第2話 英雄との邂逅

転生してまず目に飛び込んできたのは、RPGでよくある中世ヨーロッパくらいの街並みだった。空は夕暮れで、西陽が眩しかった。

声が聞こえたので周りを見渡すと、俺と同じように転生した人たちがうごめいていた。

よく見ると髪や瞳の色がバラバラだ。世界中から来ているのだろうか。

ふと足音が聞こえ、みんなの注目が集まる。

「みなさん。よくぞ来られました。ひとまず一列にお並びください。」

話し始めたのは黒髪の青年。髪は整えられていて服や装備は簡単なものだ。後ろに付けてるなんかすごそうな大剣を除いては。

その青年は言われた通り並んだ俺らをじろりと一瞥して説明を始めた。

「はい。みなさん。えーと、俺はここの守護をしているヤマトと申します。ここはオリジン市国。昔は始まりの国と書いてオリジン始国と言われてました。転生を選んだみなさんはスキルを選んでると思いますが、この世界ではみなさんが選んだスキルとは別に、魔法というものがあります。例えば火を出したり、水を出したり。そこの地面から芽を出したりすることもできます。」

そう言いながら手をかざし、実践する青年。

ところどころから拍手が上がる。

「みなさん、ステータスオープンと言ってみてください。そうすると、いくつか数字が見えると思いますが数字の上に魔力と書いてるものがあります。それが、みなさんの魔力量です。魔法を使う時は、それぞれ魔力を使います。」

「ステータスオープン」

俺もつぶやいてみた。視界の端に青い半透明の板が見える。体力15、魔力20、レベル1。

周りがどれくらいかは知らないが、多分平均くらいだろう。にしても情報量最低限だな。

「この街にはモンスターの生息する森や、それを討伐するための武器屋、防具屋などがあります。レベルを上げて、強力な魔法をたくさん得て、強くなりましょう。」

あちこちからやる気が見える。やはり若い人が多いようだ。

「最後に、一度死ぬとその時点で最後の審判に強制送還されるため、長生きしたいときはできるだけ死なないようにしましょう。それではいい暮らしを!」

青年の説明が終わり、周りの転生者が散っていった中、俺は青年と話すことにした。

このヤマトという青年はこの街を守護していると言っていた。ならばすごいスキルを持ってそうだ。

苦手なのだが手を差し出し、握手を求め、話し始めた。

「やぁ、君も転生者?」

ヤマトは握手をしてくれ、さらに会話にも応じてくれた。

「あぁ、もう10年ほど前になるかな。俺が10歳の時にここに来たんだ。」

「なかなかすげぇな……」

俺のスキルは100秒または100回の接触につき5秒そのスキルが奪えるというもの。このまま接触を続ければゆくゆくはだいぶ強いスキルがつかえるはず。

などと考えていると、ふと後ろから殺気を感じた。振り向くと、人のドクロがふんだんに使われた悪趣味な鎧を着ている男がいた。

右手には死神の鎌を持っており狙われていることを本能的に感じた。

「なんの真似だ、ムクロ。」

ヤマトが覇気を放ちムクロと呼ばれた男を睨む。

「アンタならわかるやろ?"ヤマトはん"。」

「……っ!」

気のせいかヤマトの目ヂカラが強くなった気がする。

「その呼び方はやめろと何回言えばわかるんだ……?」

どうやら地雷らしい。にも関わらずムクロと呼ばれた男は続ける。

「"ヤマトはん"。そいつはやばいスキルを持っとる。今ここでやらないとわいらがやばくなる。」

なんか知らないがこちらのスキルがわかってしまっているらしい。

ひとまずこの状況はまずい。なんとかこのヤマトのスキルでなんとか……。

《スキル:奪取発動 奪取対象:超速》

その瞬間、俺の体が前方に飛び出した。

反射的にムクロがかわす。俺の体は近くの建物にぶつかった。それをみて、ヤマトが目を見開いて興奮した声で喋り始めた。

「お前も超速を選んだのか!俺と一緒じゃん!!」

ムクロが呆れた様子で口を開いた。

「いや、こいつのスキルは超速やなくて……」

俺は慌てて口を押さえる。

バレてはたまらない。

ムクロが鎌を振り上げ、ヤマトがそれを制止する。目にも止まらないその攻防に立ちつくことしかできなかった。

ムクロは鎌を下ろした。

「覚えとけよ」

どこかで聞いた捨て台詞を吐き、ムクロはどこかへ消えていった。

それを見届け、ヤマトは誘ってきた。

「お前、超速を選ぶとは気に入った。よかったらこれから一緒に行動しないか?」

俺は未来の自分に賭け、大きくうなづいたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

一撃奪取 UX社社長 @uxcompanys

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ