第5話 お勉強

「今日はお勉強だ!」


授業が終わり時刻は部活が始まる頃合いだ。ここ2ーBでは五人の女子生徒が残っている。『Bull見つけ隊』の五人だ。昨日、部活名を決めた時と同じように新城先輩が黒板の前に立ち、残りの四人は席についている。


「話を聞く限り、神楽坂と水橋はダーツについての知識がほとんどないらしいからな。最低限の知識は入れておいた方が楽しめるから今日はお勉強会を開催する!」


ぱちぱちぱち。私を含め席に座るみんなは新城先輩のその言葉に拍手した。


「では、」


新城先輩が話しはじめようとする時それを遮るように後ろの席から声が聞こえた。この声は桜宮先輩だ。


「ねーねー。ちょっといいかしら」


「なんだ、佳奈。人がせっかく話そうとしたところに」


「もうこの子達も同じ部活の仲間なんだし、下の名前で言わない?有紗にすみれ。その方が仲も深まりそうだし」


「ふむ、確かにそれはありだ。じゃあ有紗、すみれ、私たちのことも下の名前で呼んでくれ」


「「はい!」」


ゴホンと咳払いし本題に入る。


「でははじめよう。まずは簡単なルールからだ。ダーツのゲームでよく使われるのは主に三種類、01ゲームにクリケット、カウントアップだ。01ゲームははじめに点が与えられてダーツを投げ刺さった場所の得点によりその点を0にするゲームだ。このダーツ盤を見てくれ」


新城せんぱ……蕾先輩はダーツ盤を取り出し黒板のチョークや黒板消しが置いてある溝に立てかけてみせた。


「見てわかる通りダーツには1から20までの数字が一番外枠にランダムに振り分けられているが01ゲームではこれが持ち点を減らす数字の大きさとなる。しかしいくつか注意しなければならないことがある。数字が書かれている場所に近くて、点数になる場所の一番外枠のやや小さい区画はダブルと言ってな、その数字の二倍の点数となる部分だ」


蕾先輩はダブルとなる場所をぐるーっと一周指でなぞり教えてくれた。


「それからダブルと中心、ブルの間を見てくれ。ここにも各ナンバーにダブルより小さな区分けがされているだろう。ここはトリプルと言って数字がそれぞれ三倍になるんだよ」


同じくトリプルの場所を指でなぞってみせてくれた。ダブルよりも小さく狙いにくそうだ。


「そしてブルには数字が書かれていないが基本は50点と考えてくれ。得点の説明はこんな感じだ。このような点のシステムで01ゲームでは最初に与えられた点を減らしぴったり0にすれば良いんだ」


なるほど、ブルは50点だったんだ。だとすると一投で一番点を稼ぐには20のトリプル、つまり60を狙うのが良いのね。でも20のトリプルとブルの大きさを考えたらブルを狙った方が良さそう。それに20の両隣は1と5だからもし狙いが外れた時は得点がとっても小さくなってしまうしね。


「カウントアップは01ゲームやクリケットと違って主に練習として使われるんだ。点数のシステムはさっきの01ゲームと同じだからわかりやすいはずだ。カウントアップでは01ゲームとは逆に、初めの点数は0点。そこからダーツを投げ点を挙げていくゲームだ。それを八ラウンド行って、つまり24本ダーツを投げて合計点数を競うゲームだ。さっきも言った通りこれは練習としてすることが多いから一人でダーツしにいくことがあればカウントアップを中心にすると良いだろう」


「初心者はとりあえずブルを狙えば良いんだけれど最初からブルに当てることは難しいと思うの。初めは三本ともトリプルの内側に入れることを意識して練習しなさい」


佳奈先輩が蕾先輩の説明に補足してアドバイスしてくれた。


「そうだな。そして最後にクリケットについてだ。これは15から20、そしてブルの場所だけが意味を為すゲームだ。基本的に二人で行うこのゲームは各ナンバーに3マークするとそれが自分の陣地になる。そして自分の陣地にさらにマークするとその点数分自分の得点に加算される。すべての場所に3マークして相手より点数が高くなるか、もしくは制限ラウンドになった時に得点が高い方の勝利だ」


なるほど。15から20、ブル以外に当てても何の点数にもならないのか。有効箇所が狭まった分、01ゲームやカウントアップよりも難しそうだ。


「ここでも注意しなければならないことがある。まず、ダブルに入った場合それは2マーク扱いになる。もちろんトリプルなら3マーク扱いだ。そしてブルに注目してくれ。ブルにはさらに中心で小さい区画のインナーブルとインナーブルの周りのブル、アウターブルが存在する。前者は2マーク、後者は1マーク扱いになることをよく覚えていてくれ」


「インナーブルってとっても小さいですね。トリプルを狙うより難しそうです……」


「そうだな、有紗。ほとんどの人間が、たとえプロでもこの黒い部分、インナーブルを狙うことは非常に難しいことだからそこまで気にすることはない」


蕾先輩はゲームの最低限のルールを話し終え、ふーっと息を漏らした。


「お疲れ様、蕾」


佳奈先輩は飲み物を取り蕾先輩に渡した。たくさん話した蕾先輩は飲み物を喉に通すと、とっても気持ちよさそうに「はあー」と声を出した。


「しばらくはここでダーツを投げて練習するが、ある程度ルールを理解して投げれるようになったら実際にお店に投げに行こうか」


「ダーツってどこで投げれるんですか?」


「んー。ネットカフェだったりゲームセンターだったり、ダーツバーで投げれたりもするかな。私たちが投げに行くならゲームセンターかネットカフェかな。実際にダーツマシーンで投げると刺さった音とかアワードムービーとかついていたりするからより楽しめるぞ」


「そうなんですね。なら早くダーツに慣れないとですね!」


「そうだな!」



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Bull見つけ隊! あの世の支配人 @webfantasy_kkym

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