一撃奪取

UX社社長

第1話 神殿の出来事

目が覚めると、いつもの古ぼけた天井じゃなかった。まぁ、いつもの天井なら困るんだけど。

にしてもここはどこだ……?

辺りを見回すと、白い大きい柱が何番も地面から伸びている。真上には大きい白い屋根があった。俺は必死で、自分の頭の中から神殿という言葉を引っ張り出す。

パルテノン神殿ってあったな。なんなのかは一切わからないけど。とかなんとか考えていたら、ふと後ろから声が聞こえた。

「あ、らっしゃいませ。天界へようこそ。」

振り返ると金髪サラサラヘアーで整った顔立ち、白いローブに身を包んだザ・女神みたいな人が気だるげな声でそう発した。

天界……ってことは死んだのか。よかった。

「ということで転生か審判か選べ。」

「……へ?」

女神さんが言ったことの意味が理解できず、口から疑問符が漏れた。

転生か審判……?

「えーと、転生したら異世界でセカンドライフやっほいほいです。審判だったら神が裁きます。ワンチャン現世復活もあります。」

この綺麗な顔からやっほいほいとか飛んでくるだけで笑いを堪えられそうにない中、とある単語が笑いを覚めさせた。

「現世に戻れるんですか」

「はい。審判選んだら一定確率でね」

一定確率が何%かわかったもんじゃないが、昔から運だけは悪いので、図らずとも現世復活果たしてしまう可能性も捨てきれない。

そうなった場合を頭の中で思い巡らせてみる。最悪だ。

ならば答えは一つだろう。

「転生でお願いします」

「ぇ」

女神さんの顔が一瞬曇った気がしたがまぁ大丈夫だろう。明らかにこっちに聞こえる音量でため息をし、睨むような目つきでこちらを向き、もう一度問われた。

「えーと、転生か審判か選んでください。審判だと現世復活もありえます。」

「転生で」

俺が即答した途端女神さんは何かを諦めたような魂が抜けたような顔になり、淡々と棒読みで話し始めた。

「転生なさるのですね。転生先では凶暴な動物や、野蛮な人たちにより危険な目に会うことも多々あると思います。なのでおひとつスキルを贈呈させていただくことになっております。ただし、強力なスキルほどデメリットも大きいためスキルを選ぶ際はじっくり考えて決めてください。」

「はい。」

スキルねぇ。何にしようか迷うな。

「あ、長そうだから5分以内で。」

「え、ちょ、え?」

「次の死者さまももうすぐ来るんだからなる早でおなしゃす。」

そりゃあ、そうか。ということは夢ではないんだな。安心安心。

にしてもスキルねぇ。できれば相手の尊厳を破壊したいな。と、なると……。

「人のスキルを奪うスキルとかはどうですか?」

女神が困ったような顔をした。

「えーと、ほんとにそれでいいんですか?コピーとか一時的に消去とかのほうが条件ゆるいですが。というかあまり実践的ではないですが。」

「条件は何ですか?」

どんな条件でも呑んでやる。もしアイツらが転生してきた時には、アイツらが頑張って考えたスキルで殺してやりたい。

そんな俺の心を読んだのかは知らないが女神が汚物を見るような目で見てきた。

「じょ、条件は対象と100回、もしくは累計100秒の接触につき5秒間使用できます。でも相手のスキルを使うのにも条件は必要ですよ?」

「大丈夫です。早くください。」

「それでは、スキルを授けます。はよ行ってらっしゃい。」

そんな不機嫌な女神に見送られながら、体が光に包まれ、光が消えるとそこには大きな街があった。

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