃で意識を手放してしまいそうになる。しかい歯を食い縛り、意識をなんとか保ち、同時にある決意をする。

(いつか必ず、父さんの仇を...!)

そう決意した瞬間近くに何人もの護衛を引き連れた集団が通りかかった。全員が馬に騎乗していてどこかの国の騎士団の様だった。

中でも一際オーラを放っている老人が少年に気づいて馬を止める。

「君は...」

少年はその声を最後に意識を手放した。


数日後、世界に動揺が走った。極東の国家ラクリムスが怪物に堕とされたこと、そして極東国家最強にして世界でもトップレベルの武神、紅牙・赫羽が死亡した事。


そして、武神を殺した怪物は異常個体<アウルノート>と命名された。




-太陰暦723年-


一人の少年が空を見上げながら口を開いた。


「父さん...俺は...」


少年の名は

ライカ・レムナント





~~~~~~~~~~~~~~

読書の皆様へ


初めまして。数ある作品から当作品を見て下さりありがとうございます。


小説というものを書くのが初めてなので、優しく見てもらえるとありがたいです。


これからよろしくお願いします。

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