7.伊香保道中膝がくがく

 源泉を目指して石段を登り始めた私たちふたりですが、異変はすぐに現れました。


「ぜぇ……ぜぇ……きつい。階段、きつい……」


 三分の一すら進んでいない状態で、私の呼吸が乱れます。夏だったので、汗も猛烈にかいています。


「なんだよー、もう疲れたのかよー」

「疲れたっていうか……息が……」

「まぁ、律人りっとは太ったからなぁ……なーんて、ブラックジョーク」


 丸田君は全く笑えないブラックジョークをかましてきますが、これは冗談でも何でも無く私の肥満体が全て悪いことは自明で。


「昔は平沼君の事からかってたのになぁ! なーんて、ブラックジョーク」


 だから全然面白くないんだよ丸田ぁ!!


 石段を半分登った頃には私はもう息も絶え絶えですし、膝ががくがくいたします。


「ぜぇ……ぜぇ……膝……腰……やばい……」


 まさに伊香保道中膝がくがく。半分死んでいる私に対して、丸田君は楽しそうにこう言い放ちます。


「源泉は頂上だから! がんばれがんばれー」


 それでも頂上まで行くんかい!


 こうなったら私も意地です。大汗をかきながら石段を登ります。


 ああ、息が苦しいし膝がもたない……。っていうか、着替えのシャツとか持ってないけどまたこの汗まみれのシャツ着るんかいな。


 意識が朦朧としてきた頃、ようやく頂上まで辿り着きました。


「源泉はこの建物の裏手にあるらしい」

「まだ歩くんかい!」


 留めを刺されながらも、私は歩きました。歩きに歩きました。そして源泉に到着しました。


***

 

 源泉は露天風呂で、洗い場はほぼ無かったです。外国人の方も入ってました。平日だったのにけっこうな混み具合で。やっぱり源泉って人気あるんですね。


 温泉に浸かっていると、疲労した足腰に成分が染み渡っていくようで。


「癒される~」


 まさに極楽極楽状態だったんであります。

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