第4話 部活じゃなかった
「えー!部活じゃなかったんですか!?」
私は今日一番の驚きを見せた。だってそうでしょ、新城先輩があんなことを言うんだから。
「ああ、そうだ。本当は去年、ダーツ部を設立したかったのだが部員が足りなかったんだよ……」
「部活を作るには部員が最低5人必要なのよ」
桜宮先輩が補足した。
「しかし今年は新入生が二人入ってくれるからようやく部活を作ることができる。感謝してるよ」
新城先輩は私の方を見てにっこり笑った。やめてください、これじゃあ入りたくないなんて言えないじゃないですか……
「部活設立に向けていくつかやりたいことがある。そのために今日は部員みんなに集まってもらった」
もう部員決定なのですね……
「まずは自己紹介をしよう。お互いのことを知らねば何もできないからな。私が手本を示すからみんな続いてほしい」
新城先輩はゴホンと咳払いをして、自己紹介に入った。
「二年B組
「はいはい。二年B組
隣の席で寝ている金髪の女の子の頭にチョップを喰らわす。女の子は「グッ」と声を漏らし、頭を抑えながら顔を起こした。
「いてて……もう少し加減してよー」
「寝ているあんたが悪いのよ。ほらさっさと自己紹介しなさい」
「はーい。二年E組
なんてテキトーな人なんだろう。なんて本人には言えないと思う有紗だった。
「もうほんとテキトーなんだから」
言っちゃったよ、桜宮先輩。
「じゃあ、次はそこの青髪の子お願ーい」
一番前の席に座る青髪の水橋すみれを指差し、バトンを渡した。
「はい!一年C組水橋すみれです。趣味は釣りです。子供の頃から、よくお父さんと海や川に行って釣りについて教えてもらっていました。ダーツ経験はまだ数回なんですけどちょうど良いライバルも見つけられたので頑張れそうです!」
すみれは私の方を見て、そう言った。まさか私のことじゃないよね?ダーツ経験なんてない素人以外の何者ではない私のことじゃないよね?
「最後は神楽坂だな」
「はい。一年A組神楽坂有紗です。気がついたらこの部活に入らされていました……趣味は、えーっと……」
思いつきません……どうしよう。
「寝ることです!」
「おい!」
間髪入れずに新城先輩が突っ込んだ。逆に後ろの方からは「おー」と私の話に感心する声が聞こえる。
「まあいっか。自己紹介も終えたことだし、これより本題に入りたいと思う。それは……」
*****
それからは部活を作るのに何をすれば良いのかと、部活名を決めた。部活名はそう、私が考えた『Bull見つけ隊』である。陽が沈み、その日は解散することになった。
「今日はすっごく疲れたー」
有紗は疲労感のあまり、帰宅するとすぐ部屋のベッドに顔を埋めた。目を閉じ、今日あったことを回想し整理する。入学式を終え下校するまでは良かったんだけど、それからが急展開すぎて友達から聞いただけでは信じられないくらいです。
「でもそんなに悪い人たちじゃないから良かったのかな。ダーツも思ったより楽しかったし」
自然と顔がニヤける。怒涛の一日が振り返ってみると案外楽しかったことに嬉しい気持ちが出る。
そんな中、ピロンと携帯が鳴った。何かの通知が来たのだろう。スマホを取るとグループチャットからだ。
「そうだった、帰りに連絡先交換してグループチャット作ったんだった。えーっと……新城先輩からだ」
ー実はあの後、職員室に行って担任の先生と話したんだが部活を正式に作れることになった!活動内容はまだ詳しくは決定してないけど、しばらくは私たちの教室でダーツボードを設置して練習することになると思うから放課後よろしくな!ー
「先輩仕事早い!行動力の塊みたいな人だなー」
メッセージを見て先輩の行動力に感心するとスマホを閉じ、両手を広げベッドに転がり天井を眺める。瞼が重く感じてきて頭もぼーっとしてきた。
「今日は早く寝よ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます